有酸素運動
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
有酸素運動 (ゆうさんそうんどう) は、生理学、スポーツ医学、健康増進等の領域で、酸化的リン酸化を主なエネルギー源とした運動をいう。
有酸素運動は全身持久力向上に役立つだけでなく、中等度の強さにとどめておくと、体内の糖代謝、脂肪代謝を改善するので生活習慣病の予防、治療に役立つ。有酸素運動の一つであるエアロビクスダンスは「有酸素の」(あるいは「好気的な」)を意味する英語 aerobic からとった名前である。
これに反して無酸素運動(あるいは「嫌気的な運動」)では体内のグリコーゲンなど糖質が酸素を使わずに消費される。あらゆる運動の初期、または短距離走など激しい運動が短時間のみ行われる場合がこれに当たる。なおこれはエネルギー効率が非常に悪い。
一般的には、「身体にある程度以上の負荷をかけながら、ある程度長い間継続して行う運動」はすべて有酸素運動とみなす事ができる。例えば長距離走は有酸素運動であるが、短距離走は無酸素運動である。またテニスを例にすると、シングルスなら選手が継続して運動するため有酸素運動となり得るが、ダブルスでは選手が頻繁に動きを止めるため有酸素運動にならないこともある。
目次 |
[編集] 健康促進
有酸素運動をすることによって多くの健康促進効果が期待できる。基本的には効率的なエネルギーの消費と基礎代謝の向上、また定期的に行うことにより体重の減少が促される。
運動が健康にいいという事実は長い間知られていたが、有酸素運動が心臓と肺の強化を主な目的とするトレーニング・プログラムとして初めて日の目を見たのは1960年代、ケネス・クーパー博士による。博士の集めた被験者は定期的に、かつ活発に運動を行い、その結果有酸素運動プログラムが多くの健康促進効果を持つことが証明された。クーパー博士による有酸素運動プログラムの効果としては、以下が代表的なものである:
- 呼吸筋を発達させ、外呼吸(肺と外部との空気の循環、体内への酸素のとりこみ)をよりスムーズにする。
- 心筋を発達させ、血液の循環をより効率的にする。また、平常時の心拍数を下げる。
- 全身の骨格筋を調整し、血管系の発達により体内の循環機能を促進し、血圧を下げる。
- 体内の赤血球を増加させ、全身への酸素供給を効率化する。
また、定期的かつある程度の負荷のかかる有酸素運動は心血管障害のリスクを引き下げる。それに加え、負担の大きい有酸素運動(ジョギング、縄跳びなど)は骨の発達を促し、また骨粗鬆症の可能性を減らす効果があることも知られている。
[編集] 有酸素運動の例
[編集] エアロビクスとの関係
エアロビクスは特定の形式で行われる有酸素運動である。エアロビクスのレッスンとは往々にして、インストラクターの指示に従って、音楽に合わせた早いリズムでステップを踏むものである。このスタイルは1970年に先述のクーパー博士が著書『The New Aerobics』を出版して以来特に有名になった。1980年代にはジェーン・フォンダ、リチャード・シモンズなどの有名人がテレビのエアロビ番組やビデオに出演したりして、空前のエアロビ・ブームが起こった。
[編集] 短所(及び長所)
アスリート(陸上競技選手)、兵士、警察官、消防士など、高い身体能力が要求される職業に従事する人々にとっては、有酸素運動では十分なトレーニング効果を享受できない可能性が高い。全身の筋肉の強度、その中でも特に上半身の筋肉強度は、有酸素運動においては強化されない場合が多い。また、嫌気性代謝にかかわる経路(解糖と乳酸発酵)をその人の限界速度まで機能させられないため、運動能力の上限を底上げすることは難しい。しかし有酸素運動を既存のトレーニングに追加した場合、高い効果が得られるであろうことは間違いない。
人によっては「エアロビクス」中に身体にダメージを受けることがある。このような場合はエアロビクスに固執せず、身体にかかる負担のより少ない運動(ローインパクト・エクササイズ、例えば水泳など)をするべきである。
有酸素運動では他の運動、例えばウェイトトレーニング等と比べ、安静代謝率をそれほど著しく増加させることがなく、そのため減量効果もそれらに比べて少ない。しかし有酸素運動の方が長時間かつより頻繁な運動をするため、消費するカロリーはこちらの方が多い。
[編集] 関連項目
カテゴリ: スポーツ関連のスタブ項目 | スポーツ科学 | トレーニング法