新聞拡張団
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新聞拡張団(しんぶんかくちょうだん)とは、日本の新聞販売において、新聞社や新聞販売店とは別の団体で、新聞の訪問勧誘を行う団体をいう。拡販団といわれることもある。一部新聞社や新聞販売店から委託を受けているものもある。
日本では、新聞販売といえば強引な勧誘・売り込みが横行しているとの認識があり、新聞拡張団がその担い手であるとの非難もあるが、新聞がその問題点について記事を掲載することは極めて少なく新聞社は勧誘トラブルは別会社、取引先のことで関係ないという態度を採っている。 2002年5月には千葉県野田市で朝日新聞販売店店員が勧誘しようとした会社員を殴り倒し意識不明の重体にする事件を起こしているが、朝日新聞は地域版で、他紙でも産経新聞が小さく報じたのみとなっている。また、訪問目的を偽る新聞拡張団は現在も多い。
新聞販売店、新聞拡張団の一部には暴力団と密接なつながりを持つものもいると言われている。
脅迫による押し売りは日常茶飯事であり、善良な国民にとって非常に迷惑な存在であるが、売り上げにかかわるため、新聞自体がその問題点について記事にしたり啓発することは少ない。このような形態から「インテリが書いてヤクザが売る」と揶揄され、新聞界最大のタブーといえよう。啓発は専ら消費者団体が行っている。
なお「特定商取引に関する法律」の第3条に「販売業者又は役務提供事業者は、訪問販売をしようとするときは、その勧誘に先立つて、その相手方に対し、販売業者又は役務提供事業者の氏名又は名称、売買契約又は役務提供契約の締結について勧誘をする目的である旨及び当該勧誘に係る商品若しくは権利又は役務の種類を明らかにしなければならない。」とある。若干の改善を行っている団体はあるものの、新聞拡張団の大半はこの条項その他に違反した言動を行なっているので、新聞拡張団は反社会集団であると言っても過言ではない。
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[編集] 概要
通常、団長が団員を統率し、新聞販売店から委託されて新聞購読契約の勧誘に歩く。契約を取った数に応じて新聞販売店から報酬(カード料)を受け取る。
[編集] 形態
新聞拡張団の形態としては大きく分けて以下の3種類に分別される。
- 地場団:ある狭い特定地域のみを専門として営業活動を行う。団を始めたばかりの人員の少ない団で、個人経営が殆どである。
- 広域団:広い地域にまたがって営業活動を行う(全国に及ぶ場合もある)。団に所属する人員も多く、団として有限会社化されている場合も多い。
- 直属:新聞社が直轄して営業活動を行っており、少なくとも読売、朝日、毎日、日経の四紙には存在している。中には新聞社の子会社化しているケースもある。
他に、「拡専」という新聞販売店の社員で営業活動のみを専門に扱っている者もいるが、これは業界内においては新聞拡張団とは呼ばない。同様に、新聞販売店の一般社員が営業活動を行っている行為も新聞拡張団とは言わない。
しかしながら、世間一般的には、個人宅へ新聞営業活動のために訪問する人間は、全て「新聞拡張団」または「新聞勧誘員」と誤って呼ばれる傾向がある。
[編集] 報酬
新聞拡張を行った営業報酬は、新聞拡張団の形態に大きく関わってくる。 まず、新聞販売店が自腹で支払う報酬のみ(時期に依ってはコンクール等と称する、本社からのプレミア料が加算される)となる地場団については、一番報酬が安価である。これに組織力の利がある広域団となると、更に団の上層部からプレミア代が加算されたりする。この場合、広い地域で展開している関係上、競争が穏やかで利益の潤っている地域から、競争が激しく営業活動するほどに赤字となる地域へ拡張材料を回したり、団内のプレミア代を高額に吊り上げて営業活動を行っている者のモチベーションを高め、より多くの契約を取れるように便宜が図られる。尚、直属の新聞拡張員の場合は、報酬は地場団と大差ないが、本社直属という立場上、ある程度の固定給は保証されているために、地場団や広域団のように強引な営業活動はあまり行われない傾向がある。
[編集] 求人方法
スポーツ新聞に広告を出すなどの方法で求人する。これらの広告では、新聞拡張団を略して「新団」と記載することも多い。
