生島治郎

出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』

文学

ポータル

各国の文学 記事総覧

出版社・文芸雑誌 文学賞

作家

詩人・小説家 その他作家

生島 治郎（いくしま じろう、1933年1月25日-2003年3月2日）は、日本の小説家｡本名、小泉 太郎（こいずみ たろう）。筆名は結城昌治が考えたもの。

上海生まれ。敗戦後、1945年に長崎に引き揚げ、金沢に移る。

中学3年から高校にかけての同期に青木雨彦がいた。高校時代から小説を書き始め、早稲田大学第一文学部英文学科在学中は青木雨彦や高井有一や富島健夫と同じ同人誌に所属。傍ら、港湾関係のアルバイトで肉体労働を経験する。早大英文の同級に小林信彦がいた。1955年卒業。卒論のテーマはジョナサン・スウィフト。

空前の就職難に苦しんだが、大学の友人の紹介で美術評論家植村鷹千代の主宰するデザイン事務所に就職。ここで知り合った画家勝呂忠の紹介により、約1年後に早川書房入社。当時の上司（編集部長）に田村隆一がいた。

初代編集長中田誠一のもとで、江戸川乱歩監修による日本語版『エラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン』の編集に従事。のち、中田の辞職に伴って新編集長都筑道夫を迎えた。

田村の下訳でロアルド・ダールの本邦初訳（『あなたに似た人』）を手がけた後、常盤新平と共に、開高健訳『キス・キス』の下訳をおこなう。早川書房の俸給の安さに苦しみ、密かに内職として社外の原稿を執筆しなければならなかったことから文筆家の道に入った。

26歳のとき、都筑の退社に伴って『エラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン』の編集長に就任。約7年間の在社を経て、小説執筆を目的に早川書房を退社し、半年を費やして『傷痕の街』を完成。この作品が1964年3月、佐野洋の口利きにより講談社から刊行され、作家としてデビューした。1967年、『追いつめる』で第57回直木賞。

最初の妻小泉喜美子（旧姓杉山）とは26歳の時に結婚した。離婚後に韓国籍のソープ嬢と再婚し、その体験を自ら小説化（片翼シリーズ）して話題となったが、後にやはり離婚した。

江戸川乱歩賞の選考委員をつとめたときの選評には必ず「古い枠にとらわれることなく、自分が書きたいと思ったことを推理小説に仕立て上げてほしい」などとと述べている。そのためか本格推理小説が応募されてくるとその作品についての評は辛くなっている。

代表作に、『黄土の奔流』『片翼だけの天使』など。日本のハードボイルド小説の基礎を築いた。

[編集] 作品リスト

傷跡シリーズ

• 傷痕の街
• 死はひそやかに歩く

黄土シリーズ

• 黄土の奔流
• 夢なきものの掟
• 総統奪取
• 上海カサブランカ

志田司郎シリーズ

• 追いつめる
• あの墓を掘れ
• 友よ、背を向けるな
• 密室演技
• ヤクザ刑事
• 殺人者は夜明けに来る
• 死に金稼業
• 人生最後の殺人事件
• 世紀末の殺人（1992年、スコラ社）
• 修羅の向う側（1999年、徳間書店）

兇悪シリーズ

• 兇悪の門（1973年、講談社）
• 兇悪の眼（1974年、講談社）
• 兇悪の炎（1977年、講談社）
• 兇悪の拳銃（1983年、講談社）
• 兇悪の警察（1988年、講談社）

賭けシリーズ

• 賭けるものなし（1979年、徳間書店）
• 暗黒指令（1979年、徳間書店）
• 抹殺指令（1981年、徳間書店）
• 国際誘拐（1996年、双葉社）

片翼シリーズ

• 片翼だけの天使（1984年、集英社）
• 片翼だけの青春（1985年、集英社）
• 片翼だけの結婚（1985年、文藝春秋）
• 片翼だけの女房どの（1988年、集英社）
• 片翼だけの韓国（1992年、集英社）
• 暗黒　さようならそしてこんにちは「片翼だけの天使」（1999年、小学館）

その他

• 淋しがりやのキング（1968年、徳間書店）
• ふりかえらずに、走れ!（1969年、集英社）
• 影が動く（1969年、桃源社）
• 死ぬときは独り（1969年、文芸春秋）