事情判決
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事情判決(じじょうはんけつ)とは、行政処分や裁決が違法だった時、裁判所はこれを取り消すのが原則だが、「取り消すと著しく公益を害する(公共の福祉に適合しない)事情がある場合」には請求を棄却できるという行政事件訴訟法上の制度のことである。
[編集] 概要
例えば、都市計画による土地収用が違法なものであるが、それ自体を無効としてしまうと公益に多大なる損害を加えてしまう場合、行政事件訴訟法第31条には、「特別の事情による請求の棄却」として原告の請求を認容しないことができる旨定める。事情判決である場合は、処分または裁決が違法である旨宣言をしなければならない。なお、この判決は中間判決で行うこともできる(同31条第2項)。訴訟費用は被告人(行政主体)の負担となる。
原状回復ができないまでに事業が進んでしまったら訴えはどうなるか。学説は2つある。
- 訴え却下説 - 訴えの利益がなくなったとして訴えを却下する。
- 事情判決説 - 法的利益は失われないとして事情判決を行う。
最高裁判所は事情判決説に立つとされる。
なお、行政不服審査法第40条第6項にも似たような規定(事情裁決)がある。
[編集] 選挙訴訟への適用
公職選挙法219条は、行政事件訴訟法31条の規定は適用しないとしており、選挙訴訟においては事情判決を行うことは禁止されている。
もっとも、公職選挙法上の定数配分についての違憲訴訟の場合、違憲とすると全選挙区の選挙が無効となると言う特殊事情があるため、事情判決の規定の適用ではなく事情判決の法理を用いるという形で「違憲であるが、選挙自体は有効」と判断することがある(最高裁判所昭和51年4月14日大法廷判決、他)。