波ダッシュ
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波ダッシュ(なみダッシュ、wave dash)とは、約物のひとつで、波線「〜」(註)のことである。ダッシュ(―)の波形であることからそう呼ばれる。この記号の読み方は一般にあまり知られておらず、波線(なみせん)や波(なみ)、にょろと呼ばれることもある。 また、コンピュータ上で波ダッシュの文字を扱う際、しばしば音声記号のチルダ(~, ~)と混同・混用される。
- (註) 普通は右上がりで始める形()で表記されるが、一部のコンピュータシステム(一部のフォント)では右下がりから始まる形()で表示される場合がある。本項目中の字形に関連する記述では、画像データを用いることで適切な形を表示させている。
[編集] 用途
- 説明や副題などを表す
- 括弧のように2本の波ダッシュで囲むか、直前に1本だけ置くかのいずれか(ダッシュ(―)と同じ用法)。
- 範囲を表す
- 例:5月3日〜5日(5月3日から5日まで)、1人〜3人(1人から3人まで)
- ※「5月3日〜5日まで」とする書き方は誤用(〜に「まで」の意味が含まれるため)
- 任意の内容、もしくは省略を表す
- 例:〜する、〜からの
- 長音符(ー)の代わりに用い、滑稽さや口語調であることを表す
- 例:ですよね〜
[編集] Unicodeに関連する問題
Unicodeの仕様書では、U+301C WAVE DASH(波ダッシュ)に、「JIS punctuation」(The Unicode Standard, Version 2.0より引用, 「JIS約物」の意)という注釈を施しておきながら、JIS X 0208の波ダッシュの例示字形(“上がって下がる” 形「」)とは異なる形(“下がって上がる”形「」)を印刷してしまった。 このような間違いが発生した理由は、Unicodeの例示字形を検討するグループにいたメンバーの日本語に対する知識が不十分だったために、縦書きの例示字形「」を90度回転すればいいと誤って判断してしまったためである。なお、この縦書きの字形については特に混乱は見られない。
この影響を受けて、Microsoft Windows(XP以前)ではUnicodeの波ダッシュ(U+301C, WAVE DASH)は“下がって上がる”形「」で表示される(MS 明朝、MS ゴシック、MS UI Gothicにおけるもの)。それに対し、Shift_JISの波ダッシュ(0x8160, WAVE DASH)はUnicodeの全角チルダ(U+FF5E, FULLWIDTH TILDE)と共通の文字として扱われた上で“上がって下がる” 形「」で表示されるようになっている。
このように、Windowsでは、Shift_JIS 0x8160(WAVE DASH, 波ダッシュ)が本来割り当てるべき U+301C WAVE DASH(波ダッシュ)ではなく、U+FF5E FULLWIDTH TILDE(全角チルダ)に割り当てられている。一方、Mac OSやMac OS Xでは波ダッシュを本来のU+301Cに割り当てており、その(Osakaフォントやヒラギノフォントの)字形も一般的である上がって下がる形につくられている。このWindows独自のUnicodeが産んだ非互換性により、U+301Cが環境によっては文字化けを起こす機種依存文字となってしまっている。 アプリケーションでは、Microsoft漢字コード (CP932)というShift_JISのスーパーセットを用いて対応しているケースが多い。
Windows Vistaでは、「メイリオ」フォントにおいてUnicodeの波ダッシュ(U+301C)が一般的な波ダッシュの形(“上がって下がる” 形「」)になっている他、従来からのMS書体についても同様に修正されている。ただし、Shift_JISの波ダッシュがUnicodeの全角チルダ(U+FF5E)と同一視される点は、従来のまま変更されていない。