甲状腺癌
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甲状腺癌(こうじょうせんがん、thyroid cancer)は、甲状腺に生ずる癌腫。病理組織型から大きく4つに分けられる。
甲状腺癌のデータ | |
ICD-10 | C73 |
統計 | 出典: |
世界の患者数 | '人 |
日本の患者数 | '人 |
甲状腺癌学会 | |
日本 | 日本内分泌学会 日本甲状腺学会 |
世界 | 国際内分泌学会 |
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目次 |
[編集] 定義(概念)
甲状腺に生ずる悪性腫瘍のうち上皮由来のものをさす。甲状腺腫のうちの結節性甲状腺腫の1つである。
[編集] 分類
- 乳頭癌
- 頻度は80%。硬い結節を持ち、表面に凹凸がある。病理学的には微細な石灰化(砂粒小体)をもつ。周囲のリンパ節転移が多い。
- 濾胞癌
- 頻度は10~15%。結節は比較的やわらかい。肺などに血行性転移が多い。
- 未分化癌
- 頻度は3~5%。硬い結節を持ち、周辺部と癒着している。乳頭癌、濾胞癌を母地として発生する。比較的高齢者に多く、甲状腺腫が急速に増大する。極めて悪性であり予後不良である。
- 髄様癌
- 頻度は3~5%。硬い結節を持ち、両葉に浸潤することも多い。家族性発症が見られる。傍濾胞細胞由来で多発性内分泌腺腫症として出現することが多く、褐色細胞腫の合併に注意が必要である。CEA、カルシトニンが上昇する。
- 橋本病を母地として発症する。橋本病患者で甲状腺腫が急速に増大した時は積極的に疑う。
[編集] 原因
ほとんどわかっていない。遺伝子変異の影響も考えられている。
また、チェルノブイリ原子力発電所の事故で周辺の住人に甲状腺癌の患者が多発したことから、放射線に誘発されることが判明している。
[編集] 疫学
甲状腺腫のうち、甲状腺癌の割合は約1/5である。40歳以上に多発し、男女比は1:4と女性に多い疾患である。未分化癌と髄様癌では男女比は1:1と差異が見られない。
[編集] 症状
のどにしこりを触知する。それ以外には典型的な症状はないが、嗄声やのどの痛み、嚥下障害が見られることがある。
[編集] 検査
- 触診
- 甲状腺腫の診断として行われる。
- 甲状腺腫の内部構造や被膜、石灰化像など非常に多くの情報が得られ、甲状腺癌の検査としてきわめて重要なものである。
- 放射性ヨードやテクネチウムが用いられる。
- 穿刺吸引細胞診
- 甲状腺腫が良性か悪性かを鑑別するのに重要。濾胞癌を除き、ほぼ確実に診断を確定できる。
- 診断よりもむしろ手術後の再発マーカーとして重要。
[編集] 診断
触診、超音波、穿刺吸引細胞診を組み合わせて診断する。濾胞癌の場合、良性腺腫との鑑別は困難であり肉眼的に明らかな被膜浸潤や遠隔転移で発見されない限り細胞診、組織診では確定診断はほぼ不可能である。
[編集] 治療
基本的に甲状腺摘出術を行うが、1cm以下で症状のない微小癌では経過観察することもある。再発予防のためリンパ節廓清や放射性ヨード投与を行う。甲状腺を全摘した場合は一生甲状腺ホルモンを投与し続ける必要がある。
[編集] 予後
甲状腺癌は予後の良好な悪性腫瘍として知られており、腫瘍の発育速度も遅い。10年生存率は乳頭癌が85%、濾胞癌が65~80%、髄様癌が65~75%である。しかし未分化癌は極めて予後が悪く、人類に発生する癌の中でも最悪な癌の1つである。発育速度が非常に速く、手術や放射線、化学療法を行ってもほとんどが1年以内に死亡する。
[編集] 診療科
- 内分泌内科
- 乳腺・甲状腺外科
- 耳鼻咽喉科
[編集] 関連項目
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