書記言語
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書記言語(しょきげんご)とは文字を媒介とする言語。文字言語。書き言葉とも言うが、これは文語のことを指すことも多い。一般に音声言語から派生するとされるが、書記言語は発明されるものであり、子供が自然に獲得する音声言語や手話とは区別される。書記言語は社会における役割の違いから、同じ言語集団内でも音声言語と異なる言語変種の分布を示す。
[編集] 音声言語との関係
書記言語の構造は音声言語の音韻論・音声学的体系が表記体系と入れ替わったものであると理解しても間違いではない。ただし実際には表記体系のほとんどが対応する音声言語の音韻の影響を大きく受ける。また後述のように対応する音声言語とは違う言葉遣いをする事も多い。
書記言語の獲得は教育が必要とされ、正常な子供が成長に伴い自然に獲得する音声言語や手話とは異なる。この事は識字率と基礎教育の浸透状況の関係などからもうかがえる。
中近世の覇者の側の価値観では書記言語を持たないことは文明が未発展だと看做され侵略等の正当化の一つとされることがしばしば起こった。書記言語を持たなかった民族にアイヌなどがいる。表記体系と口語とは一致しないため、ソ連時代にキリル文字が広く使用されるなど、文字の統一などは多くの国家で文化政策の一環として行われてきた。
自然言語では通常書記言語は音声言語から派生するため、ふつう書記言語には対応する音声言語がある。ただし音声言語が死語になっても書かれたものは残るため、書記言語のみが残っている言語も多い。一方人工言語では、例えばプログラミング言語のように音声言語がまったく存在しないものも多い。
一般に書記言語は音声言語と比べて変化が遅く、時間が経つにつれ音声言語が大きく変化して、書記言語と同じ言語とは言い難いほど違ってしまう場合がある。このように用途によって言語が大きく違う状況をダイグロシアという。書記言語も音声言語を反映して、対応する音声言語と語彙や文法に余り差がなく、同じ言語を文字で書いたものと考えられる場合も多い。英語や現代日本語などがその例である。しかし、英語のように表記体系が古い発音を反映していて今の発音と必ずしも対応していない場合もあり、それを書記言語と音声言語の差異としてダイグロシアに含めることもある。
[編集] スタイル
主に文章を書く際に、特に文学などで使われる言葉遣いを文語という。文語は前述のような音声言語の変化に伴い口語と大きく違う言葉遣いであることも多く、その場合、特に表記体系が発音と一対一で対応する場合は、書記言語と音声言語のというより文語と口語のダイグロシアであるとされることが多い。
インターネットなどの情報網の一般家庭への普及により、書記言語の社会における役割も大きく変わりつつある。書記言語の主な役割は公文書や文学などの文章に限られていたが、平成に入ってからメールやチャットなどのカジュアルな用途が急激に拡大した。この様な用途では文語とは異なる、より口語に近い言葉遣いが多く使用され、派生的な表記体系や書記言語でしか存在しない新たな言葉遣いも現れている。顔文字の使用やギャル文字、2ちゃんねる用語などがその例である。
[編集] 関連項目
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