受領遅滞
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受領遅滞(じゅりょうちたい)とは、民法上の概念。債務の弁済において、受領などの債権者の協力を必要とする場合に、債務者が債務の本旨に従った履行の提供をしたにもかかわらず、債権者が協力しないか、もしくは協力できないことで、履行ができない状態になっていることである。(民法第413条)。債権者遅滞(さいけんしゃちたい)とも言う。
- 反対語・履行遅滞(債務者遅滞)
[編集] 受領遅滞の効果
(受領遅滞の法的性格につき法定責任説に立つ限り、弁済の提供の効果と完全に重なり合う)
- 債務者は供託して債務を免れることができる(第494条)。
- 弁済期前になされた場合は、爾後、約定利息を支払う必要がなくなる(第492条類推)。(弁済の提供をしたにもかかわらず、その後の利息を支払わせることとしたのでは、債務不履行責任を免れるとしたことの意味が失われるため妥当でないことを根拠とする)
- 債務不履行の責を負わない(第492条)。
- 債権者は同時履行の抗弁権を失う(第533条本文)。
- 特定物の引渡しの債務を負う者の注意義務が軽減される。(軽減のされ方については、「善良な管理者の管理者の注意義務」から「自己の財産におけると同一の注意義務」に軽減されるとするのか(第659条類推)、それとも、(緊急事務管理第698条のように)軽過失免責となるのかについて、学説上見解が分かれている。)
- 受領遅滞中の保管費用は債権者負担となる(第485条ただし書き)。
- 危険が債権者に移転する(第536条2項)。(ただし、危険の移転が問題となるのは、特定物売買や、不特定物売買の特定(第401条2項)の際に、危険が移転しないとの特約が結ばれていたので(第534条は任意規定である)危険は移転せずにいたところ、その後に受領遅滞が成立した場面に限定される。)
なお、判例は債務者による損害賠償請求権、契約解除権を認めていない。
[編集] 学説
受領遅滞の性質をめぐっては、債権者に受領義務の有無と関連して、大きく2つの学説がある。
- 法定責任説
- 債務不履行責任説
(法定責任説)受領遅滞とは、本来、債権者が債権を行使するか否かは債権者の自由であり(第519条参照)、債務者のなした弁済の提供を受領する義務は負わないはずであるが、法が公平の観点から特別に認めた法定の責任であるとする見解である。受領遅滞は、弁済の提供の効果を債権者の責任という視点から見たものに他ならないとする。
(債務不履行責任説) 弁済は、債務者の弁済の提供と債権者の受領という協同行為によって実現されるものであって債権者の協力なくして実現できないのであるから、信義則上、債権者には債務者の弁済の提供を受領する義務(債務)があり、それを怠る債務不履行が、債権者の受領遅滞であるとする見解である。この見解によると、受領遅滞の効果として、債務者は債務不履行による損害賠償請求権や、契約解除権を取得することとなる。
判例は法定責任説を採用し、債権者に受領義務を認めていない。通説も法定責任説と見られる。債務不履行責任説を採る学者としては、我妻栄、近江幸治がいる。