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クモ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

?クモ目

ジョロウグモ
分類
 : 動物界 Animalia
 : 節足動物門 Arthropoda
亜門 : 鋏角亜門 Chelicerata
 : クモ綱 Arachnida
 : クモ目
亜目
  • ハラフシグモ亜目
  • クモ亜目

クモ蜘蛛)、クモ類は、節足動物門鋏角亜門クモ綱クモ目(真性クモ目)に属する動物の総称である。網を張り、虫を捕ることで、一般によく知られている。

目次

[編集] 体の構造

昆虫類と同一視されることが多いが、節足動物門昆虫綱に属する昆虫とは分類上は別のグループに属する。昆虫との主な区別点は、脚の数が8本であること、頭部と胸部の境界が明確でないことなど。しかし、単にと言った場合にはクモも含まれる場合が多い。

体は頭胸部と腹部からなる。頭胸部と腹部の間は、細い部分でつながっている。

頭胸部には4対の歩脚と1対の触肢、口には鎌状になった鋏角(きょうかく)がある。頭部には目が並んでいる。ふつう、8つの目が2列に並んでいるが、その配列や位置は分類上重要な特徴になっている。網を張らずに生活するクモでは、そのうちのいくつかが大きくなっているものがある。

鋏角は鎌状で、先端が鋭く、獲物にこれを突き刺して、毒を注入する。触肢の基部は鋏角の下面で下唇を形成する。触肢は歩脚状で、普通のクモでは歩脚よりずっと小さく、鋏角の補助のように見えるが、原始的なクモでは見掛けでは歩脚と区別できない。歩脚の先端には爪がある。造網性のクモでは大きい爪2本と小さい爪1本があるが、徘徊性のクモでは、小さい爪のかわりに吸盤状の毛束がある。

腹部にはふつうは外見上の体節がない。外骨格は柔らかく、全体に袋状になっている。腹部の裏面前方には、1対の書という呼吸器官があり、その間に生殖腺が開いている。腹部後端には数対の出糸突起がある。その後ろに肛門がある。

なお、これは普通のクモの場合である。キムラグモ類など下等なクモ類では若干の違いがある。キムラグモ類では腹部に体節が見られ、糸疣は腹部下面中央に位置し、書肺は2対で4つある。また、触肢は歩脚とほぼ同じで、全体では脚が5対あるように見える。トタテグモ類は、腹部に節がなく、糸疣は腹端にあるが、他はキムラグモ類と同じである。

雌雄の区別は比較的たやすい。多くの場合、雄は雌より小型で華奢である。コガネグモ科ではその大きさの差が著しく、徘徊性のクモでは差は大きくないことが多い。また、模様にはっきりした差があるものもある。

確実な区別は外性器でおこなう。雌では、腹部の腹面前方、書肺の間の中央に生殖孔があり、その開口部はキチン化して、複雑な構造を持つ。雄では、生殖孔は特に目立たないが、触肢の先端にふくらみがあり、複雑な構造になっている。これは、精液をここに蓄え、触肢から雌の生殖孔へ精子を送り込むという、特殊な交接を行うためである。この雌の生殖孔と雄の触肢の構造は、種の区別にも重視される。


[編集] 出糸突起

出糸突起は、別名を糸疣ともいう。普通のクモ類では腹部後端にあるが、キムラグモ類では腹部の中央にあり、大きい。関節があり、付属肢に由来するものである。

一部に、通常の糸疣の前に、楕円形の糸を出す構造を持つものがある。これを篩板(しばん)という。これを持つクモは、第4脚の末端近くに、毛櫛(もうしつ)という、きっちりと櫛状に並んだ毛を持つ。糸を出すときはこの脚を細かく前後に動かし、篩板から顕微鏡でも見えないほどの細かい糸を引き出し、これがもやもやした綿状に太い糸に絡んだものを作る。

[編集] 習性

基本的に陸上性の動物で、多くの種類が砂漠、高山、森林草原湿地海岸などあらゆる陸上環境に分布している。ただし、淡水にせよ海水にせよ、水際までは結構種類がいるが、水中生活と言えるものは、ミズグモだけと言ってよい。

