小右衛門火
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小右衛門火(こえもんび)は、日本の大和国葛下郡松塚村(現・奈良県橿原市)に伝わる鬼火の一種。
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[編集] 概要
主に雨の降る晩に、川堤に出現する。大きさは提灯ほどで、地上から三尺(約90センチメートル)の高さの空中に浮かび、墓場から墓場へと4キロメートルも飛び回る。
出没頻度は年々小さくなっており、現在では出現することは稀とされている。
[編集] 伝承1
小右衛門という人物が、松塚村に現れるという火の玉の正体を見極めようと出没場所へ赴いたところ、目の前からこの火の玉がやって来て、小右衛門の頭上を飛び越えた。
小右衛門はこの火の玉を杖で殴ろうとしたところ、火は数百個にも分裂して彼の周りを取り囲んだ。小右衛門は驚いて逃げ帰ったが、その後熱病にかかり、やがて命を落としてしまった。
以来、この火の玉は小右衛門火の名で呼ばれるようになったという。
[編集] 伝承2
近江国沼田に、小右衛門という貪欲な庄屋がいたが、悪事が明るみに出て死罪となった。以来、小右衛門の怨みが火の玉となり、小右衛門火として出没するようになった。
あるとき、旅役者の一座が小右衛門火に遭遇した。彼らが試しに、怪談の芝居に使う「ヒュ~ドロドロ」の笛を吹いてみたところ、小右衛門火は役者たちの方へ向かってきて、火の中に人間の青い顔が浮かび上がった。役者たちは恐怖のあまり、すぐさま逃げ帰った。