ランドセル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ランドセルとは、小学生が通学時に教科書、ノートなどを入れて背中に背負う学校かばん(鞄)のことをいう。
目次 |
[編集] ランドセルの歴史
江戸時代に幕府が洋式軍隊を導入する際に、兵士の背嚢(はいのう)として輸入したもののオランダ語の呼び名「ランセル」(ransel)がなまって「ランドセル」になったものだといわれる。明治時代に帝国陸軍にて将校用背嚢として制定され、以後終戦まで殆ど形を変わらず使用され続けた。
通学かばんとしての利用は、明治に入って官立の模範小学校として開校した学習院で、これを元にした物が使われるようになり、後に伊藤博文が当時皇太子であった大正天皇の学習院初等科の入学祝い品として献上し、それが徐々に浸透して今のような形になったという説が有力である。
欧米の学校でも似たようなものが使われているが、日本のランドセルに比べて素材は質素で軽い。(参考: ドイツの通学かばんSchulranzen)
[編集] ランドセルの多様化
素材は牛革が中心だが、高級なものにはコードバン(馬革)素材のものがある。また、最近では、軽さ、丈夫さ、手入れの簡単さなどの要望から、人工皮革のクラリーノ製が主流になりつつある。クラリーノは商標だが廉価な人工皮革のように、すぐに表面が剥離するような粗悪なものではなく、高級な素材である。価格も牛革製と比較して、安いものではない。デザインについては、従来からの学習院型以外にも、上蓋の半被せタイプの縦型や横型のものが、数年前から登場している。
色は黒、赤が主流であったが、「男子は黒、女子は赤」という既成的概念が崩れてきたためか、ピンク、茶、紺、緑、青、またそれ以外のカラフルな色、あるいはツートーンカラーのものも発売されている。これらのカラーランドセルは、既に1960年ごろには存在したが、近年着実に需要を伸ばし、都会ではよく目にするようになった。また、一部の小学校では、指定のランドセルを使わせている学校もあり、男女とも黒や茶色(に箔や型押しの校章入り)のランドセルを指定していたり、ランドセルとリュックの中間的なスタイルの合成繊維製の背負いカバン(代表的なものに、京都府の長岡京市などで使われている「ランリック」や、北海道小樽市で使われている「ナップランド」など)を指定している学校もある。また最近はランドセルを使用しないところも出てきた。
交通安全を重視するために、特に低学年においてはランドセルに黄色のカバーを掛けて通学させている市町村も多い。
[編集] ランドセルのファッションとしての広がり
1997年ごろに、タレントの篠原ともえが、ランドセルをファッションとして採り入れ、彼女のスタイリングが一部の若者に受け入れられる。また、都内の有名大学でもランドセルで通学する女子大生が出現した。
アメリカでは女子大生が日本のランドセルを好んで使っていることもあるし、ロンドンやパリでも若い女性の使用例がある。ヨーロッパでは日本の独自グッズの中でランドセルはかなり人気のあるグッズのようで、これは素材の質の良さ、丈夫さ、背負ったときのシルエットのかわいらしさなどが理由と思われる。また、日本国内でも、半被せタイプのランドセルは専門学校の女生徒の通学用や、一部のOLのファッションバッグとしての使用例も見られ、中にはノートパソコンを持ち運ぶ鞄としての使用例もあった。これらは、ファッションの多様化により、ランドセルが小学生のみのものという考えに変化が見え始めた現象に他ならない。
ランドセルメーカーも多用途向けに製品を開発しており2005年ごろから、半被せランドセルのまちの部分の厚みを薄くした、「塾バッグ」と称するランドセルも販売されている他、高級な革素材で丈夫で長持ちする丁寧な仕上げ、子供用と大人用の背負い紐を交換して、長く使ってもらおうとするもの、イタリアのデザイナーによる大人のためにデザインされた半被せ型のランドセルなども登場した。一方、革製でなく、帆布を使ったランドセルも過去に中学校の指定鞄だったものが復刻され、大人のランドセルとして販売されるなど、商品にバラエティが出てきた。
特殊な使用例では、ゴスロリと称する衣装を着た人々のアイテムとしての利用や、子供を表現する場合のアイテムなどとしての利用があげられる。