[編集] 食性

肉食性で、自分とほぼ同じ大きさの動物まで捕食する。その食物は昆虫類から同じクモ類、軟体動物、はては小型の脊椎動物まで多岐にわたる。沖縄県石垣島では、日本最大のクモであるオオジョロウグモがツバメを捕食していたのが観察されている。オオツチグモ類はかつて、鳥を捕食するというのでトリトリグモあるいはトリクイグモと呼ばれていた。この話そのものは伝説めいているが、実際に蛙やネズミはよく捕食するようである。

捕食行動としては、細い糸で巣や網をつくって捕らえる・徘徊して捕らえるの2つに大別できる。原始的な種は、地中にトンネル状の巣を作り、入り口に捕虫のための仕掛けを糸で作る。クモの網はこれを起源として発達したと考えられる。クモの網は様々な形があり、簡単なものは数本の糸を引いただけのものから、極めて複雑なものまで様々である。約半数のクモが、網を張らずに待ち伏せたり、飛びかかったりして餌を捕らえる。いずれの場合にも、餌に食いつくには直接に噛み付く場合と糸を絡めてから噛み付く場合がある。

「生き血を吸う」というふうにも言われるが、実際には消化液を獲物の体内に注入して、液体にして飲み込む(体外消化)ので、食べ終わると獲物は干からびるのではなく、空っぽになっている。

[編集] 生殖行動

雄が触肢に入れた精子を雌の生殖孔に受け渡すという、動物界で他にあまり例のないやり方を行う。雄の触肢の先端には、雄が成熟すると複雑な構造が出来上がる。これは大ざっぱに言えば、スポイトのようになっていて、精子を蓄える袋と、それを注入する先端がある。雄は雌の所へゆく前に、まず、小さな網を作り、ここへ生殖孔から精子を放出、これを触肢に取り入れる。多くの場合、雌は雄より大きく、肉食性であるので、雄の接近は危険が伴う。安全に接近するための配偶行動がいろいろ知られている。造網性のものでは雄が網の外から糸をはじいて雌の機嫌をうかがうものが多い。ハエトリグモは、雌の前で雄が触肢や前足を振ってダンスをする。

[編集]

卵は多くの場合、多数をひとかたまりで産み、糸を巻いて卵のうを作る。卵のうは種によって様々な形をしている。卵は全体で丸い塊となり、柔らかな糸でくるまれる。それだけの卵のうを作るものもあるが、さらにその外側に厚く糸で作った膜で袋や円盤状の卵のうに仕上げるものもある。

卵のうをそのまま樹皮に貼り付けたり、石の裏にくっつけたりと放置するものもあるが、自分の網の片隅につるす、あるいは自分の巣の中に卵を産む、しばらくを一緒に過ごすなど、一定の親による保護を行うものも多い。ユウレイグモハシリグモアシダカグモなどは卵のうを口にくわえて保護し、コモリグモは糸疣につけて運ぶ。このように、卵を保護する習性のあるクモのなかには、幼生の期間までをともに過ごすものもある。

[編集] 幼虫

孵化した幼虫は、通常1回の脱皮をするまでは卵のう内にとどまる。初齢幼生は柔らかく不活発で、卵のう内でもう1回の脱皮をおこなった後、やや活発になった子グモが卵のうから出てくるのが普通である。卵のうから出てきた子グモが、しばらくは卵のうの周辺で固まって過ごす習性が見られるものが多く、これをクモのまどいという。この時期にちょっかいをかけると大量の子グモが四方八方へ散っていくため、これを大勢があちこちへ逃げ惑う様に例えてクモの子を散らすという比喩表現がある。


卵を保護する習性のあるものでは、子グモとしばらく一緒に過ごすものも多い。コモリグモ類では、生まれた子をしばらく背中で運ぶ。また、カバキコマチグモは雌親が子グモに自分自身を食わせてしまう。

その後、子グモはそれぞれ単独生活にはいるが、その前に、子グモが高いところに上り、糸を風にふかせて、タンポポの種子のようにして空を飛ぶ習性を持つものが多い。これをバルーニングという。

