名探偵の掟
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『名探偵の掟』(めいたんていのおきて)は、東野圭吾の推理小説である。名探偵天下一と警部の大河原が推理を繰り広げる本格推理小説短編集である。1996年初出版された。1990年に発表された『脇役の憂鬱』から始まる14の短編小説を元にした15の作品が収録されている。
各作品とも、推理小説そのものに対する批判、推理小説作家に対しての批判、読者に対しての批判が暗示されている。ユーモアのオブラートに包まれてはいるが、それぞれの批判は鋭く厳しいものとなっている。また、著者はこれらの作品で提示した批判内容を意識した推理小説を後にいくつか発表している。
主要登場人物2人が、自身が小説上の人物であることを自覚した上で作品世界を一旦離れ、推理小説の問題に言及したり批判を述べたりするなど、メタフィクションの要素を含んでいる。
1997年版の「このミステリーがすごい!」誌で第3位にランクインされ、著者初のトップ10入りを果たした。同年に発表した『どちらかが彼女を殺した』も13位に選定され、作家別得票数では1位に輝いた。また4度目となる吉川英治文学新人賞の候補にもなり、著者の1つの出世作ともいえる。
1996年9月には続編となる長編『名探偵の呪縛』が講談社より文庫書き下ろし刊行されたが、ミステリーに対する毒が少なかったことや、前作と世界観が全く異なっていることから、ファンの間からは賛否両論がでている。また一時期、シリーズ第3作『名探偵の哀愁』が刊行されると囁かれたが、いつの間にか立ち消えの状態となっている。
[編集] 登場人物
- 天下一大五郎
- 自称「頭脳明晰・博学多才・行動力抜群の名探偵」。大河原警部からは、敬遠されているようにも見えるが、舞台裏では作品世界から抜け出して警部と一緒に推理小説の問題点について議論している。事件でわからないことがあれば、大河原警部からこっそりヒントを貰っている。
- 大河原番三
- 県警捜査一課警部。42歳。いつも名探偵役である天下一に対して、推理小説定番のへっぽこ警部役を演じている。だが、実際には天下一より事件を早く解決してしまって、わざと真犯人でない容疑者を疑うふりをしている。天下一と同じく、トリックや密室等を使えばよい、というような推理小説に対して、批判の矢を向けている。『名探偵の呪縛』にもワンシーンだけ登場している。