男性の妊娠
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
男性の妊娠(だんせいのにんしん)とは、1つ以上の胎児を何らかの生物種のオスが体内に宿すことである。動物の大多数は、メスが妊娠する。性的二形を持つ種では、ほとんどの場合オスが精子を生産し、受精卵を宿すことはまれである。しかし、男性の妊娠の例は、動物界、神話、ポピュラー文化に見出すことができる。
目次 |
[編集] 人間の場合
人間における男性の妊娠は、思索、SF、コメディの領域に限られてきた。伝統的な環境では、生物学的に不可能だからである。
男性は子宮を欠いているため、代わりの方法としては子宮外妊娠が必要になるかもしれない。受胎は体外受精で行い、腹腔に受精卵を移植し、妊娠を開始するには女性ホルモンの投与が必要かもしれない。出産は帝王切開によって行われるかもしれない。
FtMの性同一性障害の者は、ホルモン療法を止めれば、男性として認識され生活しながら妊娠できる。これは卵巣の機能が維持されていれば可能である[1]。 たとえば、マット・ライス(作家のパトリック・カリフィアの前パートナー)は人工受精で子供を出産した[2]。同一性の見地からは、生理的に女性であっても、これは「男性の妊娠」と考えられる。MtFの性同一性障害については、手術によって女性となれば出産可能と見なされるべきで、生物学的に男性として生まれた者(女性として認識され生活している者)も子供を産めるかもしれないが、現在のところ不可能である。
XYの染色体を持つ半陰陽の者の中には、完全に女性の体となり、子宮が発達していれば体外受精が可能になる者もいるが、まれである[3]。こうした者は、男性を象徴するY染色体を持ちながら妊娠できるかもしれない。
[編集] そのほかの種の場合
オスのタツノオトシゴは、メスから卵をもらって妊娠を受け持ち、子供を出産する。
[編集] 神話
さまざまな神話には出産する男性が登場するが、通常の女性の妊娠とはまったく異なる様子で描かれるのが普通である。たとえば、ギリシア神話のアテナはゼウスの額から成人の形で生まれた。日本神話の天照大神は、イザナギが左目を洗ったときに生まれた。
あるいは、男性の登場人物は何らかの方法で女性に変わる。たとえば、北欧神話のロキは種牡馬の気を引くために変身して牝馬に変わり、スレイプニルを産んだ。
[編集] ポピュラー文化
[編集] アメリカ・イギリス
コメディ映画における男性の妊娠
- Rabbit Test (1978年)
- 『ジュニア』Junior (シュワルツェネッガー主演、1994年)- 科学的にありえそうな試みを扱っている。
テレビ番組における男性の妊娠
- エイリアンと人間の接触による男性の妊娠を扱っているもの
- 『フューチュラマ』
- en:American Dad!
- 『エイリアン・ネイション』
- 『スタートレック:エンタープライズ』のエピソード「予期せぬ侵入者」Unexpected
- 『チャームド』のある回 - レオが短期間パイパーの子供を妊娠する。
- 『宇宙船レッドドワーフ号』en:Red Dwarf のある回 - リスターが男女が逆転したパラレルワールドを訪れ、セックスしたために妊娠する。
- Sliders のある回 - 大災害のために女性が能力を失い、男性が妊娠する世界が描かれる。
SF小説、およびSF作家のエッセイにおける男性の妊娠
- オクタヴィア・バトラー『ブラッドチャイルド』 - 「クロス・ジェンダー」のテーマとして取り上げられる。
- ロイス・マクマスター・ビジョルド『遺伝子の使命』 - 人工子宮を使った男性だけの社会を描いているが、妊娠による心理的な効果(期待、不安など)の体験も描かれる。
- マージ・ピアシー『時を飛翔する女』、Woman on the Edge of Time, Marge Piercy. ISBN 044900094X - 男性も女性も妊娠しないが、男性は薬を飲んで子供に乳を与え育てる。「妊娠」の体験と女性だけの育児の体験は、男女平等のために犠牲にされる。
- en:Red vs Blue - タッカーはエイリアンからの寄生的な胎児によって妊娠する。
- ラリー・ニーヴン『スーパーマンの子孫存続に関する考察』(『無常の月』収録) - クラーク・ケント(スーパーマン)と地球人女性の子供は(もし妊娠が可能だとしても)母体を破壊してしまう危険が高いため、人工受精した胎児をクラークの胎内で育てるべきだと一見大真面目に主張している。
男性の妊娠は、ファン・フィクション(en:fan fiction)にはほとんど見られないが、そうしたストーリーは「mpreg」と呼ばれる。ファン・フィクションにおける男性の妊娠は、進歩した医学のテクノロジーや神秘的な方法の結果とされたり、説明されなかったりする。
[編集] フランス
コメディ映画における男性の妊娠
[編集] 日本
漫画における男性の妊娠
- 魔夜峰央『パタリロ!』(1978年-) - 美少年マライヒがバンコランとの間に子をもうける。
- 萩尾望都『マージナル』(1985-1987年) - 女性が妊娠できず、男性だけとなった地球上で、妊娠の能力を持つ少年キラが登場する。
- 弓月光『新婚は甘くない』(1972年) - ドタバタギャグ。
[編集] 関連項目
- 男性の授乳(en:Male lactation)
- 人工子宮(en:Artificial womb)
[編集] 外部リンク
- Possibility of Male Pregnancy - 可能性に関する議論。
- Male pregnancy is the future - この問題を論じたコラム。
- http://www.malepregnancy.com/ - 世界初の男性の妊娠を報告するいたずらサイト。
- http://www.snopes.com/pregnant/malepreg.htm - Snopes.comのページ。男性の妊娠に関する都市伝説を否定している。
カテゴリ: 書きかけの節のある項目 | 性に関連する項目 | フィクション