議事妨害
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議事妨害(ぎじぼうがい)は、議会の少数派が議院規則の範囲内で議事の進行を意図的・計画的に妨害すること。
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[編集] イギリス
イギリスでは特にアイルランド選出議員など、議会内少数派の地域政党の議員により議事妨害が行われ、その対策を整備してきた歴史がある。
1880年代に、アイルランド問題が紛糾した結果、アイルランド国民党議員の長時間の演説による議事妨害が行われた結果、議会の過半数の賛成で議事を打ち切る、”ギロチン動議”の制度が導入された。ただし議長が公正な討論が続いていると判断した場合は却下される。これは、議長が公正中立で少数派を尊重する慣習が根付いているイギリス議会ならではの仕組みである。
20世紀後半になり、定足数確認要求の乱発という議事妨害が使われた。イギリス議会の場合、その確認の方法が面倒であったことや、定足数以下でも審議が行われることが常態化していたことから、その効果は大きく、対策として結果的に定足数は裁決時を除き事実上廃止とされることになった。
[編集] アメリカ
アメリカでは特にフィリバスター(オランダ語で略奪者・海賊の意味)と呼ばれ、主に連邦議会上院で、演説を長時間続ける手法がとられる。これは上院では議員の発言時間に制限が課されず、席にも座らずトイレにも行かないで演壇に立ち続ける限り、演説し続けられるという規則になっているからである。フィリバスターを止める手段として、上院の5分の3以上の議員(60人以上)が打ち切りに賛成した場合は、1時間以内に演説者は演説をやめなければならないというものがあるが、可決されることは稀であり、議会の多数派が折れるか、演説者の体力が尽きるまで継続されることになる。
このように、フィリバスターは体力を振り絞った必死の抵抗であること、そして映画『スミス都へ行く』で、主人公スミスがフィリバスターにより正義を実現する姿が描かれたことから、フィリバスター対する悪い印象は少ない。
[編集] 日本
※日本における議事妨害は「牛歩戦術」を参照。
日本の国政政党では党議拘束が厳しいため、殆どの議事妨害は野党側が与党側に対して行うものである。野党側が議事妨害を行う際は、まず、審議時間を要求した上での重複質疑の繰り返しが多用される。日本では特段の問題発言でもない限り質問内容がマスコミなどで批判される事はまずないため、野党側は殆どリスクを負うことなく時間を稼ぐことができる。しかし与党側も際限なく審議に応じるわけではないため限界がある。
さらに強力な手段が審議拒否である。野党の審議拒否に対抗して与党が単独審議を行った場合、与党に非があるとみなす傾向が日本の世論には強い。ただし近年は審議拒否への批判も強くなる傾向があり、野党側もリスクを負う戦術である。日本以外の国で審議拒否がなされる場合は、議会の正統性そのものに異議を唱える場合であり、日常的な駆け引きに審議拒否が多用されるのは日本の国会の特色である。一方、日本では演説時間の制限についても過半数の賛成で可能なため、フィリバスターは「牛タン戦術」という俗称があるものの有効な戦術にはなりにくい。
最も大掛かりな議事妨害は投票に時間をかける牛歩戦術である。牛歩戦術には批判も最も大きく、したがって単純に時間切れに持ち込むためというより騒ぎにすることで議案の問題に注目を集めるためという側面も最も強い。さらに議場内でピケを張るなどして物理的に議事を妨害する方法がとられることもあるが、合法的とは言いがたい。ただし院内会派による組織的な物理的議事妨害に対して、議場内での警察権を自ら有する議院による懲罰が与えられたことはない。
この他、議案に先立って審議が優先される、内閣不信任決議案や各大臣の不信任決議案(参議院では問責決議案)、単独審議や強行採決に絡めた議長不信任決議案や委員長解任決議案などの提出、活用される。議長不信任決議案の場合には、議長が通例野党出身の副議長に交代させることが可能であるため、2002年の年金法案においては、副議長に会議を散会させようとしてその宣告を行わせたが、参議院規則に違反していたため失敗に終わった例もある。1992年にPKO法案の審議に当たり、日本社会党が各大臣ごとに個別に不信任決議案を提出しようとしたから、これを封じるため自民党が内閣信任決議案を提出して可決したことがある。
[編集] 関連項目
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