自衛官
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自衛官(じえいかん、Self-Defense Official)とは、防衛省職員の一種であり、命を受け自衛隊の隊務を行う(防衛省設置法第59条)特別職の国家公務員。自衛隊員のうちの、いわゆる「制服組」である。自衛隊員と呼ばれる場合もあるが、法的には「自衛隊の隊員」には自衛官以外の防衛省職員を含む(後述)ので、あくまで俗称であり、法的名称は「自衛官」が正規である。
陸上自衛隊の自衛官は陸上自衛官と、海上自衛隊の自衛官は海上自衛官と、航空自衛隊の自衛官は航空自衛官と通称される。現在陸海空の総計は約24万人で、日本国最大の人員を擁する国家公務員の職種である。
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[編集] 身分
自衛官とは、自衛官を官名とし、階級の呼称の別に従い、陸海空又は統合幕僚監部に定員上所属する者である(任命権に関する訓令の運用通達(昭和36年02月27日 防衛庁人事局長通達)第10条第2項)。
自衛官は、特別職たる防衛大臣、防衛副大臣、防衛大臣政務官、自衛隊員とごく少数の一般職職員からなる防衛省職員の一種であり、そのうちの「自衛隊員」に含まれる。これに対して自衛隊員は、事務次官、防衛参事官以下の事務官等(いわゆる「背広組」と呼ばれる者)と統合幕僚長以下の自衛官(制服を着て勤務することが多いことから「制服組」と呼ばれる。)とに加え、即応予備自衛官、予備自衛官、予備自衛官補、防衛大学校本科学生、防衛医科大学校学生などの防衛省の定員外の職員を加えた概念―つまり防衛省及び自衛隊関係者の全てであり、自衛隊員⊃自衛官であるが、自衛隊員=自衛官ではない。
政府は、平成2年10月18日衆議院本会議における外務大臣答弁において、「自衛隊は、憲法上必要最小限度を超える実力を保持し得ない等の厳しい制約を課せられております。通常の観念で考えられます軍隊ではありませんが、国際法上は軍隊として取り扱われておりまして、自衛官は軍隊の構成員に該当いたします。」としている。
このため、通常の政府見解によると、現に自衛官たる者は文民ではなく武官とされ、憲法第66条2項の規定に従って、内閣総理大臣もしくは防衛大臣を含む国務大臣となる資格を失う。このため、元職業軍人や元職業自衛官が防衛庁長官(防衛大臣の前身)に就任するにあたり、問題になった事があった。いずれのケースでも軍人、自衛官を退役(退職)後、国会議員選挙を経て、防衛庁長官に就任しているため、問題ないとされている。
[編集] 地位・待遇
[編集] 自衛官と警察官の地位相当の比較
- 統合幕僚長たる陸・海・空将は警察庁長官相当
- 陸上・海上・航空幕僚長たる陸・海・空将は警視総監
- 陸・海・空将は警視監
- 陸・海・空将補(一)は警視監
- 陸・海・空将補(二)は警視長
- 1佐(一)は警視長
- 1佐(二)(三)は警視正
- 2佐警視
- 3佐・1尉は警部
- 2尉・3尉は警部補
- 准尉・曹長・1曹・2曹・3曹は巡査部長
- 士長・1士・2士・3士は巡査長及び巡査
[編集] 人事交流とその任用
テロ対策等、自衛隊と警察の連携を密にしたい行政の意向を受け、両者の人事交流が行われている。
他に本省キャリア幹部職員の県警本部部課長クラスへの出向が一部ある。
自衛官の幹部とは3尉(小隊長等)以上を指し、警察官の幹部・管理職とは警部(所轄署課長等)以上を指す。
[編集] 自衛官と防衛省内局及び他省庁の官僚との比較
号数 | 自衛官 | 防衛省内局 | 他省庁 |
---|---|---|---|
8号 | 統合幕僚長 | 事務次官 | 事務次官・警察庁長官 |