[編集] 糸の利用

クモと言えば糸を想像するくらい、クモと糸とのつながりは深い。すべてのクモは糸を出すことができ、生活の上でそれを役立てている。

すべてのクモは歩くときに必ず糸を引いて歩く。これをしおり糸という。敵から逃れるために網から飛び落ちるクモは、必ず糸を引いており、再び糸をたぐって元に戻ることができる。また、徘徊性のクモも、歩くときには同じように糸を引いている。ハエトリグモが獲物に飛びついたとき、間違って落下しても、落ちてしまわず、糸でぶら下がることができる。

網を張るクモでは、糸を使って網を張り、これにかかる昆虫などを餌として捕らえる。代表的なクモの網である円網では、横糸に粘液の着いた糸があって、獲物に粘り着くようになっている。クモは網を歩く時にはこの糸を使わず、粘りのない縦糸を伝って歩くので、自らは網に引っかからない。 粘液をつけた糸を使わない網もある。網を張るクモは、網に餌がかかるのを振動で感じ取る。網の中央にクモがおらず、網のすみにクモがいる場合、クモは網の枠糸か、網の中心から引いた1本の糸を脚に触れており、網からの振動を受け取る。

地中に巣穴を作るものや、テント状の巣を作り、特に網を作らないものでも、巣のまわりの表面にまばらに放射状の糸を張り、それに虫が触れると飛び出して捕らえるものがある。このような糸を受信糸という。これが網の起源ではないかとも言われている。

餌がかかると糸を巻き付けて身動きできなくして捕らえる。網を張るクモでは、獲物を回転させながら幅広くした糸を巻き付けてゆくが、場合によってはクモが獲物の周りを回りながら糸をかけてゆく。網を張らないクモでも、餌を糸で巻いて捕らえるものもある。

多くの種では上記のように、子グモが糸を空中に流しそれに乗って空を飛ぶ(バルーニングを参照)。小型の種では、成虫でもそれを行うものがある。この飛行能力により、クモは他の生物よりもいち早く生息地を拡大することができる。一例として、インドネシアクラカタウで火山活動により新たな島が誕生したときに、生物の移住について調査したところ、最初にやってきた生物はクモだったと報告されている。

産卵や脱皮のために巣を作るものもあり、その場合も糸を使う。地中生のクモでは巣穴の裏打ちを糸でしているし、トタテグモのように扉を作るものは、糸でそれを作る。

また、多くのものは卵塊を糸でくるんで卵のうにする。

クモの糸の組成はタンパク質分子の連鎖で、強度は同じ太さの鋼鉄の5倍、伸縮率はナイロンの2倍もある。同じ分子構造を再現し、人工的に作ろうと言う試みがなされているが未だに成功していない。

[編集] 天敵

小型の肉食動物にはクモ類を捕食するものは多いと考えられる。クモは昆虫よりも体が柔らかいので、飼育下の餌としても重宝する。

特にクモ類の天敵としては、狩り蜂類のベッコウバチ類が蜘蛛を狩るハチとして有名である。これらのハチは、クモの正面から突っ込んで、大顎の間に針を刺し、麻酔すると足をくわえて巣穴に運ぶ。他に、寄生性のものとして成虫に外部寄生するクモヒメバチや卵のうに寄生するハエ類やカマキリモドキなども知られる。

また、直接にクモを攻撃するものではないが、メジロなどの小鳥はクモの網を巣の材料とする。そのためにクモの網に鳥は突っ込み、その体にまとわりついた糸を集め、巣材の苔などをかためるのに用いる。クモとしては大いに迷惑であろう。他にクモの網に引っかかった虫を横取りする昆虫なども知られる。

[編集] 人間との関わり

人家の周りにも多くの種類が生息し、これらはハエゴキブリなどの害虫を捕食するため、益虫の役割を果たしているが、同時に、その容姿を忌み嫌う人が非常に多いため、不快害虫のカテゴリーに入れられることが多い。また、クモの網が家や壁を汚すと言って嫌われる。

