凹版印刷
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凹版印刷(おうはんいんさつ)とは、印刷技術のひとつで、版に図像を削り込むものである。通常エッチング、エングレービング、ドライポイントやメゾチントなどの手法によって銅または亜鉛に溝を作る。コログラフィ (Collography) もまた凹版として印刷しうる。凹版を印刷するときは、版をインクで覆い、ターラタン地か新聞紙によって表面を拭って、溝にのみインクが残るようにする。湿らした紙を先端に置き、印刷機を圧力をかけて版と紙を通し、版の溝から紙へとインクを転写する。
エッチングは凹版処理の一種だが、道具によって彫るエングレービングとは異なり、線は酸によって版を腐食させたものである。印刷課程は前記と同じ。
[編集] 起源
印刷技法としての沈み彫りは、おそらく15世紀半ばにドイツで開発されたものである。武器や甲冑、或は楽器や宗教的な物品は、太古より彫刻によって飾られてきた。またそのなかには稜線に黒色顔料をすり込んで際だたせることもあったであろう。そうして彫り込まれたものの上に紙を置きデザインの写しをえたということからじかに凹版印刷は考案されたと考えられる。マルティン・ションガウアーは銅版彫刻技術を開発したなかで知られる最も古い画家である。17世紀末から18世紀にこの技法はもっとも使われ、とくにポートレイトの複製に用いられた。微細な線を印刷可能なことから、偽造防止の観点から、凹版印刷は銀行券やパスポートに多用されるほか、また、高価な郵便切手の印刷の折に使われることがある。
[編集] 利用
紙幣やパスポートの印行に凹版印刷はしばしば使われる。凸版印刷や石版印刷などの平板印刷と対照的である。