ヨーデル
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ヨーデル(jodel)は、アルプス地方の伝統的な音楽。
[編集] 概要
ヨーデルはアルプス山麓の牧童が仲間と呼び交わすのに使用した、独特の裏声が元になっている。ファルセットと低音域の地声を交互に織り交ぜるようにして歌うのが特徴。また、アルプス地方のヨーデルがアメリカにわたり、カントリー・ヨーデル(ウェスタン・ヨーデル)(英語ではyodelと綴る)というアルプスのヨーデルとは違った一つのジャンルを形成していくこととなる。当然、旋律や歌詞の主題そして歌唱法など大きく異なる。
ヨーデルのファルセット部は、声を出す部位として、仮声帯を使用する。 仮声帯は声帯とは別器官なので、通常の発声方法とは異なる。 別器官であるため、風邪で喉が潰れても仮声帯で発声する高い声は出せることがある。 仮声帯は本来は声を出す為の器官ではないが、気道の肉が多い部分の近辺の筋肉を鍛えてあたかも声帯の如く扱うことにより、発声が可能となる。
ヨーデルを含む歌は、同じアルプス地方の各地域でも歌われ方の傾向が異なる。スイスの伝統的なヨーデルにおいては、土着的なヨーデル部分のみで歌詞のないものが比較的多いが、ドイツ語の歌詞部分にヨーデルが挟みこまれるヨーデルリートと呼ばれる形式も数多く作曲されている。スイスでは現在でもこどもから大人まで多くのヨーデル人口を有し、連邦ヨーデル連盟という団体が伝統を守り育てていくことに大きく貢献している。次々と新しい曲が作曲されるなど、発展を続けている現在進行形の民俗音楽といえる。オーストリアチロル地方やドイツバイエルン地方でも、素朴な土着的なヨーデルが存在したが、美しい旋律の歌詞部分にヨーデルがリフレインとしてつけられた形式で発展した。また、特にドイツのバイエルン地方では観光客向けの技巧的なヨーデルが発達した。
アルプス地方のうち、イタリアフランスなどのドイツ語圏以外では、ヨーデルはほとんど歌われていない。
おおブレネリやホルディリディアなどは、スイス民謡として日本においてもよく知られる。おおブレネリは現地では歌われなくなってしまい、来日した合唱団の日本向けLPアルバムを作るときに、日本側からの要望に応え急遽練習して収録したというような逆転現象も起こっている。
[編集] 日本人のヨーデル歌手
ドイツバイエルン地方では石井健雄が知られている。アルペン・ヨーデルの歌手ではないが、日本では「キング・オブ・ヨーデル」の異名を持つ、ウィリー沖山がダントツの知名度を誇っている。中でも「山の人気者」は沖山の驚異的とも言うべき、ファルセットと低音の高速繰りかえしや、最後の徐々に超高音になって行く辺りは、本場のヨーデル歌手をも超えているとの評価もある。そのほか日本でプロとして活躍しているアルペン・ヨーデル歌手に、「NHK名曲アルバム」で「ヨハン大公のヨーデル」を歌った川上博道がいる。
[編集] その他
- 2000年にはニッポン放送のラジオ番組「高田文夫のラジオビバリー昼ズ」で桂雀三郎の歌った「ヨーデル食べ放題」がヒットしたが、ヨーデル特有の裏声を使って歌われた、いわゆるコミックソングである。典型的なヨーデルのフレーズを繰り返しつつオリジナルに仕上げたその発想は秀逸である。
- 日本民謡のホーハイ節には一種のヨーデル技法が存在する。