紋章文字
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
紋章文字(もんしょうもじ; Emblem Glyph)は、ハインリヒ・ベルリン(Heinrich Berlin)が1958年にマヤの都市遺跡か地名を表す文字として発見した、一連のマヤ文字を指す。
下に述べた要素で構成される。
- ベン=イッチと呼ばれる接字(T168。現在では、「アハウ」と読み、「支配者、王、高貴な人」を表すことが判明している。;Tは、エリック・トンプソンのカタログ番号。)
- トンプソンが水に関連する文字と考えた接字(T32~T41)。現在では、「クル」「チュル」と読まれ、「神聖な」という意味を表すことが判明している。)
- 主字。都市遺跡ごとに異なる。
ベルリンは、さらに、ある都市の石碑に別の都市の紋章文字が刻まれていることから、両都市間に何らかの関係があったことを示し、マヤの政治地理学的な分析が可能になるかもしれないと述べた。現在では、ベルリンの予想したとおりに研究及び碑文の解読が進み、有力な都市とそうでない都市、支配従属関係など、都市間の階層性まで判明している。 紋章文字の発見によって、暦以外の文字があること、碑文が歴史を刻んでいることを示唆する手がかりがあたえられたが、実際のところ紋章文字が地名を表すのか、その都市の守護神を表すのか、都市名なのか、王朝名なのか論争が続いてきた。デイビッド・スチュアートなどの研究者によって、地名を表すものや支配者の称号を表すもの、ティカルとドス=ピラスのように王朝の家系を表すものがあることが判明してきている。