松岡圭祐
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松岡圭祐(まつおか けいすけ、1968年12月3日 - )は、日本の作家。愛知県稲沢市出身。元臨床心理士。
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[編集] 作家活動
小説では、催眠現象の実体を鮮やかに描いた『催眠』シリーズや、元自衛官の臨床心理士の岬美由紀を主人公にした、日本では珍しいスーパーヒロインを主人公に据えたエンターテイメント・スペクタクル『千里眼』シリーズで知られる。それぞれ第一作は映画化された。特に『千里眼』は息の長いシリーズで、北朝鮮の工作船や同時多発テロ・イラク戦争など、国際的時事問題を盛り込んで、それを松岡流の料理の仕方で見せてくれるのが特徴。
文庫化の際には数十ページ単位の加筆や大幅な改稿がなされたり、別シリーズの人物同士を登場させるなど、読者を飽きさせないエンターティナーである。文庫化済みの松岡圭祐作品は、文庫版のほうを読まなければシリーズとして物語が繋がらなくなっている。これは意図的に、ハードカバーは単体読みきり作品であることを強調してきた為と言われており、とりわけ『カウンセラー』や『千里眼・マジシャンの少女』(ハードカバーは『千里眼のマジシャン』)などは文庫版を読まねば意味がないほどである。
公式サイト内のコメントでは、「すでに文庫になっている作品も増刷されるタイミングで加筆修正を行う事もあるので、なるべく最新の版を読んで下さい」と書いている。
『マジシャン』はナポレオンズ(パルト小石が「いやはや面白い」と日記サイトに記載)や、複数のプロマジシャンが賛美する生々しい業界描写とメディア批判に優れた作品である。『マジシャン』後書きには松岡による「マジックのタネ明かしには反対である」という意見が明記されている。
長者番付2004年度作家部門7位 1997年『本の雑誌』(本の雑誌社)新人賞『催眠』
[編集] タレント活動
催眠術の心得もあり、フジテレビ『A女E女』などに出演している。催眠術師としての活動は、90年代の後半に松岡圭祐が、3年の期限つきで芸能事務所と契約していたことによって与えられたキャラクターで、当時の松岡圭祐の職業は無名同然のタレントである。'90年代前半は「ディーバ」「WATARU」「サイ博士」など番組ごとに異なる芸名で、主にテレビ朝日系列のローカル局バラエティ番組に登場していた。役割も催眠術師には限定されておらず、漫談を行っていたこともある(芸能年鑑より)。
日本では、エンターテイメントとしての催眠術師という職業がなく、たいていマジシャンかカウンセラーが肩代わりする。このため元カウンセラーの松岡圭祐も、テレビに出るにあたっては、その役割を押し付けられたとみられる。
「TVで催眠術なんて馬鹿らしい」「とことん馬鹿をやって、この手の番組を鼻で笑えるようにしたい」(いずれも『TVライフ』(学研)インタビュー)と当時からコメントしており、決して真面目に受け取られるものにしようとしていたわけではなかったことが判っている。
[編集] その他
2006年4月刊行の千里眼シリーズ12作目『千里眼 背徳のシンデレラ』で女優の釈由美子が岬美由紀として表紙モデルに登場した。松岡圭祐の公式サイトで行われたアンケートで岬美由紀に最も近い女優として票を集めたことを反映したものである。それまでは2000年の映画化で岬美由紀を演じた水野美紀が表紙になっていた。小説でこのようにイメージキャラクターを決定し採用しているのは日本では非常に異例で、文芸よりエンターテイメント性重視の姿勢を表すものとされる。
『千里眼』映画化に際し、井坂聡監督と衝突し、監督降板に至ったという一部報道があったが、そうした事実はない。 当時の記事では松岡圭祐が、原作と異なる形の脚本を書いたというが、東映の準備稿は原作にほぼ忠実である。 内容変更は予算(総制作費は2億円。『踊る大捜査線THE MOVIE』や『ホワイトアウト』の4分の1から6分の1にあたる)の関係で、原作どおりの映画化が無理だったからであり、監督交替もプロデューサー判断による。
上記のように、一部報道に端を発するガセが横行しやすい作家であるが、その理由としては
- テレビで催眠術師を演じていた過去があった
