地域団体商標
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地域団体商標(ちいきだんたいしょうひょう)は、日本の商標法において、地域の名称と商品または役務の名称を普通に用いられる方法で表示する文字のみからなる商標等であって、一定の範囲で周知となったため、事業協同組合、農業協同組合等が商標登録を受ける商標をいう。
2006年10月27日に第一弾として52件が認定されている。詳細は「地域ブランド」を参照のこと。
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[編集] 要件
[編集] 出願人
地域団体商標の登録出願をする出願人は、特別の法律によって設立された法人格を有する組合であり、構成員となる資格を有する者の加入の自由がその法律によって担保されているもの(またはこれに相当する外国の法人)でなくてはならない(商標法7条の2第1項)。中小企業等協同組合法により設立される事業協同組合、農業協同組合法によって設立される農業協同組合などがこれにあたる。
[編集] 商標
地域団体商標として登録を受けようとする商標は、以下の要件を満たす必要がある(商標法7条の2第1項)。
- 組合自身または構成員が使用する商標であること。
- 商標が使用された結果、組合自身または構成員の業務に係る商品または役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていること。日本全国に広く知られている必要はないが、例えば、隣接都道府県に及ぶ程度に知られている必要があるとされる。
- 地域の名称と商品または役務の名称等を普通に用いられる方法で表示する文字のみからなる商標であること。具体的には、以下の類型のいずれかに該当する文字のみであること。
- 地域の名称+商品または役務の普通名称(例)大間まぐろ、草加せんべい
- 地域の名称+商品または役務を表示するものとして慣用されている名称(例)美濃焼、有馬温泉(「焼」は陶磁器を、「温泉」は入浴施設や宿泊施設の提供の役務を表示するものとして慣用されている名称である。)
- 上記+商品の産地または役務の提供の場所を表示する際に慣用されている文字(例)仙台名産笹かまぼこ(商品の産地または役務の提供の場所を表示する際に慣用されている文字としては、「名産」、「特産」などが考えられる。)
- 商標に含まれる地域の名称は、商品の産地や役務の提供地の名称であるなど、商品または役務と密接な関連性を有すること(商標法7条の2第2項)。
なお、地域の名称のみの商標、商品や役務の名称のみの商標は商標登録を受けることができない。また、地域の名称と商品または役務の名称等を表示する文字を含む商標であっても、識別力を有する図形と組み合わされた商標や特殊な書体の文字によって表示する商標は、地域団体商標としてではなく、団体商標または通常の商標として登録を受けることとなる。地域団体商標の登録出願を団体商標または通常の商標の登録出願に変更することができる(商標法第11条第2項)。
[編集] 手続
地域団体商標の登録出願の時には、出願人が組合等であることを証明する書面、および、登録を受けようとする商標が地域の名称を含むことを証明する書類の提出が必要である(商標法7条の2第4項)。
[編集] 効果
上記の地域団体商標の要件を満たす場合、登録を受けようとする商標が商標法第3条第1項の第3号から第6号までに該当する場合であっても、それを理由として商標登録を拒絶されない(商標法第7条の2第1項)。ただし、地域団体商標の要件を満たさない場合、地域団体商標としての商標登録を拒絶され、また、地域団体商標の要件を満たしても、それ以外の要件を満たさないときは、商標登録を拒絶される(商標法第15条)。
地域団体商標の商標登録を受けた場合に設定される商標権は、通常の商標権と同じく効力を有する。以下には、地域団体商標の商標権に特別な規定を説明する。
[編集] 地域団体構成員の権利
組合の構成員は、組合から特に許諾を受けなくても、組合の定めるところにより登録商標を使用する権利を有する(商標法第31条の2第1項)。
[編集] 商標権の移転の制限など
組合が地域団体商標の商標権を譲渡したり、地域団体商標の商標権に専用使用権を設定したりすることはできない(商標法第24条の2第4項、第30条第1項)。また、地域団体商標の商標権は、その権利の譲渡ができない以上、質権の目的とすることができないと解する。
[編集] 先使用者の保護
地域団体商標の商標登録出願前からその商標を使用していた者は、自己の商標が周知性を有しない場合であっても、先用権を有する(商標法第32条の2第1項)。ただし、商標権者は、先用権者に混同防止表示を請求できる(商標法第32条の2第2項)。
[編集] 登録異議の申立て理由および登録の無効理由
もし、地域団体商標の要件を満たさないにもかかわらず登録を受けた場合、地域団体商標の要件を満たさないことは登録異議の申立て理由および登録の無効理由となる(商標法第43条の2、第46条第1項)。ただし、商標が需要者の間に広く認識されていないにもかかわらず登録を受けてから5年が経過した後、その商標が需要者の間に広く認識されるようになっていたときには、出願時に商標が需要者の間に広く認識されていなかったことを理由とした商標登録の無効の審判は請求できない(商標法第47条第2項)。
また、組合が組織変更により組合でなくなったこと、商標が需要者の間に広く認識されなくなったことは無効理由となる(商標法第46条第1項)。
[編集] 外部リンク
- 平成17年法律改正(平成17年法律第56号)解説書(日本国特許庁)
- 地域団体商標制度のお知らせ(日本国特許庁)
- 地域団体商標の出願状況について(日本国特許庁)
- 商標法の一部を改正する法律(平成17年6月15日法律第56号)(衆議院)
- 地域ブランド保護のための商標法の在り方について(産業構造審議会知的財産政策部会報告書)(日本国特許庁)