7号 | 陸上・海上・航空幕僚長 | 防衛大学校長 | 警視総監 |
6号 | 防衛施設庁長官 | 財務省主計局長・海上保安庁長官・警察庁次長 | |
5号 | 陸自方面総監・自衛艦隊司令官・横須賀地方総監・航空総隊司令官・航空教育集団司令官 | 防衛医科大学校長 | 海上保安庁警備救難監 |
4号 | |||
3号 | |||
2号 | |||
1号 |
[編集] 自衛官の階級
陸上自衛隊・海上自衛隊・航空自衛隊の自衛官の階級は自衛隊法第32条により、それぞれ陸将・海将・空将を最高位とし、17階級が定められている。
区分 | 陸上自衛官 | 海上自衛官 | 航空自衛官 | 略称 | |
---|---|---|---|---|---|
幹部 | 将官 | 統合幕僚長たる陸将 | 統合幕僚長たる海将 | 統合幕僚長たる空将 | 統幕長 |
陸上幕僚長たる陸将 | 海上幕僚長たる海将 | 航空幕僚長たる空将 | 陸幕長・海幕長・空幕長 | ||
陸将 | 海将 | 空将 | 将 | ||
陸将補 | 海将補 | 空将補 | 将補 | ||
佐官 | 1等陸佐 | 1等海佐 | 1等空佐 | 1佐 | |
2等陸佐 | 2等海佐 | 2等空佐 | 2佐 | ||
3等陸佐 | 3等海佐 | 3等空佐 | 3佐 | ||
尉官 | 1等陸尉 | 1等海尉 | 1等空尉 | 1尉 | |
2等陸尉 | 2等海尉 | 2等空尉 | 2尉 | ||
3等陸尉 | 3等海尉 | 3等空尉 | 3尉 | ||
准尉 | 准陸尉 | 准海尉 | 准空尉 | 准尉 | |
曹 | 陸曹長 | 海曹長 | 空曹長 | 曹長 | |
1等陸曹 | 1等海曹 | 1等空曹 | 1曹 | ||
2等陸曹 | 2等海曹 | 2等空曹 | 2曹 | ||
3等陸曹 | 3等海曹 | 3等空曹 | 3曹 | ||
士 | 陸士長 | 海士長 | 空士長 | 士長 | |
1等陸士 | 1等海士 | 1等空士 | 1士 | ||
2等陸士 | 2等海士 | 2等空士 | 2士 | ||
3等陸士 | 3等海士 | 3等空士 | 3士 |
- 統合幕僚長たる陸将、海将又は空将は、自衛隊法(第32条)上の階級ではないが、防衛省設置法第21条第2項後段により、自衛官の最上位にあるものとされているので、この表では区別して掲載してある。異なった階級章を着用し、階級の英訳も大将に相当するものが用いられている。
- 陸上幕僚長、海上幕僚長及び航空幕僚長たる陸将、海将又は空将は、自衛隊法(第32条)上の階級ではないが、異なった階級章を着用し、階級の英訳も大将に相当するものが用いられていることから、この表では区別して掲載してある。
- それぞれの階級に対応する役職は、表中に記載すると煩雑になるので、それぞれの階級の項目に記載してある。
政府の見解によれば、自衛隊は軍隊又は軍隊に準じるものであることが想定されている。そこで、自衛官の階級分類は一般的な軍隊のそれとの整合性が考慮されている。
自衛官の階級呼称は戦前の旧日本陸海軍のものとは異なっているものの(外国の軍隊の階級呼称は日本語ではなく比較は困難なので言及はしない。)、それに類似したものとなっている。また、「大中少」ではなく「一等・二等・三等」と等級制が用いられている点は、歴史上も旧陸軍の将校相当官や旧海軍の下士官などにも見られた用例であり、日本の軍隊の階級呼称として用例のないものではない。
なお、自衛隊の前身たる保安隊や警備隊では、「監・正・士」といった文官、初期の陸軍将校相当官又は大正8年以前の海軍将校相当官に類似した階級呼称を用いていた。しかし、自衛隊の発足に際しては、「将・佐・尉・曹」といった漢字文化圏で一般的に兵科軍人の階級呼称として用いられているものが使用されることとなった。
