蹴りたい背中
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『蹴りたい背中』は綿矢りさの小説である。
2003年に河出書房新社から発売され、金原ひとみの『蛇にピアス』と共に第130回芥川龍之介賞を受賞した。累計の売り上げは127万部。著者が若いこともあり高校生活の描写は精緻で、高い評価を得ている。
人付き合いを厭う主人公が恋愛感情とも言えない、微妙な感情を抱くようになる過程を、高校での日々の生活を通して描く。「蹴りたい背中」は一般に「愛情と苛立ちが入り交じって蹴りたくなる彼(にな川)の背中」を指すものと考えられている。
[編集] 人物
- ハツ(長谷川初実、はせがわはつみ)
- 主人公。陸上部に所属する高校1年生。人付き合いを嫌い、同級生や先輩を冷めた目で見ている。クラスでは疎外されている。
- にな川(蜷川智、にながわさとし)
- ハツの同級生でオリチャンのファン。俗にいうオタク。
- 絹代(小倉絹代、おぐらきぬよ)
- ハツの中学校からの友人で同級生。高校ではやや疎遠になっている。ハツとは逆に交友に余念がない。
- オリチャン(佐々木オリビア)
- モデル。27歳。文中では全てオリチャンと表記されている。ハーフ(英米人)の可能性がある。
[編集] 要略
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
理科の授業で仲間外れにされたハツは、同じ班のにな川が読んでいる女性ファッション誌のモデル(オリチャン)に目がとまる。ハツは中学生のとき、隣町の無印良品でオリチャンに会ったことがあり、そのことを言うとにな川は興味を持つ。放課後彼の家に呼ばれ、そこでにな川がオリチャンの大ファンであると知る。後日ハツはにな川に頼まれ、オリチャンと会った無印良品店に向かう。そしてにな川の家で休憩する二人だったが、ハツはオリチャンのアイコラ(にな川作)を見つける。ハツは異様な気分になり、にな川を後ろから思い切り蹴り倒す。
その後にな川が学校を4日間休む。不登校ではないかと言われるも、ハツはにな川の家にお見舞いに行く。実はにな川は徹夜でオリチャンのライブのチケットを取ったため、風邪を引いたのだった。にな川はチケットを4枚買っており、ハツは誰か呼んで一緒に行こうと誘われる。友人は絹代しかいないので、仕方なく絹代を誘って3人でライブに行く。絹代がハツに「にな川はいい彼氏なんじゃないか」「ハツはにな川のことが本当に好きなんだね」と言うが、ハツは自分の気持ちはそうじゃない、と思う。
ライブから帰ると、バスはもう出ていなかった。仕方なくハツと絹代はにな川の家に泊まる。ハツはよく眠れず、ベランダでにな川と話をする。にな川が「オリチャンを一番遠くに感じた」と言ってハツの方を背にして寝転がると、ハツはにな川の背中を蹴ろうとする。指が当たったところでにな川が気づくが、ハツは知らないふりをする。