丘を越えて
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丘を越えて(おかをこえて)は、1931年(昭和6年)12月に日本コロムビアから藤山一郎の歌唱によって発売されたヒット曲。『丘を越えて』は古賀政男の青春のそのものであり、不世出の国民的名歌手藤山一郎の人気を決定付けた。また、マンドリンといえば『丘を越えて』、『丘を越えて』といえば、マンドリンという一つの歴史を作った。
元々はマンドリン合奏曲『ピクニック』として作曲され、後に島田芳文が詩をつけ『丘を越えて』となった。歌唱者・藤山一郎は豊かな声量と正確無比な確実な歌唱で古賀政男の青春を高らかに歌い上げている。
『丘を越えて』は古賀政男の明治大学の青春が舞台になっている。卒業を迎えた1929年(昭和4年)の春、古賀はマンドリン倶楽部の後輩と稲田堤(現川崎市多摩区)にハイキングに行った。満開に咲き誇る桜を背に酒を飲み交わし青春を謳歌。下宿に戻り、ふと学帽についた一枚の桜の花びらに気がついた。これを見て二度と帰らぬ若さと青春がいとおしくなった。そのとき浮かんだメロディーを愛用のマンドリンを取り弾いてみた。おもしろいようにメロディーがつぎからつぎへと浮かんだ。こうして、『丘を越えて』のメロディーができあがった。
古賀政男の作品は感傷的なメロディーが一般的に有名だが、その個性をセンチメンタリズムだけに終わらせることなく、『丘を越えて』のような希望に溢れた青春讃歌にも素晴らしい作品を残している。