クモの網がはられている状態は、人間の生活する環境としては、全く手入れが行き届いていない証拠とみなされる。テレビドラマ等では、空き家であること、通る人がいないことを示すために使われる。「クモの巣が張る」というのは、誰も使う人がいない、誰もやって来ないことを暗示する表現である。

不気味な印象を与えることと、害虫退治をする益虫であることで、クモには両面的な印象が付きまとう。「怪奇クモ男」は悪役になるが、「スパイダーマン(日米両版)」と「仮面ライダー剣」の仮面ライダーレンゲルは正義の味方であり得る。古来日本では、クモを見ることに縁起をかついだ。代表的なのは、夜にクモを見ると縁起が悪い、しかし同時に朝のクモは縁起がいい。これは地方によって様々な言い方があり、九州ではクモをコブと呼んで、夜のクモは「夜コブ(よろこぶ)」で、縁起がいい。

他方、農業の方面では、害虫駆除の効果が様々に研究され、一定の評価を得ている。水田では、アシナガグモ・ドヨウオニグモ・セスジアカムネグモなどの造網性のもの、コモリグモなどの徘徊性のものなどが害虫駆除に大いに役立っていることが知られている。クモを害虫駆除のために積極的に利用する試みが行なわれたことがある。

クモの糸を工業的に利用する試みもあるが、大きく認められているものは少ない。クモの糸は様々な点で利用価値があり得るが、クモを大量養殖することの困難さと、糸を取り出すことの困難さが障壁になる。これまでにもっとも用いられたのは、レンズにスケールを入れるための用途である。

ほとんどのクモは虫を殺す程度の毒を持っているが、人間に影響を持つほどのものは世界でも数種に限られる。毒グモとして有名なのは、近年日本に侵入して有名になったセアカゴケグモをはじめとするゴケグモ類である。また、蜘蛛の糸が目にはいると炎症を起こすことがある。これは単なる汚染によるものではなく、毒性分が関与しているとも言われる。

日本では伝統的にコガネグモなどを戦わせる遊びが子供たちの間にあり、蜘蛛合戦とよんだ。多くの地域で廃れてはいるが、現在でも町を挙げて取り組んでいるところがある。

最近ではオオツチグモ科のクモ(通称タランチュラ)がペットとして出回っており、ペットとしての地位を獲得している。また、その他のクモもペットとして輸入されており、変わった種類もみられる。

[編集] 神話との関わり

クモは糸を紡ぐ事から、機織を連想させる。

[編集] 系統と分類

ウミグモ類は、名前にクモの字が付くが、クモ綱とは別のウミグモ綱に属する。クモ綱に含まれるクモ目以外のグループは、ダニ目、サソリ目、カニムシ目、ザトウムシ目など。このうち、ザトウムシは、別名をアシナガグモ、メクラグモといい、クモと比較的外見が似ている。ウデムシ目もクモ目に近いとされることがある。クモ綱の中での系統関係は、必ずしも統一した見解がない。

クモ目の中では、キムラグモ類が最も原始的で、ハラフシグモ亜目として他のすべてのクモ類から分離されている。クモ類では唯一、腹部に体節が残り、出糸突起は大きくて腹面中央にある。また、書肺は2対。糸を出す能力が低く、巣穴の裏打ちをしない。触肢は歩脚状。

クモ亜目ではトタテグモ下目のものが原始的特徴を有する。いずれも4対の書肺をもつ。トタテグモ類は触肢が歩脚状であるが、ジグモ類やジョウゴグモ類では普通のクモ類のように小さくなっている。

クモ下目にクモ類の大多数が所属し、多くの科に分かれている。

出糸突起の前に篩疣を持つものを篩疣類として大きくまとめるのが従来の分類法である。現在出版されている図鑑等はこれに基づいている。しかし、近年これを否定する考えもあり、それに基づく分類体系では、科の配置等、大きく変わる。今後の検討を待ちたい。

[編集] 代表的なクモ

ここでは、クモ目以下について主な科と代表的な種を紹介する。なお、分類体系は古いものを踏襲している。

クモ目

[編集] クモをモチーフにしたもの

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

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