偽死
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
偽死(ぎし)とは、昆虫などが刺激を受けたときに、体を硬くして全く体を動かさなくなること。擬死とも。天敵から身を守るために死んだふりをするのだと言うことで、この様に呼ばれる。
[編集] ありかた
擬死の状態は、動物によって様々である。昆虫などでは、手足を縮め、体に密着させる形を取るものと、手足をこわばらせたような形を取るものとがある。いずれにせよ、この状態で体は硬直し、指で押させたぐらいでは形を変えない。
他方、体の力を抜いた形で動かなくなるものもある。
偽死を行なう動物は幅広い。昆虫では、ナナフシ、カメムシ、ハムシ、コガネムシ、ゾウムシ、コメツキ、タマムシ、その他コウチュウ目に例が多い。昆虫以外では、クモ、ヤスデ、カニの一部などによく似た状態が見られる。逆に、擬死を行わない昆虫は、チョウ、トンボなど、活動的なものが多い。
哺乳類でもオポッサムのそれが有名であるし、タヌキの狸寝入りも似たようなものだと言う話もある。
実際は本当に気絶していると言われている。 クワガタ類は足場が振動すると偽死するし、テントウムシ類は天敵が近づくだけで偽死する。
多くの場合、しばらく放置すれば、やがて手足など体の末端が動き始め、やがて手足を伸ばして移動を始める。
[編集] 意味合い
擬死は、言葉の意味からすれば、死を装うことで敵の攻撃を避ける、という意味に読める。実際、いかにも死んだかのように見えるものはある。しかし、特に昆虫などの場合、死を装うと見るのはうがち過ぎか、と思われる例が多い。たとえばダンゴムシやタマヤスデは、刺激を受けると丸くなって動かないが、これはむしろ防御姿勢を取ったものと見ることができる。
また、実際に昆虫採集などしていると遭遇することであるが、枝葉の先にいる昆虫を見つけ、捕まえようとした瞬間、虫が枝先から手足を離し、ぽろりと落ちることがよくある。この場合、下の草むらを探して見つけることはとても難しい。見つけた場合、たいていは擬死の状態である。つまり、最も素早く効果的な逃げ方が即座に手足を縮めて落下し、そのまま動かないことであるらしい。とすれば、死んだように見えるのは二次的な問題であると見ることができる。