- 元臨床心理士という経歴が疑惑扱いされた(実際には本名が臨床心理士名簿に2年間記載されている)
- 新人賞などを受賞せずデビュー作の『催眠』がベストセラーになったので、嫉妬されやすい
- 現在もシリーズが400万部以上を刷り、業界的なやっかみを受けやすい
- 本人や版元がそれらについてまったくコメントしない
などと推測される。
[編集] 作品
[編集] 催眠シリーズ
メインキャラクター:嵯峨敏也(映画『催眠』役:稲垣吾郎)
- 催眠 -hyponosis- / 小学館文庫 ISBN 4094032517
- 催眠―特別篇 小学館ソフトカバー ISBN 4093860599 (映画やドラマの結びつけを図る為に一部修正)
- 後催眠 / 小学館文庫 ISBN 4094032541
- カウンセラー / 小学館文庫 ISBN 4094037942
[編集] 千里眼シリーズ
メインキャラクター:岬美由紀(映画『千里眼』役:水野美紀)
- 千里眼 / 小学館文庫 ISBN 4094032525
- 千里眼 ミドリの猿 /小学館文庫 ISBN 4094032533
- 千里眼 運命の暗示 /小学館文庫 ISBN 409403255X
- 千里眼 洗脳試験 /小学館文庫 ISBN 4094032568
- 千里眼 メフィストの逆襲 /小学館文庫 ISBN 4094032576 ハードカバー版『千里眼の瞳』の前半部分
- 千里眼 岬 美由紀 /小学館文庫 ISBN 4094032584 ハードカバー版『千里眼の瞳』の後半部分
- 千里眼 マジシャンの少女 /小学館文庫 ISBN 4094032606 ハードカバー版『千里眼のマジシャン』を改題
- 千里眼 千里眼の死角 /小学館文庫 ISBN 4094037926
- ヘーメラーの千里眼 /小学館文庫(上)ISBN 4094037950 (下)ISBN 4094037969
- 千里眼 トランス オブ ウォー / 小学館文庫(上)ISBN 4094037977 (下)ISBN 4094037985
- 千里眼とニュアージュ / 小学館文庫(上)ISBN 4094081003 (下)ISBN 4094081011
- 千里眼 背徳のシンデレラ / 小学館文庫(上)ISBN 409408102X (下)ISBN 4094081038
- 千里眼 The Start / 角川文庫 ISBN 9784043836024
- 千里眼 ファントム クォーター/ 角川文庫 ISBN 9784043836031
- 千里眼の水晶体 / 角川文庫 ISBN 9784043836048
- 千里眼 ミッドタウンタワーの迷宮/ 角川文庫 ISBN 9784043836055
[編集] マジシャンシリーズ
メインキャラクター:里見沙希
- MAGICIAN(マジシャン) / 小学館文庫 ISBN 4094032592
- ILLUSION:マジシャン第2幕 / 小学館文庫 ISBN 4094037934
[編集] その他の作品
- 松岡圭祐の千里眼・催眠研究 /(ソフトカバー)徳間書店 ISBN 4198611785 (映画版の千里眼や催眠について)
- 伏魔殿/ 徳間文庫 ISBN 4198916330
- 蒼い瞳とニュアージュ / 小学館文庫 ISBN 4094037918
- ミッキーマウスの憂鬱 /新潮社 ※文庫化の予定なし(ハードカバー版) ISBN 4104751014
- ブラッドタイプ /徳間書店※文庫化の予定なし(ハードカバー版)ISBN 4198621799
- バリア・セグメント 水の通う回路 完全版/ 小学館文庫 ISBN 4094081046
- 天使の守護のアリエッタ/ 徳間文庫 ISBN 4198924708
- 霊柩車No4 /角川文庫ISBN 4043836015(「ブログの女王」で著者がメディア化で選んだブログの小説化)
[編集] ハードカバー版だけのタイトル
- 『千里眼の瞳』 文庫版『千里眼 メフィストの逆襲』『千里眼 岬美由紀』
- 『千里眼のマジシャン』 文庫版『千里眼 マジシャンの少女』
- 『水の通う回路』 文庫版『バグ』『バリア・セグメント水の通う回路完全版』
- 『煙』 文庫版『伏魔殿』
- 『ソウルで逢えたら』 文庫版『天使の守護のアリエッタ』