擬ベクトル
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擬ベクトル(pseudo vector)は座標の反転に対し符号が変わらない(向きが反転する)ベクトル。
擬ベクトルのことを軸性ベクトルとも呼ぶ。反対に座標を反転して符号が反転する(向きが変わらない)ベクトルを極性ベクトルと呼ぶ。
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[編集] 主な性質
- 軸性ベクトル同士、極性ベクトル同士の外積は軸性ベクトルになる。
- 軸性ベクトルと極性ベクトルの外積は極性ベクトルになる。
[編集] 物理量の例
[編集] 例
空間反転とは空間座標の三成分の軸をすべて反対向きにすること。普通の極性ベクトルを A = (Ax, Ay, Az) とすると、空間反転によって次のように変換される。
変換してもベクトルの方向は同じだが、各成分の符号がかわる。これをパリティが負であるという。
ある極性ベクトルを B とし、A と B の外積を L とする。
L は空間反転で L' = A' × B' になるとする。
L は空間反転しても符号が変わらない。これをパリティが正であるという。空間反転で L は方向を変えてしまう。このようなベクトルを擬ベクトル、あるいは軸性ベクトルと呼ぶ。
擬ベクトルは鏡像変換(空間の一成分を反転)によっても方向を変える。一般に n 回の鏡像変換で極性ベクトルの成分の符号は ( − 1)n 変わり、軸性ベクトルの方向も同じだけ変わる。空間反転は 3 回の鏡像変換と等しいので擬ベクトルは方向を変える。