空気亜鉛電池
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空気亜鉛電池 (くうきあえんでんち)は、電池の化学電池の一時電池のボタン電池の空気電池の種類に属する。であり、主にボタン型電池として使用される。単に空気電池と呼ばれることもある。使用時には、電極に張られているシールを剥がして用いる。一度剥がしたシールを貼り直して保存することはできない。
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[編集] 概要
正極に空気中の酸素、負極に亜鉛を使用するものを言う。電解液にはアルカリ金属水酸化物が使われるが、現在では水酸化カリウムを用いるものが主流。ドライタイプとウェットタイプ(現在はドライタイプのみ)が在る。
化学反応としては、
正極: O2 + 2H2O + 4e- → 4OH-
負極: Zn + 4OH- → Zn(OH)4 → ZnO + H2O + 2OH- +4e-
[編集] 歴史
空気亜鉛電池の歴史は古く、1907年にフランスのフェリーによって考案された。しばらくは大型のものしかなく、電話交換機用や気象観測用ブイなどに使用された。現在のようなボタン形の空気電池は1970年代後半に米国のグールド社(現在のデュラセル社)によって開発された。日本では1980年に開発されたが、特許の関係で販売が開始されたのは1986年になってからである。
[編集] 形状
正極側に「孔」と呼ばれる穴がいくつも開いており、ここから酸素を電池内部に供給する。補聴器向けの高出力タイプは通常のものより孔が大きくなっている。使用前は正極側に酸素を遮断するためのシールが貼られていて、これを剥がしてから使う。一度剥がせば放電状態になるため、時間とともに電池寿命が短くなっていく。このシールを貼り直した場合は劣化を抑えて長持ちさせることができる。ただし、もともと電池に貼られていたシール以外では不具合の原因になる場合が在る為、使用しないほうがよい。ちなみに、シールを剥がしても直ぐには電力は得られず、剥がしてから大体1分前後から電力が得られる。
[編集] 長所
- 放電時の電圧変動が少ない
- 温度変化に強い
- 比較的大容量
[編集] 短所
魅力ある空気電池だが、長所ばかりではない。使用する環境によって影響を受ける。
- 気温は20度が最適であり、気温が5度の酷く寒い場所で使用すると著しく電池性能の寿命が低下する。酷く寒い場所で空気電池を内蔵した機器を使用する場合は、空気電池が冷えないように人肌で暖めながら使用する必要が在る。毛糸の帽子やマフラーや厚い服の中に閉まっておきながら使用するのが対策として望ましい。冷えてしまった場合は暖めてから使用すれば寿命が回復する。
- 湿度は60%が最適であり、それ以上でもそれ以下でも 十分な電池性能(寿命)が発揮されない。よってあまり使っていないうちに使い物にならなくなる可能性がある。
- 二酸化炭素量は2000ppmが最適である。空気電池は二酸化炭素に非常に弱く、石油ストーブやガスストーブ等の暖房機器から発生する二酸化炭素により電解液が劣化する。そして電池性能(寿命)に影響を及ぼす。その為、空気電池とストーブを併用する時は、十分に換気を行うことを社団法人電池工業会から推奨されている。一度に高濃度の二酸化炭素に触れさせると、二酸化炭素が無い場所へ運んでも二度と寿命が回復しない可能性がある。ストーブだけでなく、閉め切った部屋に多くの人が居る場合も同様の注意が必要である。特に冬の寒い時期に発生した地震で学校の体育館に避難した場合、体育館の窓や入り口は締め切る場合があるので注意が必要である。
[編集] 主な用途
現在は補聴器、PHS、ページャーに使われる。かつては電話交換機、気象観測用ブイ、電車の踏切警報機の軌道回路用、米国では鉄道信号などで使われた。
[編集] リサイクル回収の仕方
電池のプラスとマイナスをセロハンテープなどで絶縁してから、空気電池を販売している販売店経由で電池メーカーに返却するか、補聴器店、電器店、時計店、カメラ店等に設置されている、ボタン電池回収箱に入れる。
[編集] 日本の主な製造会社
- 古河電池株式会社
- 松下電池工業株式会社
- ソニー株式会社
- 株式会社東芝