人権及び基本的自由を侵害するセクト的運動の防止及び取り締まりを強化する2001年6月12日の法律第2001-504号(1)
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[編集] 序文
人権及び基本的自由を侵害するセクト的運動の防止及び取り締まりを強化する2001年6月12日の法律第2001-504号(1)は、フランス領内で通用する属地法。略称は反セクト法。 WikiSourceに日本語訳あり。 反セクト法は存在しない架空の法律という主張もあるが、フランス政府の公式サイトであるLegiFranceというサイトで検索すると、実際にはこの法律が見つかる。
- 法律の探し方。
- LegiFranceのページを開き
- RECHERCHE EXPERTEをクリック
- Textes publiés depuis 1990
- というページをクリックしますと、検索ページが出てきます。
- そこで、Jourを13 Moisをjuin Annéeを2001
- として検索すると結果がずらずらと出てきます。
- 2001-504とページ内を検索してください。
- LOI no 2001-504 du 12 juin 2001 tendant à renforcer la prévention et la répression des mouvements sectaires portant atteinte aux droits de l'homme et aux libertés fondamentales (1)
というタイトル見つかります。それが原文となる法律です。
- Legifrance, フランス政府運営のサイト、憲法院、コンセイユデタ、破毀院などの最近の判決等が掲載されている。グーグルでLegiFranceについて説明した日本語ページを検索すると、分かりやすく解説したページが見つかります。
[編集] 法律の中身
既存刑法を拡張し未整備だったセクトの法人としての責任の明確化と、非常に甘かった罰則を強化し(フランスは元々法人への処罰全般が甘かったので全体的な厳罰化の流れとしてもこの法律は制定された)、セクトと考えられている団体が犯罪を犯したときに裁判を通じて強制解散させるかどうかの可否を問えるようにした法律。
この法律の想定しているセクトとはフランス政府の規定によるカルト団体のことである。 代表的なところでは統一協会、サイエントロジー、エホバの証人、創価学会などの現地法人がフランス国内での犯罪性などに基づきセクトとして取り扱われた。
[編集] 内容
法人自身、またはその規定上の指導者もしくは事実上の指導者がこの法律の為に拡張されたいくつかの刑法に記載されている違反のいずれかを犯したとして刑事責任を追及され、終局的に有罪判決を下された場合は、法的形態または目的が何であれ、その活動に参加している者の心理的・身体的依存状態を創り出し、維持し、または利用することを目的とした活動を続けるすべての法人に対し、本条項にて定める方式に従い、その解散を宣告することができる。
具体的な一例をあげれば宗教団体などが信者を利用しての犯罪行為を止められずそれが悪質な場合などに適用される。 解散訴訟は、職権で行動する検察の請求または全関係者の請願に基づき、大審裁判所に提訴され、15日間の控訴期間が与えられ大審裁判所(日本で言うところの最高裁判所)にて解散の是非を争われる。
法人への罰則は以下の通り
- 法人の解散
- 一定期間の活動の禁止
- 司法監視
- 事業所の閉鎖
- 契約からの排除
- 資金募集の禁止
- 小切手の振出し禁止及びキャッシュカードの使用禁止
- 犯罪に関連した物又は犯罪から生じた物の没収
- 判決の掲示又は告知
また強制解散後は5年間の司法監視が行われる。
[編集] 雑記
実際は適用困難なザル法と見る人もいる。
この法律では宗派や教義で差別し、実質キリスト教を守るための法律だと主張する人たちや、国家が思想や宗教のあり方を規制するための法律だとの主張する人たちもいる。 しかしながら、それを裏付ける思想宗派を統制するための条文はこの法律の中に存在しない。 また、この法律の趣旨は犯罪をやめられないカルト団体への脅しとして、犯罪の未然防止のためのものだと見る人も居る。 実質的に条文に当たる限りは既存刑法の拡張であり、犯罪防止と法人としての責任の明確化が中心であり、強制解散も裁判を通じてのものである。
この法律の想定しているセクトはフランス政府の基準であり、一政府の行ったものに過ぎないが警察司法の記録に基づき犯罪性と人権侵害を基準になされ、特に注意すべき団体のリストが1995年、1999年の報告書において示された。
フランスでは憲法に記載されているライシテの原則に基づき宗派や宗教での差別は出来ない。 犯罪性を基準にしたのはこのためであろう。 セクトは犯罪に手を染めやすい特徴をもつ団体として取り上げられており、その定義はカルト団体ともかぶる。 しかしながらフランス政府はどのセクト団体においても所属することで所属前より人生が向上した人や社会の需要に答えるなどの面もあり、犯罪性が高くとも単純には排斥できない面もあるとしている。
またセクトとみなされるべき基準は以下の通りである。
- 精神の不安定化
- 法外な金銭的要求
- 生まれ育った環境との断絶の教唆
- 健全な身体の損傷
- 児童の徴用
- 多少を問わず反社会的な教説
- 公共秩序の撹乱
- 多くの裁判沙汰
- 通常の経済流通経路からの逸脱傾向
- 行政当局への浸透の企て
この法律に関してデマも流布した。 創価学会信者やその批判者の間で流布した、法律に特定団体がセクトとして記載されている。 というのは完全なデマである。 批判者側が流したデマのようだが、セクト問題について論じている一部の創価学会員にとっても都合がよいデマだったので、そのまま学会員と批判者双方の間で流布した。 十分な検証能力がない創価系の方も信じて宣伝したようである。 宗教団体の信者が関わる話題に良く見られる、何があったかが事実なのではなく、都合がい いことこそが事実になるという最も顕著な例といえる。 創価学会では創価学会こそが世界最高の宗教であるとの宣伝が絶えず創価学会員に流されるために、それを否定する「フランスで創価学会がセクトとして取り扱われた」という事実は学会員にとって大変都合が悪かったようである。 それを否定するのに、フランスのセクト対策はキリスト擁護のためだけにおこなわれた」というデマは大変都合がよかった。 法律に団体名が記載されたというデマは、キリスト教以外を排斥するために記載されたのだ。 という大変都合のよい解釈が可能になる。 そのために創価学会信者もこのデマを広めた。 また創価学会批判者側にしても、創価は法律で直接危険団体と規制される程危険な団体なのだというデマは大変都合後良かったのである。 もちろん実際の法律には特定団体等は記載されておらず、中身は一般的な刑法である。 なので特定の団体を狙い撃ちしたものではない。 実際の所は創価学会は他の多くのセクトと同じく適用の可能性の高い団体に過ぎない。 この法律で規定される国家の権限が大きいために、よほど酷い団体でないと法が適用されないという制約がある。 また日本を例に取れば未だにオウムが存続していることをみても宗教団体に解散命令を出すことは非常に困難なのである。
この法律に対し、日本でも宗教団体主催による抗議デモが行われたが、デモの主張を読むかぎり参加者は法律の中身を知らなかったようである。