混浴
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混浴(こんよく)とは、不特定多数の人が男女の隔たりなく同じ湯船に入浴すること。ただし、家族風呂などを貸し切り、特定多数の入浴も混浴と呼ばれることもある。男女がカップルで2人きりで入浴することは普通は混浴とは呼ばない。
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[編集] 歴史
古くは、大きな湯船の共同浴場は一般的でなく、大きな湯船といえば天然の温泉が溜まってできた野湯であった。そのため、男湯・女湯という概念はなく、混浴は、自然発生的にできたものである。なお、同じ温泉でも、西洋は水着を着て運動温熱療法的な使われ方をしたのに対して、日本では裸で肩まで浸って静養するという文化の違いが生まれた。ただし、日本においても下帯(褌)や湯浴み着を着用したうえでの入浴という習慣も存在しており、裸の入浴は江戸時代以降という説もある。
時代が下ると、温泉地では、泉源から湯船まで温泉を引いた今で言う共同浴場もできてきたが、まだ、男湯と女湯の区別もなかった。
江戸時代に入ると、大都市で銭湯が大衆化した。銭湯に垢すりや髪すきのサービスを湯女(ゆな)にやらせる湯女風呂などが増加した。松平定信が、1791年、江戸の銭湯での男女混浴を禁止する男女混浴禁止令を出すなど、風紀の取り締まりの対象にもなった。これは混浴そのものよりも、湯屋における売買春などを取り締まるものであったと言われる。当時の湯屋は二階に待合所のような場所があって将棋盤などが置いてあり社交場となっていただけでなく、湯女などによる売春や賭博などの格好の場となっていたためである。
明治時代に入ると、男女混浴は風紀を乱す元、前時代的と見られる元として原則禁止となる。
[編集] 規制
各地方自治体の制定する条例により、混浴が禁止されている場合がある。
- 2006年8月、兵庫県は三木市営の公衆浴場「吉川温泉よかたん」の家族風呂が混浴にあたるとの解釈を突然持ち出し使用禁止を指導。三木市は「開業許可をもらった吉川町時代、カップルなどの他人の混浴については条例に抵触するが、夫婦や家族で楽しむ家族風呂については県と協議した上で、許可をもらっている。県の指導どおりの家族風呂の運用を吉川町時代も当然ながら、三木市になっても続けてきた。県のいきなりの指導方針の変更に対し理解に苦しむ」と、遺憾の意を示した。県の指導のきっかけになったのは、三木市の隣の小野市が公衆浴場「白雲谷温泉」ゆぴかの顧客開拓策として、県に出した「家族風呂」の営業許可申請が原因。県が条例違反であると、これを禁じたことに対し、小野市が三木市の「よかたん」の例を上げて反論した。これを受け、まちにある公衆浴場「外湯」めぐりが人気の豊岡市の城崎温泉(外湯7か所のうち2か所で「家族湯」を備えている)は、今回の指導を受け、混浴となる家族での利用を禁じる「ただし書き」を掲示することになり、事態は小野市の予想を超えて大きくなってしまった。足を引っ張られた形となった豊岡市にとって温泉は観光資源というより、市の財源を左右する基幹事業。他市の足を引っ張ってでも、家族風呂を実現したいとする県に対する小野市の反論方法(手法)に対し、県内では小野市への懐疑的な見方が広がっている。また温泉客からは県条例の改正をすべきとの意見が新聞で掲載されたりするなど、混乱が収まりそうにない様相を呈している。
[編集] 施設
入口、脱衣所は別々となっているが、湯船が一緒となっている場合が多い。施設によっては、脱衣所付近から少しの間に目隠しをして奥の方で両方がつながっているようにしたり、浴槽は一緒だが洗い場を男女別にしたり、湯着を貸し出したりと、女性に心の負担をかけないように工夫しているケースもある。
[編集] 入浴マナー
秘湯ブームなどで、マスコミや本にも取り上げられ、単なる好奇心だけで来て入浴するという従来のマナーを知らない入浴者が男女とも増えている。
- 男性入浴者が、見ず知らずの女性を好奇な目で見ることはマナー違反である。女性が湯に出入りする時、湯船の外を歩く時などは、女性への視線をそらすことが男性入浴者のマナーである。女性にすり寄ったり、触れたりするのはもってのほかである。
- 男性入浴者が、見ず知らずの女性に自らの性器をあからさまに見せ付けることもマナー違反である。
- タオル、手ぬぐいあるいはバスタオルの類は、基本的に湯船内に持ち込み禁止である。テレビの温泉紹介番組の影響で、女性が肌を隠すためにバスタオルを持ち込んで入浴する例が増えている。さらに、湯を含んだバスタオルが重く持って帰るのが嫌なためその場に置き去ってくるということも発生している。
- 親しい男女が入浴するときでも、周りに他人がいるときには、性的行為に及ぶのはもちろん、変にいちゃつくのはマナー違反である。
マナーの低下が、混浴風呂の減少や水着着用につながっている。逆に貸切り風呂は増加した。男女が性別を意識することなく湯船でくつろぎ、語り合うことができることが混浴の良さであり大切なことである。
[編集] 参考文献
- 『混浴宣言』 八岩まどか著 小学館