「家庭的な団です」「女性も多い気楽な団です」「寮完備すぐ入居可」等の語句が見受けられる。定着率のあまり高くない仕事でもある。
以前よりは減ったとはいえ、ヤクザまがいの言動をするような、昔ながらの新聞拡張団員は未だに数多く生き残っている。末端の団員クラスで実際に暴力団員との結びつきのある者がいると言われており、週刊誌などでも団の背後に暴力団員が控えていると度々報道されている。一方で、拡張員をやっている者はヤクザにもなれないチンピラだと言うものもいる。
[編集] 用語
- カード料
- 成約に対する報酬。契約書である「購読者カード」から。
- プレミア
- 契約を多く挙げた際に、カード料へ加算して支払われる。
- バンク
- 販売地区
- 拡材
- 客との契約の際に提供するサービス品の事。現在も昔ながらの洗剤が基本となっているが、他にもビール券、商品券、お中元・ギフトセットや、旅行チケットなども広く使われている。契約を断っても、この拡材を渡すことがあり、あとから「契約料を払え、できないなら商品を返せ」と迫ることがある。地域によっては各競合紙が「拡材に使うのは○○円相当まで」と内規で取り決めをしている場合もあるが、現場レベルではあまり遵守されていない。
- パンク
- 団の上司から課せられたノルマを達成するために内密で購入した拡材を営業活動に使用している内に、収入と釣り合わなくなって身動きが取れなくなった状態。
- 勧(かん)
- 「新聞勧誘」の略語(~勧とつく用語は多い)
- 喝勧(かつかん)
- 威圧、圧迫、脅迫、暴力行為で契約を取ることをいう。具体例では「客の玄関に居座り居直る」、「怒号をあげ威嚇する」、「ドアを力一杯たたく、蹴り上げる、強引に入ろうとする」、「客の襟首を掴んだり、手で押す」、「ドアに指や足を入れ閉めさせない」、「“何回でも、毎日でも来る”と脅す」などさまざまな例があり、閉めようとしたドアが体に当たったといって言いがかりをつけることもあるという。また、宅配便や郵便を装ってドアを開けさせ、開けた瞬間に足を突っ込んでドアを閉めさせない手口(セールスの一手法であるフットインザドア)も報告されている。
- 置き勧(おきかん)
- 拡材(景品)を勝手に客の家に入れ契約を取ろうとする行為 。具体例では、拡張員が引越しなどをした家に「お引越しおめでとうございます、近所の販売店です~」などと言い、その際に拡材を投げ込むように入れ(洗剤など)強引に契約を取った例がある。
- 泣き勧
- 泣き落としなどで、契約をせまること。
- ひっかけ
- 詐欺まがいで契約を取ろうとすること。具体例では、「クーリングオフを説明せずに契約をせまる」、「いつでも契約を解除できます」、「空契約なのでお願いします」、「次回はもっとサービスします」などという例などがある。「実際には取らなくてもいいからハンコだけ押してください。そうすれば景品(洗剤など)あげます」「ノルマ達成のため代金は自腹で払っておくのでタダにしますから」と言って印鑑を押させる場合もある。それにより契約が成立していることは言うまでもない(下記のてんぷらも参照)。
- てんぷら
- 「てんぷら~する、した」の語源になった用語。具体的には、架空の住所や印鑑などを使って“偽の購読申込書(カード)”などで販売店の店主を騙し、マージン(カード料)を取る事などであるが、中には、販売店の店主と組み、偽カードをお互いに作り新聞社から出るマージンを山分けし(100~200万円単位)逃亡するなどのケースや、拡張団自身が販売店と共謀して契約を捏造するなどのケースもある。新聞社本社で完全にチェックするのは現実として不可能である。
- 過去読
- 以前に購読していた客の事。
- 無読
- 何も購読していない客の事。近年、インターネットによる報道情報の流布など情報源の多様化のために、無読の客が増加し、新規顧客との契約が次第に困難となっている。
- マーキング
- 拡張団の勧誘に限らないが、一度勧誘に訪れた家の玄関のインターホン、表札、周辺などにマーキングと呼ばれる"しるし"が付けてあることがある。これをマーキングといい、マジックで記号を書いたものだったり、シールを張った物だったり様々である。これは拡張団やセールスマン同士が玄関先を見ただけで、その家のことが分かるようにするための情報共有に使われる。例えば、「Y」と書かれていれば読売新聞購読者、「A」なら朝日新聞など。他にも女性の一人暮らし「L」や、複数で住んでいる「S」または「大」など、住人情報の分かる印もある。
