親子茶屋
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親子茶屋(おやこぢゃや)は古典落語の演目の一つ。『滑稽噺』の一つで、落語によく出てくる【道楽者の若旦那】が主人公・・・とみせて、その裏には実に皮肉なテーマが内包されている。原話は、明和4(1767)年の笑話本『友達ばなし』中の一遍である『中の町(ちょう)』。
特に3代目 桂春団治の口演は有名であり、踊りの素養もあった同氏の高座は美麗な物であった。
江戸落語では8代目 桂文治が演じていたが、現在ではほとんど演じ手がない。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] あらすじ
大旦那が若旦那にお説教。
「去年母さんが死んだんだ、少しはその分親孝行したら如何だ!?」
散々説教した後、「寺参りに行く」と言って親父は外に出て行った。ところが、その帰り道に山谷の土手にかかると吉原の桜が満開。
ついフラフラッと大門を潜ってしまい、そのままの勢いでお茶屋に上がりこんで芸者や幇間を揚げてのドンチャン騒ぎを始めてしまった。
一方、こちらはハチャメチャに怒られてご機嫌斜めの若旦那。気分転換に花魁に会いたくなり、番頭をだまして逃げ出した。
宙を飛ぶように吉原へ飛び込み、馴染みのお茶屋へ上がりこむ。
女将に『いつもの連中を頼む』と言うと、『生憎60位のご隠居さんが借り切っています』と言う返事が返ってきた。
「60で茶屋遊び? 粋だねぇ、家の親父に見習わせたいわ」
感心した若旦那は、一つその隠居に一緒に遊ばせてくれるよう頼んでくれと提案。女将が話を通すと先方も乗り気だ。
幇間がご趣向と言う事で虎拳をセッティングし、親父を屏風の右側に、若旦那を左側に入れた後チャラチャラチャンとご陽気に屏風をどかすと・・・。
「お父っつぁん」
「倅!? エー・・・これから、必ず博打をしてはいかんぞ」
[編集] 煩悩は果てず・・・
男の煩悩は三つあると噺家は言っている。所謂『三ドラ煩悩』と言う奴で、詳しく説明するとこんな内訳。
- 『呑む』:飲酒
- 『打つ』:博打
- 『買う』:女郎遊び
若旦那の行く末を案じ、説教をしていたはずの大旦那が実は遊び好きだった・・・と言う落ちは実に皮肉な物であると同時に、男の煩悩に対する見事なアンチテーゼとなっている。
[編集] 落ちの解説
『博打はいかん』という落ちは、先に説明した【煩悩】が元となっている。
つまり、倅と鉢合わせした事により【呑む】と【買う】を見られてしまった大旦那は、説教のネタとして最後に残った【打つ】を牙城にした訳。