芳香族炭化水素
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芳香族炭化水素（ほうこうぞくたんかすいそ、aromatic hydrocarbones）あるいはアレーン (arene) は芳香族性を示す単環あるいは複数の環（縮合環）から構成される炭化水素である。略号として AH が使用されることがある。芳香族炭化水素が置換基となった場合の呼称はアリール基 (aryl group) であり、Ar− と略される。具体的にはフェニル基、ナフチル基などがアリール基の代表例である。
芳香族化合物 (aromatic compounds) と同義に使用されることがあるが、広義の芳香族化合物は複素芳香族化合物を含むので留意されたい。
芳香族炭化水素は、一重結合と二重結合が交互に並び、電子が非局在化した6つの炭素原子から成る単環あるいは複数の平面環をユニットとして構成されている。最も構造が単純な芳香族炭化水素はベンゼンであり、ベンゼン環として知られている6つの炭素からなる環状化合物である。
その構造が不明であった遠い昔、強烈な臭気を持つものが多かったので、芳香族炭化水素はそのような名前がつけられた。
[編集] 特性
芳香族炭化水素は以下の特徴を持つ。
[編集] 多環芳香族炭化水素
アレーンの中で注目されているものに多環芳香族炭化水素 (polycyclic aromatic hydrocarbons, PAH) がある。PAH は多核芳香族炭化水素 (polynuclear aromatic hydrocarbons) とも呼ばれる。これらは1つあるいはそれ以上の芳香環が縮合している。もっとも単純な構造の多環芳香族炭化水素としてペンタレンを挙げる。
3つかそれ以上の環を持つ PAH は水に溶けにくく、蒸気圧も低い。分子量が増すにつれて、水への溶解度も蒸気圧も減少する。それに比べて、2環性の PAH は水溶性や蒸気圧は増加している。このような特性を PAH が持つため、水や大気よりも土壌や堆積物で主に発見される。しかし粒子状物質に分散した PAH は水や大気でも見出される。
分子量が増えるにつれ PAH の発がん性は増大し、急性毒性は減少する。PAH の1つであるベンゾピレンは最初に発見された発がん性化合物である。
ナフタレン (naphthalene, C10H8) は1辺で接した平面を共有する2つの六員環で構成されている炭化水素であるが、いくつかの点で真の PAH では無く、二環性芳香族炭化水素であるとされている。 ナフタレンの臭気は防虫剤としてよく知られている。
他の PAH としてアントラセン、クリセン、ピレン、コロネン、ケクレンなどがある。
発がん性と催奇形性で有名な PAH には以下のようなものがある。
- ベンゾ[a]アントラセン、クリセン (C18H12)
- ベンゾ[b]フルオラセン、ベンゾ[j]フルオラセン、ベンゾ[k]フルオラセン、ベンゾ[a]ピレン (C20H12)
- インデノ[1,2,3-cd]ピレン (C22H12)
- ジベンゾ[a,h]アントラセン (C20H14)
