自動車ナンバー自動読取装置
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自動車ナンバー自動読取装置(じどうしゃナンバーじどうよみとりそうち)とは日本の幹線道路に警察が設置している、自動車のナンバープレートを自動で読み取る装置の通称である。手配車輌の追跡に用いられ、刑事犯罪捜査の重大な手がかりとなることもある。通称Nシステム。
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[編集] 歴史
増え続ける交通事情に対応し、車輌全体を警察により監視する必要性があるとの判断により、1980年代後半に科学警察研究所が民間企業と合同で開発した。1987年に東京都江戸川区新堀の国道14号に設置されたのが実用第1号。ナンバーのNを取ってNシステムと呼ばれるようになった。
[編集] 運用手順の例
Nシステムを通過した車輌(2輪を除く)はすべて記録され、警察の手配車リストに即座に照会される。手配車輌が通過した場合、手配車両と判明と同時に車種・所有者・メーカーなどが割り出され、付近を巡回中のパトカーや捜査車両に通知され(この際「N号ヒット!」と無線で合図が流れる)、知らされていた車輌を追尾、検挙となる。盗難などの手配車輌の監視、被疑者の追跡など刑事警察で用いられ、重大事件発生時などは不審車輌の洗い出しに使われる。
[編集] 設置場所
主要な高速道・国道に設置されている。料金所を通過する全車両が撮影対象であり、停車位置の左側前面または、右側前面に赤色のストロボを付けて設置されている。車が通過すると、撮影されるという仕組みである。また、道路上にはレーン毎(高速道路では路肩も)に設置されている。高速道路の場合、逃走中の犯人が車道ではなく路肩を走行した場合でも対応可能にするためである。
なお、速度取り締まり機であるオービスと似たような機種もあり勘違いする人が多い。
[編集] プライバシー問題
本システムでは車輌そのものを特殊カメラで撮影し、記録された画像からナンバープレートを判別するが、同時に運転者、同乗者も撮影されるためプライバシー問題や人権侵害への問題といった側面もクローズアップされる。
1999年9月、新潟県中越地方の某警察署課長(当時40)が女性警察官との交際を巡り辞職したが、新潟県警がこの課長の自家用車の動きをNシステムで追跡していた事が新潟日報のスクープで明らかになった。非番者の動向監視に用いられた事で悪用であるとの指摘がされている。また2006年には、愛媛県警の捜査員がWinnyを使用した際にAntinnyと思われるコンピュータウィルスに感染し、本システムが設置されている愛媛、香川、徳島の国道及び高速道路を通過した車のナンバープレート情報と通過日時が記録されたファイルが、他の捜査情報と共にネット上へ流出した事件も発生している。この際流出した情報は約10日分、車両台数にして10万台超とされている。
設置者側の警察では本システムで行う車両撮影に関しては、プライバシー上の問題点はないと考えている。しかしNシステムの存在を嫌うドライバーもおり、設置箇所に関する情報は雑誌などでやりとりされてきた。
Nシステムは高速道路上だけでなく、一般道の県境付近や大規模石油精製施設付近・公官署付近・防衛関連施設・原発付近などにも設置されている。一部では個人移動監視システムともいわれている。
[編集] Nシステムの情報が逮捕の決め手となったと考えられる事件
- 富士フィルム専務殺人事件(1994年2月)
- 福岡美容師バラバラ殺人事件(1994年3月)
- つくば母子殺人事件(1994年11月)
- 埼玉愛犬家連続殺人事件(1995年1月)
[編集] その他
対象者が二輪車を使用したり、ナンバーを読み取りにくくしたり、近年増加傾向にある複数の偽造ナンバーや他人のナンバーを悪用しながら移動する場合は、対象者の発見が非常に困難である。 また、非常に高価な装置のため、幹線道路以外の設置が少なく、設置のないルートを移動したり、対象者が設置場所を把握している場合は避けて移動するため、同様に発見が困難である。
[編集] 他国の類似システム
日本以外でもいくつかの国で類似のシステムがある。有名なのは、イギリス、ロンドンのそれである。
[編集] 関連項目
- 自動速度違反取締装置(オービス)
- 旅行時間測定システム(Tシステム)