著作権延長法
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著作権延長法 (Copyright Term Extension Act, CTEA) あるいは、ソニー・ボノ著作権延長法 (Sonny Bono Copyright Term Extension Act) とは、1978年以前に発表された作品の著作権の保護期間を著作者の死後50年から70年に、法人著作物の著作権を公表後75年から95年に延長した、1998年制定のアメリカ合衆国の法律。また、1978年以降に発表された作品については、原則として著作者の死後70年間の保護となった。
この立法措置により、著作権切れを間近に控えた1920年代の作品群の大多数は2010年代までその期間先延ばしされることとなったが、それらの作品で現在も購入・鑑賞・閲覧などのアクセスが可能なものは全体の1~2%に過ぎず、著作権の所在が不明な「孤立作品」(Orphaned Works) を人為的に大量発生させただけだと言う批判も生れた。
1928年に発表された「ミッキーマウス」の著作権切れが迫っており、ディズニー社のロビー活動が背景にあったと言われる。よって、この法律は、「ミッキーマウス保護法」ないし「ミッキーマウス延命法」と揶揄される。ちなみに「ミッキーマウス」 (名称・図形など) は商標として保護されており、たとえ著作権が切れたとしても、自由に商用目的で使えるわけではない。
パブリックドメインを目指すグループは、この法律は、アメリカ合衆国憲法第1条8節8項の「議会は、限られた期間中、作家と発明家に対して著作や発明に対する独占権を与えることが出来る」という規定 (※) に違反するものとして、差止訴訟を提起した。3人の市民が起こし(1999年)、様々な個人・52人の法学者・17人の経済学者・全米作家協会・インテルなどがこれを支持した。訴訟は、最高裁判所まで持ち込まれたが、評決により7対2で合憲とされ、成立が確定した(2003年2月)。
- ※ この規定はもともと権限配分に関する規定であり、憲法の解釈としては、規定がない事項は各州の議会に立法管轄があると理解されているものである。
本判決後、米国通商代表部 (USTR) は各国に対して著作権の保護期間を延長するよう圧力を強めている。隣国メキシコは従来、個人の死後または法人の公表後75年であった規定をさらに延長して100年に(これは現時点で世界最長の保護期間である)、日本は2003年に映画の著作物に限り保護期間を公表後50年から70年に、オーストラリアは2004年に全ての保護期間を個人の死後または法人の公表後70年に延長した(その結果、オーストラリアのプロジェクト・グーテンベルクは事実上の活動停止に追い込まれている)。
アメリカ政府の延長要求を拒否し、2006年現在も個人の死後または法人の公表後50年を維持している国・地域にはカナダ・ニュージーランド・台湾などが存在する。
[編集] 参考文献
- ローレンス・レッシグ「FREE CULTURE」(山形浩生・守岡桜:訳、翔泳社) ISBN 4798106801
- 横山久芳「著作権の保護期間延長立法と表現の自由に関する一考察」(学習院大学法学会雑誌・39巻2号)
- 福井健策「著作権とは何か 文化と創造のゆくえ」(集英社新書 ISBN 4087202941 P194 第六章 1 アメリカ「ソニー・ボノ法違憲訴訟」)
- 福井健策「『著作権保護延長』は文化を殺すのか クリエイターにとっての損と得」(中央公論 2006年10月号)
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- Eldred.cc(違憲訴訟の原告であるエリック・エルドレッドのサイト)