エホバの証人
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エホバの証人(エホバのしょうにん,Jehovah's Witnesses)は、米国で興ったキリスト教系の新興宗教団体。日本では戦前からも存在したものの、第二次大戦後にひろまった為、新新宗教として分類される。ヘブライ語聖書(旧約聖書)をギリシャ語聖書(新約聖書)と同列に扱い原典を字義どおり忠実に解釈しようとするなど、米国に特徴的なキリスト教の原理主義的性格をもつ新興宗教。信者は、多かれ少なかれほぼ全世界で活動している。

エホバの証人そのものは法人格を持たない任意の団体である。しかし印刷施設やその他不動産を所有し運営する目的で必要に応じてその国の法律に基づいた法人格を取得する事がある[1]。また、米国に所在する世界本部は法人登記名 Watch Tower Bible and Tract Society of Pennsylvania. という法人を設立して管理運営している施設内に置かれている。エホバの証人の支部事務所を設けても必要の無い場合はそのような法人格を取得しない場合もある[2]。
「エホバの証人」の名は旧約聖書イザヤ 43章10節の『「あなた方はわたしの証人である」と,エホバはお告げになる,「すなわち,わたしが選んだわたしの僕である。それはあなた方が知って,わたしに信仰を抱くためであり,わたしが同じ者であることを理解するためである。わたしの前に形造られた神はなく,わたしの後にもやはりいなかった。11 わたしが―わたしがエホバであり,わたしのほかに救う者はいない」。 (ものみの塔聖書冊子協会刊・新世界訳聖書)』に由来する。
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[編集] 教義
特徴的な教義は以下のようなものである。
- 聖書は神の言葉で、真理である。
- 神の名を主などの称号ではなく、エホバという呼び名を用いる。
- イエス・キリストは神の独り子であり、来たるべき王国の王である。
- 神から直接創造されたのはイエス・キリストのみであり、その他の被造物は全てイエス・キリストを通して創造された。
- ヘブライ語聖書(旧約聖書)なしにクリスチャン・ギリシャ語聖書(新約聖書)は理解できないと考えている。(旧約聖書にメシア到来の預言が記述されているため)
- 輸血をはじめとする、血を取り入れることの拒否。代替治療として無輸血治療を求める
- 参政権、兵役の拒否(思想などに中立な立場、平和主義を求める)。ただし、徴兵制に応じつつ、これをなかったことにする国もあった模様
- 格闘技、国旗敬礼、国歌斉唱、聖書に反する年中行事の拒否。一例を挙げると柔道や剣道は拒否の対象(神戸高専剣道実技拒否事件 など訴訟騒ぎもあったものの、しばしばレポート提出という手段で収める場合も多かったと言われる。)
- サタンによって、誰が宇宙主権を有するかという問題が提起されている。
- 1914年のキリストの臨在(目に見えない再臨)。(初期は1874年とされていた)
- 「終わりの日」が1914年に始まり、ハルマゲドンは間近である。なお、初期は1874年に「終わりの日」が始まり、1914年にハルマゲドンが始まるとされていた。また1970年代以降、「終わりの日」の1914年から一世代内にハルマゲドン(世界破滅)が来るという教義が長い間続いていた。
- ハルマゲドンを生きて通過する者をエホバが選ぶ。
- 古代ユダ王国は、ユダヤ人がバビロン捕囚から帰還した紀元前537年の70年前の、紀元前607年に滅んだ。(1914年を算定する基準となる年と主張している)。
- 指導者は目に見えないイエス・キリストであり、1世紀以降に聖書に忠実だった者のうち、神に選ばれた14万4000人の者が、ハルマゲドン後、キリストと共に人類を支配する。
- ハルマゲドン後に地球が楽園に回復し、死者(神に忠実だった者と聖書を知る機会がなかった者)が復活する。
- すべての信徒は使徒たちに倣って戸別訪問による布教活動を行う。(マタイ28章19,20節)
- 聖書の道徳上の教えを守る。結婚外の性交渉禁止など。信者側は家庭崩壊および性病等を未然に防ぐともしている。
- いかなる人物にも宗教上の称号を用いない。(ただし、教団によって選ばれた、自分の所属地区を統括する人物(男性のみ)は「長老」と呼ばれる。同様のものとして、「監督」などがある)
- 教義に反しない限り、人間の法にはすべて従う。
- 神への献身の象徴として水の浸礼(バプテスマ)を受ける。これによって、正式なクリスチャンになるとされる(幼児は、信条に関し判断能力がないため洗礼をしない)。
- バプテスマを受けるための試験が存在する。また、受けた後は、男性は「兄弟」女性は「姉妹」と呼ばれる。
