自己相互作用補正
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
自己相互作用補正(Self Interaction Correction, SIC):電子間の相互作用を扱う上で、ハートリー-フォック近似→局所密度近似の過程で、電子が自分自身と相互作用する項が完全には相殺されなくなる。この局所密度近似において自己相互作用する部分に補正を施すのが自己相互作用補正である[1]。
ハートリー-フォック近似では、電子間に働くクーロン相互作用と交換相互作用の各項を足し上げていく過程で、電子がその電子自身と相互作用する項(自己相互作用項:このような相互作用はあり得ない)が相殺される。しかし、局所密度近似は、ハートリー-フォック近似に、相関項(電子相関を考慮した項)を新たに導入する。この項の導入のために、電子の自己相互作用項の相殺が完全ではなくなる。自己相互作用項が中途半端に残るため、局所密度近似では、一例として次のような問題が生じる。空間内で孤立した系(電子と正電荷からなる系で、総電荷は中性であるとする)から電子を一個だけ十分な遠方に遠ざけた時(系には正孔が残る)、その遠ざけた電子が感じるポテンシャルは、e/r(eは素電荷、rは系からの距離)となるはずだが、局所密度近似ではそうならず、ポテンシャルの形は系から遠ざけた距離に対し指数関数的に減少してしまい、正しいポテンシャルの形を与えない。自己相互作用補正を導入すると、これを修正することができる。
[編集] 参考文献
[1] J. P. Perdew and A. Zunger, Phys. Rev. B23 (1981) 5048.