杜遷
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杜遷(とせん)は、中国の小説で四大奇書の一つである『水滸伝』の登場人物。
梁山泊第八十三位の好漢。宿星は地妖星。渾名は摸着天(もちゃくてん)で天にも届くという意味。王倫が初めて梁山泊に篭った時から付き従っている最古参の男で、朝廷帰順後も方臘討伐の最終決戦まで生き残っているため、最も長い間梁山泊集団に身を置いた男である。渾名の示すとおり梁山泊でも1、2の長身を誇り威風堂々とした男のようだが、相方宋万と同じくてんで実力は無く見かけ倒しだったようである。ただ、「王倫時代の梁山泊は杜遷でもっていた」との発言から人格的には優れていたのかもしれない。ところで梁山泊好漢の席次は下がっていくことは合っても、入れ替わると言うことはないのだが杜遷と宋万だけは唯一の例外で、始め杜遷の席次のほうが上だったのがいつのまにか宋万に追い抜かれている。これは「宋万の方が実力があったが、王倫の縁故人事で杜遷の方が上になっていたのを晁蓋の代になり元に戻した」などの解釈があるが、真偽は明らかになっていない。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] 生涯
杜遷ははじめ科挙に落第した友人王倫とともに梁山泊で旗揚げ山賊稼業を始め、後に宋万、朱貴らが加わり勢力は拡大、700から800の手下を抱えるまでになり、周囲から恐れられていた。ある日禁軍の槍術師範だった林冲が入山を求めてきた。首領の王倫は豪傑林冲に自身の地位を脅かされはしないかとこれを断ろうとするが、他の仲間と共にこれをとりなし紆余曲折の末、王倫も渋々林冲の入山を認めた。
その後、官憲から逃れてきた晁蓋一行が入山を求めてくるが、王倫はこれも追い返そうとしその浅はかさと自己中心ぶりに激怒した林冲に殺された。杜遷たちは敵討ちもせず(そんなことしても返り討ちは確実だったが)晁蓋に頭を下げて仲間に加えてもらうよう懇願し、頭領の一人として残留した。
その後は糧秣輸送や潜入、留守居など主に裏方として働き余り目立つ手柄は立てなかった。108星集結後は歩兵軍将校に任命され、梁山泊が朝廷に帰順した後もよく働いたが、方臘討伐の最終決戦で乱戦の中落命した。
[編集] 補足
杜遷は水滸伝の元となった南宋の説話集『大宋宣和遺事』に於いて、宋江の36人の仲間の一人「摸着雲・杜千」の名で登場しており、かつては有力な好漢の一人として数えられていたことが解る。ただ他の『水滸伝』の前身となった書物にはその名は見えない。