一般的に軍隊では少尉以上を士官または将校というが、自衛隊では幹部自衛官と呼称する。また、曹長以下伍長は下士官というが、これは自衛隊では曹に相当している。また、一等兵及び二等兵は兵と総称するが、自衛隊では一士、二士に相当し、士に分類されている(他国軍隊との比較は、軍隊における階級呼称一覧#自衛隊を参照)。
2007年1月3日、防衛庁長官久間章生が外遊先のタイのバンコクにおいて、2008年度以降、自衛官の階級において、将補と一佐の間に准将の階級を、准尉と曹長の間に上級曹長の階級を定めることを明らかにしている。
[編集] 入隊時の区分等
[編集] 自衛官の宣誓
自衛官は、入隊時に以下のような文章の記された宣誓文に署名捺印をする事が義務付けられている。
- 私は、我が国の平和と独立を守る自衛隊の使命を自覚し、日本国憲法及び法令を遵守し、一致団結、厳正な規律を保持し、常に徳操を養い、人格を尊重し、心身を鍛え、技能を磨き、政治的活動に関与せず、強い責任感をもつて専心職務の遂行に当たり、事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえることを誓います。
過去には、公務員の拝命宣誓には当然(日本国憲法第99条に基づく義務)に存在する“日本国憲法及び法令を遵守し”の語句が存在せず、「自衛隊は憲法に従わなくてよいのか」と問題になった。
[編集] 自衛官の心がまえ
昭和36年6月28日に制定された自衛隊における精神教育の準拠[1]。以下の5つの徳目が列挙されている。
- 使命の自覚
- 個人の充実
- 責任の遂行
- 規律の厳守
- 団結の強化
[編集] 自衛官の義務
- 指定場所に居住する義務 (自衛隊法第55条)
- 職務遂行の義務 (第56条)
- 上官の職務上の命令に服従する義務 (第57条)
- 品位を保つ義務 (第58条)
- 秘密を守る義務 (第59条)
- 職務に専念する義務 (第60条)
[編集] 自衛官の懲戒処分
自衛隊法 第四十六条 隊員が次の各号のいずれかに該当する場合には、これに対し懲戒処分として、免職、降任、停職、減給又は戒告の処分をすることができる。
- 一 職務上の義務に違反し、又は職務を怠つた場合
- 二 隊員たるにふさわしくない行為のあつた場合
- 三 その他この法律若しくは自衛隊員倫理法 (平成十一年法律第百三十号)又はこれらの法律に基づく命令に違反した場合
[編集] 註
- ^ 第72回国会衆議院決算委員会第9号(昭和49年4月24日)大西政府委員答弁
[編集] 関連項目
- 防衛省
- 自衛隊
- 防衛省設置法
- 自衛隊法
- 陸上自衛隊
- 海上自衛隊
- 航空自衛隊
- 国家公務員
- 防衛省職員
- 自衛隊員
- 即応予備自衛官
- 予備自衛官
- 予備自衛官補
- 統合幕僚会議議長
- 陸上幕僚長
- 海上幕僚監部
- 航空幕僚長
- 法務官 (自衛隊)
- 監察官
- 警務官
- 医官
- 歯科医官
- 広報官 (自衛隊地方連絡部)
- 防衛大学校本科学生の制服
- 幹部候補生 (自衛隊)
- 一般曹候補学生
- 曹候補士
- 士 (自衛隊)
- 自衛隊生徒
- レンジャー (陸上自衛隊)
[編集] 外部リンク
- 防衛省
- 自衛官の心がまえ(『平成15年版防衛白書』)
- 防衛省・自衛隊:自衛官募集ホームページ
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この「自衛官」は、軍事に関連した書きかけ項目です。この項目を加筆・訂正などして下さる協力者を求めています。(関連: ウィキポータル 軍事/ウィキプロジェクト 軍事/ウィキプロジェクト 軍事史) |