大峯奥駈道
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
大峯奥駈道(おおみねおくがけみち)は、熊野三山(熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社)へと通じる参詣道・熊野古道のひとつ。
目次 |
[編集] 概要
大峯奥駈道は、奈良吉野山と熊野三山を結ぶ、もとは修験道の修行場として開かれた道であり、熊野古道の中で最も険阻なルートをなす。今日、大峰山(大峯山)というと、大峯山脈の山上ヶ岳と八経ヶ岳の総称とされることも多い(これは深田久弥の日本百名山が人口に膾炙したことによる)。だが、大峯奥駈道でいう「大峯」とは、山上ヶ岳からさらに奥の山々、そして最終的には熊野三山に至る修行の道の全体を指している。
[編集] 大峯奥駈
大峯奥駈とは、この道に設けられた行場を修行者が順に修行して歩くことを言う。修行場は「靡」(なびき)と呼ばれ、ひとつひとつに番号が割り当てられている。すなわち、熊野本宮大社の本宮証誠殿(1番)にはじまり、吉野川河岸の柳の宿(75番)に終わる、75箇所を数えるが、これは歴史的に整理されてきた結果であり、もっと多くの靡が設けられていた時期もある。
[編集] 順峯と逆峯
これら行場を巡る方法には2つの方法が知られている。ひとつは、本宮から吉野に向かう順峯(じゅんぷ)、他方は、逆に吉野から本宮に向かう逆峯(ぎゃくふ)で、それぞれに主宰する宗派が異なる。順峯は天台宗系の聖護院(本山派)が、逆峯は真言宗系の醍醐寺三宝院(当山派)がそれぞれ主導する。中世の熊野を支配し、熊野詣の先達をつとめたのは天台宗系の本山派であり、大峯奥駈についても本山派が先行していたが、近世以降の熊野詣の衰退に伴って、江戸時代から今日まで、両派とも吉野から入るのが一般的かつ正統的なものとされている。ただ、中世の熊野詣を主導した天台宗系による順峯は、那智山青岸渡寺によって復興され、今日でも行われているので、完全に途絶したわけではない。
また、水場が乏しいこともあって、前鬼宿(奈良県下北山村)以南の部分(南奥駈と呼ばれることもある)はたどられないことが一般的であり、現在でも南奥駈の行をおこなう寺院は限られている。
[編集] 歴史
[編集] 大峯奥駈道の成立
[編集] 中世から近世
[編集] 近代
[編集] 世界遺産登録と再興
[編集] 75の靡
以下に示すリストは、現在の聖護院が示すものに従う(逆峯の順番)。どの修験教団でも、靡の名はおおむね一致しているが、一部異なるものがあることに注意されたい。
- 第75 柳の宿(やなぎのしゅく)
- 第74 丈六山(じょうろくさん)
- 第73 吉野山(よしのさん)
- 第72 水分神社(みまくりじんじゃ)
- 第71 金峯神社(きんぷじんじゃ)
- 第70 愛染の宿(あいぜんのしゅく)
- 第69 二蔵宿(にぞうのしゅく)
- 第68 浄心門(じょうしんもん)
- 第67 山上岳(さんじょうがたけ)
- 第66 小篠の宿(おざさのしゅく)
- 第65 阿弥陀森(あみだがもり)
- 第64 脇の宿(わきのしゅく)
- 第63 普賢岳(ふげんだけ)
- 第62 笙の窟(しょうのいわや)
- 第61 弥勒岳(みろくだけ)
- 第60 稚児泊(ちごどまり)
- 第59 七曜岳(しちようだけ)
- 第58 行者還(ぎょうじゃがえり)
- 第57 一の多和(いちのたわ)
- 第56 石休宿(いしやすみのしゅく)
- 第55 講婆世宿(こうばせのしゅく)
- 第54 弥山(みせん)
- 第53 朝鮮ヶ岳(ちょうせんがたけ)
- 第52 古今宿(ふるいまじゅく)
- 第51 八経ヶ岳(はっきょうがたけ)
- 第50 明星ヶ岳
- 第49 菊の窟(きくのいわや)
- 第48 禅師の森(ぜんじのもり)
- 第47 五鈷嶺(ごこのみね)
- 第46 舟の多和(ふねのたわ)
- 第45 七面山(しちめんさん)
- 第44 楊枝の宿(ようじのしゅく)
- 第43 仏性ヶ岳(ぶっしょうがたけ)
- 第42 孔雀岳(くじゃくだけ)
- 第41 空鉢岳(くうはちだけ)
- 第40 釈迦ヶ岳(しゃかがたけ)
- 第39 都津門(とつもん)
- 第38 深仙宿(じんせんのしゅく)
- 第37 聖天の森(しょうてんのもり)
- 第36 五角仙(ごかくせん)
- 第35 大日岳(だいにちだけ)
- 第34 千手岳(せんじゅだけ)
- 第33 二つ岩(ふたついわ)
- 第32 蘇莫岳(そばくさだけ)
- 第31 小池宿(こいけのしゅく)
- 第30 千草岳(ちぐさだけ)
- 第29 前鬼山(ぜんきさん)
- 第28 前鬼三重滝(ぜんきのさんじゅうのたき)
- 第27 奥森岳(おくもりだけ)
- 第26 子守岳(こもりだけ)
- 第25 般若岳(はんにゃだけ)
- 第24 涅槃岳(ねはんだけ)
- 第23 乾光門(けんこうもん)
- 第22 持経宿(じきょうのしゅく)
- 第21 平治宿(へいじのしゅく)
- 第20 怒田宿(ぬたのしゅく)
- 第19 行仙岳(ぎょうせんだけ)
- 第18 笠捨山(かさすてやま)
- 第17 槍ヶ岳(やりがたけ)
- 第16 四阿宿(しあのしゅく)
- 第15 菊ヶ池
- 第14 拝返し(おがみかえし)
- 第13 香精山(こうしょうざん)
- 第12 古屋宿(ふるやのしゅく)
- 第11 如意珠岳(にょいじゅがだけ)
- 第10 玉置山(たまきさん)
- 第9 水呑宿(みずのみのしゅく)
- 第8 岸の宿(きしのしゅく)
- 第7 五大尊岳(ごだいそんだけ)
- 第6 金剛多和(こんごうたわ)
- 第5 大黒岳(だいこくだけ)
- 第4 吹越山(ふきこしやま)
- 第3 新宮(熊野速玉大社)
- 第2 那智山(なちさん、熊野那智大社)
- 第1 本宮大社(本宮証誠殿)
(出典:修験道修行大系編纂委員会[1994])
[編集] 参考文献
修験道修行大系編纂委員会編、1994、『修験道修行大系』、国書刊行会 ISBN 4336034117
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
カテゴリ: 日本の世界遺産 | 熊野信仰 | 街道 | 和歌山県の建築物・観光名所 | 奈良県の建築物・観光名所