物権的請求権
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物権的請求権(ぶっけんてきせいきゅうけん)とは、物権の内容を実現するために認められる請求権をいう。物上請求権とも。
物権とは、直接的に物を支配する権利である。しかしながら、他人により物権が侵害されることも起こりうるため、物権に基づいてその侵害を排他する権利が物権的請求である。物権はその排他性ゆえに当然に物権的請求権を有していると解される。実定法上の根拠としては、民法第202条にいう本権の訴えがあげられる。
[編集] 概要
物権的請求権には、物権的返還請求権、物権的妨害排除請求権、物権的妨害予防請求権の3つがある。なお、後2つにつき現実の妨害と危殆化した妨害以上の差はなく区別する意義に乏しいとの見解があるが、さしあたりここでは従来の通説に従って解説する。
- 返還請求権
- 自己の所有する土地を他人が権限なく占拠する場合に、「所有権に基づく返還請求権」により、土地を取りもどすことができる。典型的な物権的返還請求権の一例である。なお、同時に、占有回収の訴え(第200条)によっても土地を取り戻すことはできる場合があり、このような場合にいずれの方法によるかは当事者の意思に委ねられる。
- 但し、不法占拠者も占有回収の訴えにより土地を取り戻そうとする場合がある。この場合は、所有権に基づく返還請求権による反訴は認められない。
- 妨害排除請求権
- 物権者は自己の物権の実現が妨げられている場合に、その妨害を取り除くよう請求することができる。
- 抵当権者から抵当の目的である土地上の樹木の伐採の禁止を請求をする場合や、廃棄物を不法投棄された土地の所有権者が原状回復を請求する場合等がある。
- 妨害予防請求権
- 物権者は自己の物権の実現を妨害されるおそれがある場合に、そのおそれを取り除くよう請求することができ、この請求権を物権的妨害予防請求権という。妨害が現実化しているか否かによって妨害排除請求権と区別される。
[編集] 費用負担についての議論
また、物権的請求権の行使により、誰が費用を負担をするかについては議論がある。例えば、Xの家の木が地震で倒れ、隣人Yの土地に横たわってしまった場合などがよく事例として取り上げられる。 この場合、Xは木の所有権に基づく返還請求権を行使できるのに対し、土地の所有者は土地の所有権に基づく妨害排除請求権を行使することが考えられる。なお、占有訴権は話が繁雑になるので考えない。
- 行為請求説
- 物権的請求権の相手方が費用を負担する考え方。つまり、早いもの勝ちで、請求された側が費用を負担しなければならなくなる点がこの学説の問題点となる。
- 忍容請求説
- 物権的請求権を提起した方が費用を負担する考え方。しかし、当事者が互いに費用を負担することを拒んで提起しないと、物権の効果を回復することができない点がこの学説の問題点となる。
- その他、行為請求補正説など色々な学説があり、結論はでない。