- 三位一体の否定。地獄、煉獄の否定、死後の魂の否定。(神はエホバ、聖霊はエホバの活動力、キリストは神の初子としている)
- エホバの証人だけが真のキリスト教(或いは真の宗教)であり、初期クリスチャン(原始キリスト教)の再現であるとし、1世紀のクリスチャンと同じ歩みをするよう努めている。特に、エホバの証人と他のキリスト教(キリスト教世界)を完全に区別し、初期キリスト教がローマの国教になった後、ローマの様々な文化が混合され変化していったものだとしている。
- 偶像を禁忌とする(旧約聖書および黙示録中の記述を引用している)。
- 十字架を偶像的とし、禁忌とする(また、キリストが処刑されたのは十字架ではなく杭であると主張。しかし初期にはシンボルとして用いていた)。
- クリスマスを祝わない。イエスが生まれた時期に羊飼いが羊と共に屋外で野宿していたと聖書に記述されており、12月に生まれたとは考えにくいと考えている(数々のお約束の"お祭り"が禁止される点に関しては、ケヴィン・コスナー主演による「パーフェクト・ワールド」で揶揄されている)。しかし、初期には盛大にパーティを行っていた。
- 黙示録の大娼婦バビロンをカトリック教会に代表される既成のキリスト教会および諸宗教とみなす。三位一体の否定や既成の教会への批判的立場などから、正教会、カトリック教会やプロテスタント系教会からは異端的教派と扱われている。
- 週に3回の集会を行い、聖書の朗読や協会の出版物に関する解説がある。また、日常生活での布教活動(彼らはこれを「証言する」と呼ぶ)をどのようにすべきかの実演なども行う。
[編集] 起源と歴史
1879年にチャールズ・テイズ・ラッセル(Charles Taze Russell)によって出版された 「シオンのものみの塔およびキリストの臨在の告知者(Zion's Watch Tower and Herald of Christ's Presence)」が始まり。ラッセルの死後、内部分裂や幹部の煽動罪による投獄などを経て、組織の再編成をした後、1931年に従来の「聖書研究者(Bible Students)」という名称を止め「エホバの証人 (Jehovah's Witnesses) 」(イザヤ43章10節に由来)という名称を採択した。主な財源は信者や、文書を受け取った人の自発的な寄付による(寄付の強請や、商品などの販売が行われることはない)。他に王国会館(集会場)などの不動産が教団名義に変更される場合がある。
[編集] 日本での活動
日本では、1926年頃に活動を開始した。灯台社として明石順三を中心に活動するが1939年6月21日に一斉検挙、結社禁止に追い込まれ事実上壊滅した。その後明石は1947年に戦時中の教団の行動を批判[3]して脱会。1949年に米国本部から宣教師が多数送り込まれる形で再組織化が進み、公称する国内信者数22万人超にまで成長した(キリスト教系の団体ではカトリックに次いで第2位と公称)。
[編集] 社会的側面
輸血の拒否や、格闘技の拒否の主張に関する最高裁判例や、宗教を理由とする養育権に関する裁判などが知られている。医療面においても、エホバの証人が裁判で争ったケース(インフォームドチョイス、インフォームド・コンセントなど)がある。
- 禁止事項が多いため、社会生活上で問題となることが非常に多い。
- あまりに熱心な信心のため非信者の親兄弟、親族との断絶、夫婦仲の崩壊や離婚[4]、いやがる子供との不和をもたらすケースもある。
- 特に宗教を理由とする離婚請求訴訟が多いので有名[4]。
- 布教活動に専念するあまり週3日ほどしか働かない信者が多数である。
- 上記のような社会的側面から、日本においても「カルト」や「セクト」とみなす人々もいる。
- フランスにおいては問題点が多いために国の監視対象である。
- ウール県において労働法違反で調査された。
- 医療行為の制限については信者個人が自由意志でしている場合は合法だが、教団による強制が見られた場合強制解散の対象として取り扱われている。
- 1995年11月から1999年1月にわたって行なわれた税務調査の結果、非営利社団『エホバの証人』は強制課税手続きならびに1996年および1997年の申告税額に関して22,920,382ユーロの修正に加えて罰金および延滞金利として22,418,464ユーロの更正通知を受けた。告発対象となった会計処理は、同社団が信者たちから寄付の名目で集めた金額に関するものであった。
[編集] 脚注
- ^ 日本の支部事務所を設置している施設の管理運営法人としてものみの塔聖書冊子協会 日本 東京都を設立し利用している
- ^ なお、英国ではInternational Bible Students Association(国際聖書研究者協会)という法人名も用いている
- ^ ものみの塔日本支部の基本財産
- ^ a b 新宗教を理由とする離婚請求訴訟について