犬を連れた奥さん
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『犬を連れた奥さん』(The Lady with the Dog)は、1899年にアントン・チェーホフが発表した短編小説。
チェーホフは1899年から1904年まで、ウクライナのクリミヤ半島にある保養地ヤルタに住んだ。そこでこのヤルタを舞台としてこの小説が書かれた。
[編集] 概要
リゾート地で出会った婦人とのリゾラバとその後の不倫の話。
[編集] 日本との関連
日本の風景画(浮世絵と思われる)が部屋に飾ってある描写がある。
二人の再開の場所がオペラ「Geisha」の初日。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] あらすじ
ドミトリー・ドミトリッチ・グーロフは、ヤルタにきて2週間になり、他の人たちと同様にこの保養地に到着する人たちに興味をおぼえる。そしてその噂の中に、素性の分からないポメラニアンを連れた美しい女性がおり、興味を覚える。ドミトリーは彼女がもしも結婚していて夫がまだ到着していないならば、お近づきになるチャンスだと考えたのである。ドミトリーはそれから何度も彼女を見かけるようになる。
ドミトリーは40歳ほどで既婚者であるが、妻は子供達を生み年よりも老けて見えた。女好きで、不思議と女性にもてた。
ある日のこと、レストランで偶然となりに座ったことで知り合いとなる。彼女は上流階級の女性で一人で来ており、後に夫が来る予定だという。最初は知り合い程度であったが、ある日体を重ねる。それから二人は逢瀬を重ねることになる。二人は次第に堂々と刺激を求めて野外でキスをするようになる。しかし、実のところドミトリーは彼女、アンナ・セルゲーエフ・フォン・ディーダーリッツを愛していたわけではなかった。彼は彼女の美しさに惹かれ、会話を楽しみながらも、次第に飽きてきた。アンナは、自分の夫はFlunky(おべっか使い)で、自分は幸せでないと告白するものの、ドミトリーが彼女を尊重しないので、二人は次第に彼女の夫の到着、逢瀬の終わり、を望むようになってきた。そこへ彼女の夫から手紙が届く。手紙には彼がヤルタに行くことが出来なくなり、逆にアンナに帰ってきて欲しいと書いてあった。アンナは汽車でサンクト・ペテルブルグに帰ることになり、駅まで送ってきたドミトリーに「二度と会わないでしょうけど、お幸せに」といい、去っていった。ドミトリーもアンナが去った後に空虚な思いに駆られ、モスクワの自宅に帰る。
もう冬が始まるという頃にモスクワに帰ると、退屈な生活の中、すぐにドミトリーは彼女の幻影に襲われることになる。実のところ彼女のことが思い出されてたまらず、とうとう医者に行くほどであった。ドミトリーはどうしても彼女に会いたくなり、サンクト・ペテルブルグへ行くことを決心する。
サンクト・ペテルブルグで逗留したホテルからアンナの邸宅はさほど遠くなかった。ドミトリーは彼女の家の前をうろつき、例の犬が老女と散歩に出かける場面やアンナが弾いているらしいピアノの音を聞いたりするが、どうすることも出来ない。そうこうするうち、オペラ「Geisha」の公演があることを知り、アンナも来るのではないかと考えて出かける。
案に相違せず、アンナは夫と共にきていた。幕間に夫がタバコを吸いに外に出た時、ドミトリーは彼女の席へ向かう。アンナはびっくりしてしばらく何もいえないが、やがて次の幕が始まりそうになり、出口の一つから外へ向かい、ドミトリーも後を追う。なかなか人が居ない場所がなく、やっと見つけた場所でドミトリーは人目もはばからず抱きしめてキスをする。ドミトリーはアンナを忘れられなかったと告げるが、アンナも実はあれから今までドミトリーを忘れることができなかったという。
それから二人は2~3ヶ月に一度は会うという不倫の仲になる。アンナは夫に婦人病の医者に見てもらうという口実でモスクワにやってきては、内緒で二人は会うのだ。ドミトリーは今まで真に愛した女性はおらず、これが初めての愛といえた。そして二人はこれからもその関係が長続きしてしまいそうだと感じながら逢瀬を続けるのであった。