団体商標
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
団体商標(だんたいしょうひょう、collective mark、collective trademark)は、団体が所有し、団体の構成員が使用する商標である。団体標章(だんたいひょうしょう)ともいう。
団体商標は、団体が使用する標章ではなく、その構成員に使用させる標章であるという点で、通常の商標と大きく異なる。諸国の商標法によれば、自己が使用するためではなく、もっぱら他人に使用させるための標章は、商標としての保護の対象外とされるのが原則である。団体商標はこの原則の例外にあたり、団体自らが使用する意思がない標章であっても、団体の構成員に使用させる標章であれば、団体商標として保護され得る。なお、団体商標の登録出願の受理および団体商標の保護は、工業所有権の保護に関するパリ条約の同盟国の義務である(パリ条約第7条の2)。
通常の商標は、商品または役務の出所(しゅっしょ、供給元)が特定の一の事業者であることを表示する。一方、団体商標は、商品または役務の出所が特定の団体に属する一定の範囲の事業者であることを表示する。
株式会社その他の法人が所有して自ら使用する商標は、団体商標ではない。これは法人が自ら使用する通常の商標である。
目次 |
[編集] 日本
[編集] 歴史
1959年の商標法の全面改正以来、1996年の商標法改正に至るまでの間、日本の商標法には団体商標の制度が欠如していた。日本はパリ条約の同盟国であるが、パリ条約に定められた団体商標を保護する義務は、1959年の商標法で新たに規定した通常使用権の許諾(商標法第31条)で代替できるとされていた。
しかしながら、日本がマドリッド議定書に加入するにあたり、団体商標の制度が必要とされた。そこで、1996年の商標法改正で団体商標の制度が再び設けられた。
2005年の商標法改正では、新たに地域団体商標の制度が設けられた。
[編集] 要件
- 出願人は社団法人または特別の法律により設立された法人格を有する組合(またはこれらに相当する外国の法人)でなくてはならない(商標法第7条第1項)。
- 登録を受けようとする商標は、団体の構成員に使用させるものでなくてはならない(商標法第7条第1項)。
- 出願時に、出願人が社団法人または組合であることを証明する書面を提出する必要がある(商標法第7条第3項)。
[編集] 効果
社団法人または組合が団体商標として商標登録出願をすると、自己の商品または役務について使用する商標でなくても、商標登録を受けることができる(商標法第7条第2項によって読み替えられる第3条第1項)。団体商標の商標権には以下のような特徴がある。
- 団体商標の商標権を他人に移転すると、通常の商標権となる(商標法第24条の3第1項)。ただし、団体商標の商標権として移転する旨記載した書面と移転を受ける商標権者が社団法人または組合であることを証明する書面とを特許庁長官に提出した場合はこの限りではない(商標法第24条の3第2項)。
- 団体の構成員は、団体から登録商標の使用をする権利の許諾を受けなくても、団体の定めるところにより登録商標を使用できる(商標法第31条の2第1項)。