ラ・フィユ・マル・ガルデ
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ラ・フィユ・マル・ガルデ (La Fille Mal Gardée) は、1789年にフランスで発表されたバレエ作品。原題は「下手に見張られた娘」の意。邦題は「リーズの結婚」となっている。また、英語版は「Wayword Daughter」(御しがたい娘、の意。)、ロシア語版は「無益な用心」となっている。
現存するクラシックバレエ作品としては、「ジゼル」と並び最古の作品とされる。ジャン・ドーベルヴァルによって振付けられた最初の演出は失われているが、現在ではジョン・ランチベリーによる、フランス民謡曲の編曲を元にフレデリック・アシュトンが振付した英国ロイヤル・バレエ団の作品が最も有名で、世界各国で上演され、日本でも牧阿佐美バレエ団がレパートリーとしている。他にはルートイヴィッヒ・ヘルテル作曲、マリウス・プティパ、レフ・イワーノフ改訂振付によるロシア版がある。ここでは上演数の多いアシュトン版を取り上げる。アシュトン版は全二幕構成で、ヒロインの母親を男性が演じたり、「木靴の踊り」「鶏の踊り」などがちりばれられたコミカルな作品となっている。
[編集] 登場人物
- リーズ:農家の一人娘
- コーラス(コラ):貧乏だが魅力あふれる農夫で、リーズの恋人。
- シモーヌ:リーズの母親。未亡人で娘とアランとの結婚を望み、コーラスとの仲を邪魔する。男性が演じる。
- アラン:豪農の一人息子。とっぴな行動ばかりとるバカ息子だが、性格は純真。
[編集] あらすじ
舞台はフランスの田舎。季節は初秋。
第一幕
農家の朝。鶏が起きて朝を告げる。寝巻き姿のリーズが飛び出してきて、コーラスの目に付くよう、ピンクのリボンを木の枝に引っ掛ける。程なくコーラスがやってきて二人は楽しく踊るが、シモーヌに邪魔をされる。今日は豪農が息子アランを連れてやってくる日で、シモーヌは娘の縁談をまとめたいと思っているのだ。程なくアラン父子がやってくるが、人より少々テンポのずれたアランは、間抜けな行動ばかりをして皆をあきれさせる。とりあえず一行は豪農の馬車で収穫真っ只中の畑にでかける。
畑では農夫達が楽しげに収穫している。母親の目を逃れたリーズは皆に見守られながらコーラスと愛を語る。シモーヌが娘の密会現場をおさえようとするが、コーラスとリーズの仲を応援する農夫達にごまかされて、村娘達とご自慢の「木靴の踊り」を披露する。そこへ嵐がやってきて、アランが飛ばされていってしまうのが見える。
第二幕
シモーヌの家。雨に見舞われたシモーヌとリーズ母子が家に駆け込んでくる。リーズはまたも母親の目を盗んでコーラスに会いに行こうとするが、それを阻止しようとする母親は扉に鍵をかけ、その鍵を自分のポケットにしまいこむと娘を出て行かせないために糸巻きを始め、娘を手伝わせる。だが、やがて寝込んでしまい、リーズは窓から身を乗り出してコーラスと愛を語る。シモーヌが目を覚ました時に、農夫達が収穫した大きな麦束を運んでくる。それを確認したシモーヌは娘とアランとの結婚を強引に進めるためにリーズを家に閉じ込めて、アラン父子と公証人を呼びに行ってしまう。
閉じ込められて落ち込んだリーズはコーラスへの愛と彼と将来築きたい家庭について空想するが、実はコーラスは先ほど運ばれた麦束に隠れており、一部始終を見て喜んで飛び出してくる。かくして二人は愛を誓うが、折悪しくシモーヌが戻ってきたので、リーズは自分の部屋にコーラスを匿う。娘の不自然な態度を警戒したシモーヌはリーズを部屋に閉じ込めて、結婚式のために公証人と農夫達を家に呼ぶ。やがてアラン父子がやってきてリーズの部屋を開けさせるが、そこには花嫁衣裳を着たリーズがコーラスと手を取り合っていたので、大騒ぎとなる。二人を見た公証人はコーラスとリーズこそ結婚させるべきだとシモーヌを諭し、ついに母親は折れてコーラスを娘の婿と認める。 かくしてリーズとコーラスは皆に祝福されて結婚する。
最後にアランがおろおろと取り残されるが、無くしたと思っていたお気に入りの赤い傘を見つけご機嫌な顔で飛び出していく。