マタイ
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マタイは新約聖書の福音書に登場する人物でイエス・キリストの十二使徒の1人。ギリシア語表記はマタイオス(Μαθθαιος,Matthaios)。マテオ、マトフェイとも表記する。聖書によればイエスの弟子となる以前は収税人であった。カトリック教会・聖公会・東方正教会などで聖人とされる。
新約聖書の最初におさめられた福音書(第一福音書)の本文には著者に関する言及はないが、古代以来伝統的にマタイによるものとされ、『マタイによる福音書』というタイトルがつけられている。現代においてもローマ・カトリックはこの立場である[1]。近代以降聖書学的研究がすすみ、エルサレム崩壊に関する記述から推測される成立年代などから使徒マタイが著者であるという見解は疑問視されている(出典:『キリスト教を知る事典』教文館)。
各国語での表記は、ラテン語ではマタエウス(Matthaeus)、フランス語ではマテュー(Matthieu)、英語ではマシュー(Matthew)、ドイツ語ではマテウス(Matthäus)となる。日本語では「マタイ」という表記と共に、まれに「マテオ」という表記が用いられることがある。日本ハリストス正教会では「マトフェイ」という表記を用いる。
[編集] 生涯
『マタイによる福音書』9:9によればローマ帝国の徴税人であったが、イエスの招きに答えて弟子となったとされる。『マルコによる福音書』2:13以下と『ルカによる福音書』5:27以下では同じような記述がみられるが、呼ばれた弟子の名前は「アルファイの子レビ」または「レビ」となっている。このため、伝統的にはマタイとレビ(レヴィ)は同一人物をさすと解釈されてきた。
イエスの弟子となったときの記事を除けば、聖書はマタイの言動を伝えていない。『使徒言行録』によればイエスの死後も教団内にいたようであり、キリストの昇天・ペンテコステなどの記事に名前がみえる。伝承では『マタイによる福音書』を記したと伝えられ、エチオピアまたはペルシアのヘリオポリスで殉教したとされる。
2世紀のパピアスは、マタイが福音書をアラム語で書き、弟子がギリシア語に訳したと伝えている。今日の研究はこの伝承に懐疑的であるが、マタイという名はアラム語起源のもので、彼が初期教団内のヘブライズムの中心人物のひとりであったことが伝承に反映された可能性が示唆される。
マタイは東方正教会のイコノスタシスでは他の福音記者とともに王門に描かれる。マタイを描いた美術作品では特にカラヴァッジオのものが著名である。
マタイおよびマタイの福音書はしばしば「人」のシンボルであらわされる。これは『エゼキエル書』1:10に登場する四つの生き物(ライオン、牛、鷲、人)、と福音書にあてはめられている。