多比良和誠
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多比良 和誠(たいら かずなり、1952年 - )は、日本の生物学者。元東京大学大学院工学系研究科教授。
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[編集] 経歴
1952年4月 長崎県に生まれる。佐世保工業高等専門学校を卒業後、技官として長崎大学へ就職。長崎大に講演に来た米国人教授の通訳をつとめ、その教授の勧めで渡米・留学する。1977年、南イリノイ大学理学部化学生化学科を卒業。1984年イリノイ大学大学院にて博士号(Ph.D.)を取得。
ペンシルベニア州立大学博士研究員を経て、1987年に通産省工業技術院(現独立行政法人産業技術総合研究所)の主任研究官となる。1994年、筑波大学応用生物化学系教授。1999年より、東京大学大学院工学系研究科化学生命工学専攻教授、産業技術総合研究所ジーンファンクション研究センターのセンター長を兼任した。
専門は核酸化学であり、リボザイムやRNAiなどの分野に業績を残し、遺伝子・デリバリー研究会会長(2003年)・常任理事(2004年)。ベンチャー企業「iGENE」を立ち上げ、取締役を兼任した。
[編集] 論文捏造疑惑
- 2005年4月、日本RNA学会が多比良教授らの論文12件について疑義があるとして東京大学に調査を依頼。工学系研究科が調査委員会を設置して論文4件について再現性を要請。
- 2006年3月、東大の研究に関する調査委員会は、上記の4件の論文について「再現性、信頼性はない」と発表。産総研は懲戒処分を行わず、4月から雇用契約を継続しない事を通知し、事実上、産総研からは解雇される。
- 2006年5月、東大の責任に関する調査委員会は、多比良教授及び上記の4件の論文の筆頭著者である川崎広明助手について、「大学の名誉と信頼を著しく傷つけ、懲戒にあたる」とした報告書を小宮山宏総長へ提出した。
- 2006年12月、東大は、多比良教授及び川崎広明助手を「大学の名誉と信頼を著しく傷つけた」として懲戒処分(懲戒解雇)にしたと発表。
- 2007年3月2日、懲戒解雇は不当とし、東京大学に対して地位確認と未払い賃金の支払いを求める訴えを東京地裁に起こした。
[編集] 著書
- 関根光雄・多比良和誠『RNAi法とアンチセンス法―新しいRNAの科学と応用』(2005/6、講談社)ISBN 4061538578
- 多比良和誠『RNAi実験プロトコール―より効果的な遺伝子の発現抑制を行うための最新テクニック』(2004/09、羊土社)ISBN 4897064171
- 多比良和誠・菅裕明 編「化学と生物学の接点がつくるNewバイオテクノロジー」『蛋白質 核酸 酵素』2004年8月25日発売 増刊号を書籍に改装
[編集] 外部リンク
- 東京大学多比良研究室ホームページ
- 多比良和誠教授発表の論文に関わる調査について(日本RNA学会)
- 東京大学工学系研究科調査委員会による記者会見資料
- 日本RNA学会会長から実験結果の再現性に関して調査依頼があった論文12編
- 今回の調査対象とした論文の内容の概略と日本RNA学会会長からの指摘事項の要約
- 多比良和誠教授が関係した事業の調査結果及び今後の対応について(新エネルギー・産業技術総合開発機構)
- ジーンファンクション研究センターの在り方等に関する検討結果について(産業技術総合研究所)
- 本学教員のRNA関連論文に関する日本RNA学会会長への最終調査報告(東京大学)
- 本学教員のRNA関連論文に関する懲戒処分(東京大学)
- 化学と生物学の接点がつくるNewバイオテクノロジー