保育所
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保育所(ほいくしょ)は、保護者が働いているなどの何らかの理由によって保育が欠ける子供を一日ごとに預り養育することを目的とする通所の施設。
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[編集] 概要
厚生労働省が管轄し児童福祉法に規定される「児童福祉施設」である。何らかの理由によって十分な保育が受けられない0歳から小学校入学前までの乳幼児を対象として保育を行う(第24条)。また、例外的にそれ以上の年齢の児童を保育することもある(第39条第2項)。
[編集] 運営
設置主体は公立・私立があるが、いずれも保育を実施するかどうかは市区町村が決定する。よって居住している自治体の保育所を利用するのが原則であるが、勤務地等の広域化に伴い、他自治体の保育所に入所する「広域保育」という制度も活用できる(広域保育が可能かどうかも居住している自治体で判断する)。
保育所の運営にかかる費用は厚生労働省の基準に基づき算定され、その総額から保育料による収入を差し引いた金額について、国が1/2、都道府県および市区町村が1/4ずつを負担してきた。しかし、2004年度から三位一体の改革により公立保育所についてはこの負担制度が廃止されたため、保育料収入を除く分は市区町村が負担することになった。
保育所で保育にあたるのが保育士(かつての保母、保父)で、児童福祉法に基づき都道府県に備えおかれた保育士登録簿に登録を受け、専門的知識及び技術をもって、児童の保育及び児童の保護者に対する保育に関する指導を行う国家資格を有する職員である。
[編集] 保育の内容、機能
児童福祉施設最低基準及び保育所保育指針に基づき、年齢や子どもの個人差などを考慮した上で保育を行う。内容としては幼稚園と同じく5領域を根本にしており、保育所保育指針にも5領域が記されている。遊びを通して5領域を学ぶことで生きる力を育てる。保育の方向、ねらい、季節、行事などを織り交ぜて一ヶ月の保育内容をまとめた月案、一週間の保育内容をまとめた週案、一日の保育の流れをまとめた日案を保育士が作成し、それらに沿って保育を進めていくのが一般的である。
また近年では地域に根ざしていることや保育のノウハウが豊富であるなどの理由から地域の子育て支援センターとして期待されており(実際に子育て支援センターを併設しているところもある)、入所児のみだけではなく地域の子どもと保護者を対象に園庭開放やイベント、子育て相談などを行っているところが増えている。
更に保護者のニーズの多様化に伴い、開所時間以外にも児童を預かる早朝保育・延長保育や、通常保育所に入所していない児童を一時的に預かる一時保育など、様々な形態の保育が実施されている(詳細は保育の記事参照)。
[編集] 保育所と保育園、幼稚園
[編集] 保育所と保育園
正式名称は「保育所」であるが、「入所」と「入園」を比較しての語感から「保育園」と称されることが多い。国公立は「保育所」だが、私立では認可・無認可にかかわらず「保育園」「幼児園」を固有の名称としていることが多い。
[編集] 保育所と幼稚園
保育所は、文部科学省が管轄し学校教育法に規定される幼稚園とは異なる。
保育士の資格と幼稚園教諭の資格は、要件などに似たところがあるが、幼稚園教諭は教育職員免許法に基づき、都道府県教育委員会の免許を受け、幼稚園で教育にあたる点で異なっている。
根拠となる法律は異なるが、実際には幼稚園とそう大きく異なった保育内容ではないこと、また保育ニーズの多様化や経費削減などの面から、幼稚園と保育所の統一(幼保一元化)が言われており、施設を共有したり、催しを共催する事例も出てきているが、上にあるような所管省庁の違いをはじめ、実現には様々な問題が残っている。2006年10月1日から、幼保一元化のための施設として認定こども園制度がスタートする。
[編集] 保育所入所要件(保育が欠ける原因)
主な原因として、
- 保護者の居宅外就労(フルタイム労働・パート労働・業としての農林漁業など)
- 保護者の居宅内労働(自営・内職など)
- 産前産後
- 保護者の傷病または心身障害
- 同居親族の介護
- 災害の復旧
があげられる。
母子・父子家庭福祉の観点からこれらの世帯に対して優先順位を設ける場合もある。
また、このほかにも下記の状態が入所要件としてあげられるが、その場合は入所の優先順位が低くなる(市町村の判断による)。
- 保護者が昼間の学校に通っているとき
- 保護者に就労の意思があり、求職活動をしているとき(1か月間を限度としている自治体もある)
[編集] 保育料
保育料は子供が入所する日の属する月の初日の年齢及び子供の扶養義務者の前年分の課税状況に基づいて自治体が決める。年齢は3歳以上と3歳未満で区分する場合が多いが、「0歳児」「1,2歳児」「3歳児」「4歳以上児」の区分を設けている自治体もある。
[編集] 通年制
入所した日からその年度が終了するまでの間に子供の年齢が1歳上がっても年齢の区分が変わることはない。そのため生年月日が同じ子供でも年度途中などで入所した場合は保育料が異なったり、クラスが異なったりする場合もある。
[編集] 4月2日生まれ
年齢計算ニ関スル法律により、4月2日生まれの子供は年度の初めである4月1日にはすでに1歳を加えているため、学校教育法における小学校の就学時に同じ学年になるほかの子供よりも、一学年上の年齢で入所することになっている。
[編集] 保育所の状況
平成18年4月時点での保育所の状況は、下記の通りとなっている。
保育所数 22,699カ所 (公立・11,848 私立・10,851)
定員 2,079,406人
利用児童数 2,003,610人
保育所数、定員、利用児童数ともに前年に比べて増加している。 保育所利用児童数は、厚生労働省(当時・厚生省)のエンゼル・プランがスタートする平成7年度より、増加し続けている。 これは、昭和48年生まれ(第2次ベビーブームのピーク)が5歳であった昭和53年度をピークとして園児数が減り続けている幼稚園の状況とは対照的といえる。