普遍文法
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普遍文法(ふへんぶんぽう、universal grammar)という語は言語学の生成文法における概念で、ヒトという種に固有で生得的な言語の初期状態を指す。
チョムスキーのイタリアはピサにおける連続講義およびそれに基づく Lectures on Government and Binding 以降の原理とパラメターによるアプローチでは、普遍文法は定項としての原理群と可変のパラメター群から構成されると仮定されており、言語の定常状態、すなわち個別言語はパラメターの値を定めることで得られると考えられている。
それ以前は無限の文法から可能な文法を選び出す評価尺度が普遍文法を構成すると考えられていたが、多様な個別言語の記述が進むにつれ、記述的妥当性は満たされるものの、説明的妥当性はそれだけ遠くなるという、記述的妥当性と説明的妥当性の間に緊張関係がもたらされた。この緊張関係を解消するものとして、言語の可変部分は無限に多いわけではない、と考えられるようになり、普遍文法の内実に大きな転換がもたらされた。