無知
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無知(むち)とは、知識のない事。または知恵のない事。
[編集] 無知と純粋さ
旧約聖書の創世記においてエデンの園を追われる以前のアダムとイヴがそうであった様に、無知は必ずしも悪徳とはされない。無知とははある意味では純粋さの象徴であり、蛇の言葉に従って知恵の実を口にしたアダムとイヴは神の言い付けに背くとともに楽園の住人の資格である純粋さを失ったのである。ギリシア神話でプロメテウスが人間に火を与えたが為にその身を苛まれる事となったのは、一方から見れば無知が美徳ですらある為である。
近代においてもヨーロッパと非ヨーロッパの接触が生まれた頃の「高貴な野蛮人」といったモチーフにこの考え方を見る事ができる。植民地化が本格化する以前、ヨーロッパの知識人たちは自分たちの「文明」を非ヨーロッパの「野蛮」と対比させ、そこに自分たちが失ってしまったある種の純粋さを見出していた。
[編集] 無知の知
他人の無知を指摘することは簡単であるが言うまでもなく人間は世界の全てを知る事は出来ない。ギリシアの哲学者ソクラテスは当時、知恵者と評判の人物との対話を通して、自分の知識が完全ではない事に気がついている、言い換えれば無知である事を知っている点において、知恵者と自認する相手より僅かに優れていると考えた。また知らない事を知っていると考えるよりも、知らない事は知らないと考える方が優れている、とも考えた。