共焦点レーザー顕微鏡
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共焦点レーザー顕微鏡(きょうしょうてんれーざーけんびきょう)とは、高解像度のイメージと三次元情報の再構築が可能な顕微鏡の一種。共焦点顕微鏡の主な特徴は、焦点距離がばらばらになるような厚い試料であってもボケのない像を得られることである。イメージは微小なポイント毎に撮られ、それをコンピュータで再構成して全体の画像が得られる。この顕微鏡の原理はマービン・ミンスキーによって1953年に開発されたが、理想に近い光源としてレーザーが実用化されるまで一般化せず、1980年代になってやっと普及するようになった。
共焦点走査型レーザー顕微鏡 (Confocal laser scanning microscopy) とも呼ばれ、CLSM あるいは LSCM と略記される。
[編集] 結像方式
共焦点レーザー顕微鏡では、レーザービームが光源の開口部から発せられ、対物レンズで標本に焦点を結び、その標本の発する蛍光を得る。蛍光とレーザーの反射光の混合した光が対物レンズによって再度集められる。その混合した光はビームスプリッターによって分離され、レーザー反射光は素通しして蛍光だけを検出装置に送り込む。ピンホールを通った蛍光は光検出装置(光電子増倍管やアバランシェ・フォトダイオード)が検出し、光の信号を電気信号に変換してコンピュータに記録する。
検出装置のピンホールは焦点のあっている蛍光以外の光が内部に入るのを防ぐ。従って、焦点の合っていない光は二重に防がれている。第一にレーザー光以外の光は標本に当てられず、第二に検出装置のピンホールによってブロックしているのである。結果として従来の顕微鏡よりも鮮明なイメージが得られ、厚みが様々に変化する試料のイメージも得られる。
試料の蛍光を発する部分から得られた光は、最終的に得られる画像のピクセルに相当する。レーザーは試料を走査してピクセルを順次得ていき、最終的に全体の画像を得る。各ピクセルの明るさは得られた蛍光の強さに比例する。ビーム走査はサーボ制御のミラーで行われる。この走査法は反応遅延が小さく、走査速度を遅くすればノイズが少なく高解像度のイメージが得られる。顕微鏡のステージを上下させることで複数の焦点面から情報を集められる。複数の焦点面の二次元画像を重ね合わせることで、コンピュータは標本の三次元画像を作成することができる。
さらに共焦点顕微鏡は、標本を破壊することなく厚い標本の高解像画像を得ることができる。共焦点レーザー顕微鏡は蛍光を使用するため、試料は蛍光染料で処理しないと観察できない。しかし、生物試料の場合は外乱を最小限にとどめるために蛍光染料の濃度を非常に低くする場合もある。機種によっては蛍光物質の単分子を観測することもできる。また、遺伝子操作によって、自ら蛍光物質を生み出す有機体を作成することもできる(Green Fluorescent Protein参照)。
[編集] 関連項目
- 2光子励起顕微鏡
- 全反射照明蛍光顕微鏡
- 蛍光顕微鏡
- レーザー走査顕微鏡
- 光学顕微鏡
[編集] 外部リンク
- Confocal microscopy: protocols and resources
- 共焦点レーザー顕微鏡ギャラリ 東京大学 植物分子遺伝学研究室