神舟5号
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
神舟5号(しんしゅう ごごう、Shénzhōu wǔ hào / シェンチョウ)は中華人民共和国が打上げた有人宇宙船計画「神舟」のひとつで、同国初の有人軌道飛行に成功した。有人宇宙飛行に自力で成功したのは世界でもソビエト連邦、アメリカ合衆国に次ぐ3番目で、42年ぶりとなる。
[編集] 飛行概要
神舟5号は2003年10月15日午前9時(現地時刻:UTC+8)、空軍の楊利偉(ヤン・リーウェイ)中佐(当時38歳)1人を乗せ、甘粛省の酒泉衛星発射センターから長征2F型ロケットによって打ち上げられた。高度343kmの円軌道を約21時間(14周回)飛行した後、10月16日午前6時23分(同)に同国内モンゴル自治区の草原地帯に着地した。楊中佐は無事に帰還した。
打ち上げは胡錦濤が国家主席に就任した直後であったため、この就任に間に合わせるために周到に計画されたようである。一部で、世界には打ち上げは事前に知らされなかったという主張がなされた。実際ソ連のボストークはそうであったが、神舟5号の打ち上げは事前に知らせていた。主張は的を射ていないと同時に、このロケットに対する自信の表れといえる。
神舟5号の打ち上げでは、ペイロードの余裕を使用して、赤外線カメラなどの光学式偵察装置を搭載していたことが明らかとなった。装置は軌道モジュールに装着されており、帰還モジュールが分離した後も軌道上を周回し、偵察衛星として活用されている。この技術は4号による実験の成果が現れている。
[編集] 世界の反応
世界でもロシア、アメリカに次ぐ3カ国目の有人宇宙飛行の成功とあって世界は驚愕したものの、米ソの宇宙競争が終焉して以来停滞した宇宙開発の中で久々の大きなニュースだったため、おおむね好意的な論調が大きかった。ただ、アメリカでは中国の宇宙開発が軍部主導によるものである事を懸念した他、中国国内からも軍事転用の有意性を説く声が聞かれた。
神舟がロシアのソユーズ宇宙船と外見・構造ともに非常によく似ており、ソビエト連邦崩壊に伴いロシアが外貨獲得手段として中国と1995年3月に結んだ有人衛星技術供与協定により購入したソユーズの技術を大きく踏襲して作られた事がほぼ明らかであった事から、日本でも石原慎太郎現東京都知事による「日本なら一年もあれば出来るはずだ」と言う発言を始めとした日本の技術的優位を強調するコメントもあった。しかし、当のJAXAは翌月のH-IIA6号機でブースター切り離し失敗というミスにより打ち上げを失敗[1]、中国製ロケットの信頼性が逆に証明される形となった(信頼性に関してはロケットの打ち上げ実績を参照)。なおJAXAは、2015年前後までは有人計画を持たないと表明している。