ワークショップ
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ワークショップ(Workshop)とは、本来作業場や工房を意味する語である。ワークショップとは1920年ごろにアメリカのJ.L.モレノが臨床心理学の一手法として考案したものであり、今日では「体験型の講座」を指すことが多い。
体験型の講座の意味でのワークショップは、問題解決やトレーニングの手法である。近年は企業研修や住民参加型まちづくりにおける合意形成の手法としてよく用いられている。
ワークショップはファシリテーターと呼ばれる司会進行役の人が、参加者が自発的に作業をする環境を整え、参加者全員が体験するものとして運営されることがポピュラーな方法である。
ヨガや瞑想、陶芸教室、映画制作のプロセスの体験セミナーといった体験学習、身体で体験する機会といったものにもこの呼称は使われることがある。
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[編集] 演劇
(スタブ)
[編集] まちづくりワークショップ
[編集] まちづくりワークショップの成立経緯
住民が中心になって地域の課題を解決しようとする場合に、ワークショップの手法がよく用いられる。 主に都市計画やまちづくりの分野でワークショップが取り入れられるようになったのは、1960年代の環境プランナー、ローレンス・ハルブリンがテイクパート・プロセスとしてワークショップを用いたことがはじまりである。日本においては、1979年に日本に紹介され、宇都宮大学の藤本信義、千葉大学の木下勇らのグループが取り入れたことで日本のまちづくりにおける技法として開発されるようになった。 ワークショップをまちづくりにおいて活用された事例は東京都世田谷区が取り入れたのが初見である。
同区におけるワークショップは住民主体の勉強会に起因している。1970年代後半に世田谷区の太子堂地区においてマンション紛争が起こり、世田谷区の主催で区民向けのまちづくり懇談会が開かれることとなった。懇談会では区民から紛争をめぐる世田谷区の施策を批判が相次いだが、懇談会設置後、1年を経て懇談会に参加した区民の中に「批判だけでは問題解決しない」「行政と対等に話し合うには住民側にもそれなりの専門知識が必要」であるという意識が広がり、1982年に懇談会メンバーの住民を中心としたまちづくり協議会設立準備会が創設され、住民主体のまちづくりの実現を目指した地域住民組織づくりに向けた活動が開始されるようになった。このまちづくり協議会準備会が行政との対話の推進を目指す中で行ったのが、「まち歩き」「まち点検」などの活動や勉強会の開催であり、その活動が次第にプログラム化されていく中で、まちづくりワークショップとして定着するようになった。
その具体例が地域の公園づくりを目的としたワークショップで、後にパークショップの造語を以って称されることとなった。次第に世田谷区太子堂地区ではまちづくりワークショップの対象範囲を拡げ、「老後の住み続けられるまちづくり」、「ゴミゼロ社会を目指すまちづくり」「地域に開かれた消防署づくり」をテーマにワークショップが開かれ、実際に区民管理による公園づくりを実現させた他、東京消防庁の消防署建設に意見が反映されるなどの実績を挙げた。これが、全国においても住民参加の先駆けとして専門家などから注目されるようになった。まちづくりワークショップは、川喜田二郎の開発したKJ法の手法を取り入れることで、さらに住民の合意形成技術としての性格を強め、今日ではまちづくりにおける合意形成技法として注目されている。近年は、模型を用いたまちづくりデザインゲームというワークショップ手法が多用されるようになりつつある。
ワークショップの効果として期待されているものに、参加者同士の体験共有、意見表出、創造表現、意見集約その他のコミュニケーションを深めることが期待されており、地方自治分野では市民間の合意形成のスタイルとしても注目されつつある。
- 公園づくりワークショップの事例
- ワークショップ参加者を募集する
- 参加者同士で自己紹介をし、相互のコミュニケーションを図る
- 現地(公園予定地)をみんなで見る
- 他の地域の公園を見学する
- どのような公園がよいか話合う
- 造園の専門家や市役所の意見を聞く
- 案をまとめ(図面、模型、CGなど)、発表する 等
まちづくりワークショップにおいては、過程が重要である。特に地域住民の声は多様であり多声的である。よって、実際のまちづくりワークショップの現場では、漠然と集まって話合いを重ねても、中々進展がないため、コンサルタント業の人物がファシリテーターとして関わって課題を整理したり、助言が行われる。
このまちづくりワークショップの性格は、「自由討議」「公開性」を原則とした議論の場であり、参加者の総意=住民の総意とは限らないため、ワークショップの成果を広報誌にまとめて参加者以外にも内容を知ってもらう、意見募集をする、などの工夫も必要になる。
防災まちづくりの事例では、カリキュラムにフィールドワークの一環として、災害図上訓練(DIG)を取り入れたワークショップが開かれることが多い。