負担重量
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
負担重量(ふたんじゅうりょう)とは、競馬の競走において、競走馬が背負う重さのことである。昔、日本では斤(きん)という尺貫法の単位で重さを定めていたことから斤量(きんりょう)とも呼ばれる(由来は、かつて負担重量の単位に英斤(ポンド)が用いられていたため)。現在日本ではキログラムが単位として用いられる。アメリカなどではヤード・ポンド法のポンドやストーンが単位に用いられる。
負担重量は、平地競走および障害競走においては騎手自身の体重ならびに騎手が身に着けている勝負服やプロテクター、鞍などの所定の馬具の重さのことである。ヘルメットや鞭、番号ゼッケン、ゴーグルなどは重量に含まれない。 ばんえい競走では、騎手は全員一定の重さ(75キログラム、冬季は77キログラム)とされ、ソリの重さが負担重量となる。 負担重量に満たない場合には鉛などの重りを体に装着するか鞍に入れなければならない。 負担重量を所定以上超過している場合は騎乗できず、乗り替わりとなる。
目次 |
[編集] 負担重量の遵守
競走中、定められた負担重量となっているかを検査するために、競走前に前検量、競走終了直後に後検量を行う。 前検量については競走と競走の間の時間が短いため、競走当日の所定の時刻前に前検量を行うことができる。前検量を済ませた鞍を競走馬につける際には不正がないように係員のいる装鞍所でないとつけることができない。
後検量は上位入線馬ならびに上位人気馬に対して行われる。この後検量が終了して定められた負担重量となっていることが確認されないと競走は確定されない。
降雨などにより衣類に雨を吸い込み重くなってしまったなどのやむを得ない場合を除き、前検量と後検量の差が1キログラムを超えると失格となる。この場合入線してしばらくしてから審議のランプがつくこととなる。
[編集] 負担重量の決め方
負担重量の決め方は大きく分けて二つ存在する。一つは、全ての出走馬を同一の条件下に置いて、最も強い競走馬を決めようという方法であり、競走馬の年齢、および性別だけで負担重量を決める。馬齢重量戦(馬齢戦と略される)や定量戦がこの方法に含まれる。
一方で、出走メンバーをある程度多様にするために、出走馬全てに勝利できる可能性を均等に与えるべく、強い馬と弱い馬の間にハンデキャップを設ける方法もある。現在の競馬においては負担重量を変更することによってハンデキャップをつける。別定重量戦もしくはハンデキャップ競走はこの方法に含まれる。
なお、かつては競走馬の体高に基づいて負担重量が定められることもあった。
[編集] 馬齢重量戦
馬齢重量戦(馬齢戦とも略される)とは、過去に勝ったレースの格などに関わらず、馬齢重量表に従って馬の性別と年齢のみで負担重量が決定される競走のことである。定量戦との違いは、定量戦は競走毎に負担斤量を決定するのに対して、馬齢戦は全ての競走に同一の基準で負担重量を決定することにある。
[編集] 中央競馬における馬齢重量表
年齢 | 2歳 | 3歳 | 4歳以上 | |||
---|---|---|---|---|---|---|
1-9月 | 10-12月 | 1-9月 | 10-12月 | |||
負担重量 | 牡・騸 | 54kg | 55kg | 56kg | 57kg | 57kg |
牝 | 54kg | 54kg | 54kg | 55kg | 55kg |
[編集] セックスアローワンス
一般的に牡馬と牝馬の間には能力差があるため、牡馬と牝馬の間に負担重量の差をつける重量のこと。ただし、セックスアローワンスで認められる重量差は国によってさまざまであり、一律の値ではない。日本の中央競馬においては、牝馬は2歳10月~2歳12月までは1キログラム、3歳以降2キログラムの減量が認められる。
[編集] 北半球産、南半球産のアローワンス
ウマの発情期が、北半球にいるウマと南半球にいるウマで半年のズレがあるため、出産時期も北半球にいるウマと南半球にいるウマでは半年ズレてくる。従って、ウマの成長にも半年のズレがあるため、北半球産馬と南半球産馬の間に負担重量の差をつける。日本の中央競馬の平地競走においては、南半球産で7月1日以降に出生した競走馬は北半球産馬よりも減量される。このアローワンスは馬齢戦のほか、定量戦、別定戦でも適用される。障害競走においては産地によるアローワンスは認められない。
[編集] 定量戦
定量戦とは、馬の性別や年齢のみで負担重量が決まる競走のことである。ただし、馬齢重量表に従って決定される競走は馬齢戦と呼ばれ、定量戦とは呼ばれない。馬齢戦とは異なる重量体系で行われることから、別定重量戦の一種とされる。競走毎に負担重量を決める事が可能であり、特定の年齢(大体は2歳、3歳)において大きな減量を行うなどの優遇策をとり出走を促すこともできる。優勝劣敗の原則に沿いつつ、(馬齢戦に比べて)競走ごとの個性を出すことが可能なため、日本やヨーロッパのほとんどのグレードワン・グループワン競走が定量戦であるが、アメリカやオーストラリアなどにはハンデキャップのグレードワン競走もある。
[編集] 別定重量戦
別定重量戦(別定戦とも略される)は、馬の性別と年齢で定められる基準重量に、その馬の獲得した賞金(競走によって収得賞金、番組賞金、総獲得賞金など用いられる値が異なる。収得賞金などの用語は競走馬の賞金クラス体系を参照)の額、過去に勝利した競走のグレードなどによって重量が加算され、負担重量が決定される競走のことである。加算が全競走馬にも行われないとされる競走は定量戦と呼ばれる。セックスアローワンス、産地によるアローワンスは馬齢重量戦とほぼ同一で、3歳以上の競走では牝馬は牡馬の基準重量から2kg減で計算される。計算上では著しく重い負担重量も想定されるが、実際の出走では62kg程度が上限である。ちなみに、58kg以上と以下では馬への影響が大きく変わるといわれている。 ハンデキャップ競走との違いは、ハンデキャップ競走が出走メンバーの相対的な能力により主観的に負担重量が決定されるのに対し、賞金や勝ち鞍といった客観的な要素によって負担重量が決定されるところにある。
[編集] ハンデキャップ戦
ハンデキャップ競走を参照。
[編集] 斤量が馬に与える影響
この項では日本の平地競走について論じる。障害競走や海外の競走などでは事情が異なるため通用しない。
上記にもあるが一般的に58kg以上と以下では馬への影響が大きく変わるとも言われている。しかし、馬にっては59kgのハンデを苦にせずG1およびJpn1競走の前哨戦で背負いながらも勝つことも多く、実際のところは馬の能力によって左右される。ただし、60kg以上の斤量は一流馬であればまず背負うことは無い。科学的な根拠に乏しいが、あまりに重過ぎる斤量でレースに臨むと馬が怪我をする確率が非常に大きくなり、最悪の場合予後不良になってしまうからである。その代表的な悲劇の名馬としてテンポイントなどが挙げられる。