文化相対主義
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文化相対主義(ぶんかそうたいしゅぎ、Cultural relativism)とは、フランツ・ボアズによって提唱された異文化に対する見方のことである。全ての文化は優劣で比べるものではなく対等であるとし、自文化の枠組みを相対化した上で、異文化の枠組みを見ることが求められる。ある文化的事象を観察する際に、部外者である自分の価値観を以ってそれを判断するのではなく、その文化的事象が執り行われる相手側の価値観を理解し、その文化、社会のありのままの姿をよりよく理解しようとする態度を指す。
この人類学の手法は、ボアズ以前は主流であった自文化中心主義的な理論化を行った進化主義への反発から来ていると言われ、ボアズらはこのような立場に抗して、それぞれの文化はそれぞれの価値において記述・評価されるべしであると主張した。注意しておくべきは、相対主義とは、それぞれの文化、思想、慣習などを擁護する姿勢ではなく、あくまでそれらに対する偏見を排した見方・研究の方法ということである。
例えば、文化相対主義には普遍的人道などの観点から見て不備があり、固有文化の価値を楯に取った抑圧(イスラム圏における人権侵害)が防げないとの反論がある。しかし、これは文化相対主義(cultural relativism)と倫理相対主義(moral relativism)を混同しており、人権、虐殺、テロリズム、奴隷などの問題については、どこまでを文化、どこまでをそれに起因する道徳律とするかにおいていまだ議論が続いており、なおかつ、文化相対主義を擁護する者が、それらの問題を支持しているわけではない。詳細は倫理相対主義(英語)を参照。