[編集] 勧誘の手法
競合紙同士が激しい部数競争を行っている地域、更に新興住宅地における新規の読者開拓では、新聞販売店側が強引な手法で大量の契約を揚げる特定の拡張団(特に広域団)へ依頼を行っている事が多い。ここでは比較的ポピュラーな手法で、かつ問題視される事の多い強引な手法を挙げる。
[編集] オートロックマンションでの手法
厚紙などをドアの隙間から差し込んで内部のセンサーを反応させて解錠させたり、マンション住人の出入りに紛れて入り込んだりする古典的手口は未だに多い。また、一部住人が勝手に開けっ放しにしている裏口、または自転車置き場や駐車場の通用門を見つけて入り込んだり、非常階段などの比較的低い壁を乗り越えて入り込んだりする場合もある。
[編集] ドアを開けさせる手法
「お届け物です」などと宅配便の配達を装っている場合があるが、その場合は荷物(どこからの荷物か)、相手の所属社も確認(大手宅配業者は必ず社名を名乗る)。 他にも「近所の者ですが挨拶回りに伺いました」、「引っ越してきた者ですが挨拶に伺いました」などと言ってドアを開けさせる手口もある。
[編集] 退去させられない手法
開けたドアに靴を挟んでおく古典的な手法は現在でもある。他に、一旦開いて貰ったドアの隙間から、玄関内へ拡材(洗剤など)を投げ入れる手法もある。また、勧誘の話術は一種の口上であるため、ある程度経験を経た団員であれば、相手のろくな相づち無しでも、長時間ネタも尽きずに話し続ける事が可能である。このため、まともに相手をしていたら、いつまでも終わらない事になる。
[編集] 勧誘対策
ここでは、一般的な知識として簡略的に対策を記述するのみとする。結論から言えば、見知らぬ訪問者をうかつに相手にするような警戒心の薄さが最大の問題であるが、そのような住人は未だに多い。
強引に契約を行わせる拡張団にも問題があるが、うっかり相手にして会話の糸口を掴まされてしまい、不本意な契約を「してしまった」側にも問題があるといえる。かなり度の過ぎた勧誘行為でなければ、仮に相手にしても明確に拒否の意思表示して会話を打ち切れば、それで終わりである。
購読する意思がある場合でも、無料などの言葉に惑わされずに購読料を払える期間を良く考えて契約すること。なお、何度断っても居座る場合は違法行為なので、警察に通報しても問題ない。また、マーキングは勧誘の目印になるために、見つけ次第すぐに消すことが望ましい。
一度玄関を開けてしまうと、明らかに購読の意志がないと判断されるまで延々と喋り続けるので、まずその段階で注意すること。一旦、玄関を開けて貰って住人と会話ができれば、まず契約できると豪語する新聞拡張団員も多いし、実際、その段階までこぎつければ契約が成立する確率は高い。
新聞の勧誘だけでなくほかの訪問販売への対策にもなるが、購読の意思が無いのなら呼び出されても玄関ドアを安易に開けない。代金分の現金や商品券を置いていく、無料でいいからなどと言われてもインターフォンかドア越しに「いりません」とはっきり断るか、カメラ付きインターフォンやドアスコープなどで来訪者を確認し拡張員が来たときは居留守を使う。やむを得ず開けるときは必ずドアチェーンを掛けて開ける。
[編集] 勧誘されやすいタイプ
当然のことながら、勧誘されやすいタイプの人間は、新聞拡張団に限らず、多様な訪問販売などのターゲットとして格好の材料となるのが現実で、いくら詳細な対策を知識として身に付けても、なかなか応用ができない傾向がある。
新聞拡張団のターゲットとなりやすい対象としては、以下のものが挙げられる。(括弧内はその主たる理由)
- 一人暮らしを始めたばかりの大学生、新社会人(警戒心の薄さ、世慣れしていない点)
- お年寄りの一人住まい(話好きである点)
- 日中、一人で留守番をしている主婦(話好きである点)
- 大人しくて、のんびりした人(明確に主張できない、断り切れない点)
その他、暇な人、そそっかしい人なども該当する。
尚、拡張団員は担当地域などを回って観察していることが多いので、引越しがあったり、荷物を運び入れている家を見つけると、即勧誘に訪れる。このため、引っ越してから数週間は勧誘が非常に多いこととなる。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
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