原子時計
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原子時計(げんしどけい、atomic clock)は、原子や分子のスペクトル線を基準にして、発振器の周波数制御を行い、周波数または時間の標準として使用する装置。通常はマイクロ波領域のスペクトル線を用いて水晶発振器を安定化したものを指すが、可視領域のスペクトル線によって周波数安定化されたものを含むこともある。基準となるスペクトル線は、外から受ける影響による周波数シフトの小さい事、信号強度の大きい事、半値幅が狭い事などが必要であり、マイクロ波領域では基底状態の超微細準位間の遷移が利用される。
原子時計の性能をあらわす量に、正確さと安定度がある。原子や分子の遷移放射の周波数は一定不変であり、その逆数である微小時間間隔も一定不変であると考えられるが、現実には装置の不完全さや外部からの影響などにより誤差が生じる。正確さとは、理想状態における原子などの遷移周波数からのずれの量をどれだけ正確に決定できるかを示す量であり、安定度とは同一の周波数をどれだけの期間にわたり発生できるかを示す量である。正確さでは、秒の定義を実現しているセシウム原子時計、安定度では水素メーザー型原子時計が最もよく、それぞれ10 − 13、10 − 15に達している。
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